研究課題/領域番号 |
21K05619
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39050:昆虫科学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
内海 俊樹 鹿児島大学, 理工学域理学系, 教授 (20193881)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | アブラムシ / ブフネラ / 共生 / 菌細胞 / システインリッチペプチド / RNA干渉 / 細胞内共生 |
研究開始時の研究の概要 |
アブラムシは、体内の菌細胞とよばれる共生器官で、共生細菌ブフネラとの絶対共生を成立させており、この共生がアブラムシの旺盛な繁殖力を支えている。菌細胞には、機能不明の菌細胞特異的システインリッチペプチド(BCR)が存在しており、共生の成立に必須な分子であると予想される。本研究では、BCR遺伝子を標的とした合成RNAをアブラムシに人工飼料と共に給餌し、菌細胞でのBCRの機能を喪失させることを試みる。合成RNAの給餌によるBCRの機能低下とアブラムシ個体の重量、生存率や繁殖率との相関を検討し、「アブラムシのBCRはブフネラとの共生に必須であるか?」という問いに対する答えを明らかにする。
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研究実績の概要 |
アブラムシは、体内の菌細胞とよばれる共生器官で、共生細菌ブフネラとの絶対共生を成立させており、そこには機能不明の菌細胞特異的システインリッチペプチド(BCR)が存在する。本研究は、RNAiによるBCR遺伝子の発現抑制を試み、「アブラムシのBCRはブフネラとの共生に必須であるか?」という問いに答えることを目的とする。エンドウヒゲナガアブラムシApL系統を研究材料とし、それぞれのBCR遺伝子を標的とする合成RNAを人工飼料に添加して給餌し、BCR遺伝子の発現、給餌後の生存率と繁殖率を検討した。 これまでの研究で、アブラムシ体内のRNaseの活性により、給餌したRNAが分解され、発現抑制の効果にばらつきがあることが考えられた。そこで、令和3年度は、RNaseに耐性があるとされる修飾RNA(LNA, Linked Nucleic Acid)を合成して使用した。しかし、いずれのBCR遺伝子を標的としたLNAを給餌しても、標的遺伝子の発現抑制や生存率の低下は観察できなかった。このことから、LNAによるRNAiの効果は期待できないと判断した。一方、アブラムシ1個体ごとの標的遺伝子の発現については、プロトコルの再検討などにより、解析の精度をあげることができた。 令和4年度は、ApL系統の7種の全てのBCR遺伝子(BCR1-6, BCR8)について、令和3年度に確立した実験系と評価方法で検討した。これまで未検討であったBCR5, 6, 8のいずれのBCR遺伝子についても、合成RNAの給餌により標的遺伝子の発現が抑制され、生存率も有意に低下することが判明した。また、抗菌活性の弱かったBCR2, 4についても、混合給餌によって両遺伝子の発現を同時に抑制すると、生存率が低下することが判明した。これらのことから、全てのBCRが、アブラムシとブフネラとの共生に必須であろうと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の研究により、LNAではRNAiの効果は見られないことが明らかとなり、令和4年度以降は、未修飾の合成RNAによる実験を実施することとした。プロトコルの再検討などにより、アブラムシ1個体ごとの標的遺伝子の発現の解析が可能となり、実験の精度をあげることができた。生存率と繁殖力については、再検討が必要な実験区もあるが、令和5年度中に必要なデータを揃えて研究をまとめたい。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な推進方策に変更はない。当初予定していたBCR6の組換えペプチドの生産と抗菌活性の検討には着手していないが、BCR6遺伝子の発現抑制は、生存率を低下させることが明らかとなり、共生に必須であると考えられる。令和5年度は、論文作成に必要な信頼性の高いデータの取得と整備を目指し、「アブラムシのBCRはブフネラとの共生に必須である」ことを示す初めての論文として出版することを最優先に研究を進めたい。
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