研究課題/領域番号 |
21K05693
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
小坂 肇 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (20343791)
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研究分担者 |
佐山 勝彦 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353711)
神崎 菜摘 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70435585)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 広域分布 / 局所分布 / 飼育 / 社会性昆虫 / 寄生生物 / 膜翅目 / 高次捕食者 / 捕食寄生者 |
研究開始時の研究の概要 |
スズメバチ女王を不妊化する寄生線虫(スズメバチタマセンチュウ)の地理的分布を調査している過程で、スズメバチ女王の新たな天敵を発見した。その天敵は、宿主に感染後、宿主を直ちには殺さずに一定期間活動させた後に宿主を殺すタイプの飼い殺し寄生バチであった。スズメバチ女王を宿主とする寄生バチは世界的にも報告がない。本研究では、この新たに発見された寄生バチの寄生率や宿主範囲などの基礎的な生態と既知種との系統関係を明らかにする。
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研究実績の概要 |
スズメバチに寄生する寄生バチの広域的な分布を調べた。熊本市、阿蘇市、熊本県西原村、京都市及びつくば市でスズメバチ女王をそれぞれ50頭以上採集した。採集方法はベイトトラップを用いた誘引捕獲、あるいは捕虫網による捕獲(直採り)とした。捕獲したスズメバチを解剖して本種の寄生の有無を確認したが、本種の寄生は見られなかった。これらから、本種は我が国に広く普遍的に分布しているのではない、あるいは、多くの場所ではここでの方法のようにスズメバチ女王を採集して解剖することでは検出できないくらいの低い密度で生息している可能性が考えられた。 本種寄生バチの局所的な分布も調べた。長野県内で本種を発見した場所(発見場所)と、その場所から1㎞程離れた場所(周辺場所)で寄生バチの寄生率を調べた。ベイトトラップを用いて5月からスズメバチ女王を採集し、解剖して寄生の有無を調べた。発見場所で採集した約80頭のスズメバチ女王への寄生バチの寄生率は約15%であった。一方、周辺場所で採集した約190頭のスズメバチ女王への寄生バチの寄生率は約3%であった。寄生バチの寄生率が1㎞程度離れた2地点で大きく異なったことから、寄生バチの分散能力は低く、寄生バチに寄生されたスズメバチの行動範囲も広くないことが示唆された。 前年度、飼育していたスズメバチから脱出した寄生バチ幼虫の観察も続けた。寄生バチ幼虫は脱出後、繭を作った。1年経過したが、繭からの寄生バチ成虫の脱出は見られなかった。本年度も同様の観察を行い、飼育中のスズメバチから寄生バチ幼虫が脱出し、幼虫は繭になった。今後も観察を続け、寄生バチ幼虫の脱出1年後に寄生バチ成虫が羽化するかどうか確認する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題ではスズメバチに寄生する寄生バチの基礎的な生態解明を目的としている。これまでに調査地における寄生バチの宿主となるスズメバチの種、寄生率、寄生時期を明らかにし、また、宿主から脱出した寄生バチ幼虫が繭を作ることを確認した。これらに加え、本種の広域的な分布が限られている可能性があることと、局所的な分布様式が明らかになりつつある。以上から、本種寄生バチの基礎的な生態が一層明らかになり、現在までの進捗状況を、おおむね順調に進展している、とした。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の目的はスズメバチに寄生する寄生バチの基礎的な生態と系統関係の解明である。基礎的な生態については、2年間の研究で明らかになりつつある。研究最終年度の次年度は、今までの生態調査に加え、その系統関係の解明を試みる。
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