研究課題/領域番号 |
21K05595
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39040:植物保護科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐藤 育男 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (70743102)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | デオキシニバレノール / かび毒分解 / コムギ / 赤かび病 / 生物防除 / かび毒 / DON分解細菌 / 病原性因子 / 微生物分解 |
研究開始時の研究の概要 |
コムギ赤かび病は、コムギの最重要病害で穀粒の肥大化阻害や穂枯れを引き起こすとともに穀粒にデオキシニバレノール(DON)などのかび毒を蓄積する。DONは植物に毒性を示し、赤かび病菌の病原性因子としても知られていることから、コムギ上でのDONの分解は赤かび病の感染拡大の抑制にも繋がると期待される。本研究ではこれまでに分離したDON分解細菌を用いて、『病原性因子あるいは、かび毒を分解する微生物による病害発生そのものの抑制は可能か』および『DONの分解にはどのような代謝酵素および遺伝子が関与しているか』を明らかにする。
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研究実績の概要 |
発芽コムギ、赤かび病菌、DON分解細菌SS3株またはそのDON代謝能欠損株を用いて、DONを介した相互作用について検討した。発芽コムギのDON感受性について、品種農林61号(赤かび病中抵抗性)とUSU-Apogee(赤かび病弱抵抗性)を用いて、各濃度のDONを含む培地で育成したところ、2品種間の葉の伸長および乾燥重量の減少に影響を及ぼすDON濃度に大きな差はなく、DONに対する感受性の品種間差は見られなかった。次に、両品種の発芽種子を用いた簡便な発症抑制試験(Petri dish test; Morimura et al. 2020)を行ったところ、赤かび病菌単独接種区に比べ、DON分解細菌SS3株供接種区では発病度が有意に低下した。一方、SS3変異株(2株)供接種区の発病度は変異株間での差が大きいものの野生株供接種区より高まった。この結果から、SS3株の赤かび病発症抑制機構の一つはDON分解代謝によるものであることが示された。また、いずれかの変異株では部分的に発病抑制能を示したことから、DON代謝以外の発症抑制機構の存在も示唆された。そこで、抵抗性誘導の可能性を検証するためqRT-PCRにより、コムギの6つの防御応答遺伝子の発現解析を行ったところ、SS3野生株または変異株の接種により共通して発現上昇する防御遺伝子が見出された。また、発芽コムギのDON蓄積量は農林61号の方がUSU-Apogeeより低いことから、農林61号のDONの解毒能が高く、抵抗性がより発揮されている可能性が考えられた。 DON代謝酵素の探索について、昨年度までに作出されたDON代謝能欠損を欠損した19株のNGS解析を行った。すべての変異株間で共通して見られた変異箇所は確認できなかったが、19株のうち10株で特定の遺伝子に共通して変異が見られており、まだ未解析の変異株を含め引き続き調査を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた、コムギ小穂上での蛍光タンパク質導入株の動態観察には至っていない。対象にしている病原菌株の形質転換効率が低いためプロトプラスト調製や形質転換時の条件検討を行っている。 DON代謝酵素の探索については、NGS解析が終了した段階であり、候補遺伝子の絞り込みには至っていない。当初より遅れているが、今後解析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、発芽コムギを用いて接種試験を行い、相互作用の解析および条件検討を行い、最終的にはコムギ小穂上での接種試験を行う。小穂上での動態観察に向けて、赤かび病菌にGFPあるいはRFP遺伝子を導入した菌株を作製する。共焦点レーザー顕微鏡でコムギ上に接種した蛍光タンパク質遺伝子導入F. graminearumとDON分解細菌を観察する。DON分解細菌の検出については、自家蛍光で観察できることを期待しているが困難な場合は、in situ hybridization などの検出方法も検討する。 Nocardioides sp. LS1株のDON代謝変異株19株について変異箇所を特定する。特に初発代謝欠損株に注目し、変異株間で共通の領域に変異箇所をもつ遺伝子を特定し、初発のDON代謝遺伝子の候補遺伝子を絞り込む。現在までに、すべての変異株間で共通して見られた変異箇所は確認できなかったが、19株のうち10株でAraC family transcriptional regulator遺伝子に共通して変異が見られており、引き続き調査を進める。また、Nocardioides sp. SS3株でも変異株が得られているので、変異箇所の同定を試みる。候補遺伝子を絞りこみ、pETベクターにクローニングし、E. coliに導入する。形質転換体あるいはその細胞抽出液のDON代謝活性を解析することでDON代謝酵素遺伝子を同定する。
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