研究課題/領域番号 |
21K05731
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
間野 伸宏 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (10339286)
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研究分担者 |
高井 則之 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (00350033)
周防 玲 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (20846050)
柴崎 康宏 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (30750674)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 魚病 / 疫学調査 / 河川動態 / 細菌性冷水病 / アユ |
研究開始時の研究の概要 |
アユの細菌性冷水病(冷水病)は、アユが放流されている河川においてアユ釣り解禁後に主に認められるが、その発生源は特定されていない。そこで本研究では新規培養法を確立し、毎年冷水病が発生している水系で採捕される遡上アユ、放流アユ、およびおとりアユから原因細菌の分離培養を行い、病魚由来のものとゲノム核酸配列を比較することで、河川のアユに大量死をもたらす冷水病原因細菌の由来を特定する。
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研究実績の概要 |
本研究は、解禁時期である6月を中心に河川で認められるアユの細菌性冷水病(以後冷水病と称す)の発生源特定や冷水病原因細菌(以後Fp)の河川動態の一端を解明することを目的とする。前年度では、調査対象としているモデル水系において冷水病の発生が殆どみられず、アユから分離されたFpの培養菌株も僅かであった。
そこで令和4年度ではFpの分離培地の種類を変更し、更にアユ生体成分を添加した改変培地を用いて、同河川で保菌調査を進めた結果、放流種苗のアユからは分離培養されず、冷水病の発生は本年度も僅かであったものの、5~7月にかけて河川で採捕したアユから104菌株が分離された。またアユ以外の魚種からは、8月に9魚種から分離された。しかし、Fp分離菌株の多型解析を行うためPCR-RFLP解析を行ったところ、全て同一の遺伝子型(A-S-QR-C)であり、発生源の絞り込みはできなかった。
調査対象のアユについては、耳石形態などを指標とした既知の形態学的判別法では、由来の識別(グルーピング)が困難であったため、安定同位体比を指標とした解析を実施したところ、放流直後の個体と一定期間河川に生息していたアユを識別することが可能であった。そこでFpの保菌結果と安定同位体比を組み合わせて解析した結果、放流直後の個体群において一定の割合でFp保菌魚が確認されたことから、アユは放流されてから短期間のうちにFpを保菌することものと推察された。次年度も同実験を行うことで、再現性を確認したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、調査対象としたモデル水系において冷水病の発生は僅かであったものの、供試分離培地の変更・改変により、100菌株以上の分離菌株を得ることができた。また、同一季節ではなかったもののアユ以外の魚種からも分離することができた。更に、安定同位体比を指標とすることで、放流直後のアユと一定期間河川で生息していたアユを識別することができ、放流直後にFpを保菌するアユが一定数いることも明らかにすることができた。なお、分離Fpを対象としたPCR-RFLP解析ではFpの遺伝的多様性を検出することができず、発生源の絞り込みに至らなかったことから、おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度で使用した分離培地は、既存の培地に、アユの生体成分を添加して調整したものである。同培地は、Fpの増殖能を向上させることを予備試験で確認しており、モデル河川での保菌調査でも高い有効性が確認された。ただし、生体成分の最適保存法や使用可能期間については情報を得ることができておらず、特に夏場において分離効率の低下が確認された。よって、令和5年度は、安定したFpの分離培養系の確立を達成するためにも、生体成分中に含まれるFpの増殖能向上因子の特定を目指す。また、令和4年度で分離されたFpは、全て同一の遺伝子型であったことから、令和5年度では新規の多型解析法を導入する。更に、令和4年度の調査によって、安定同位体比が、特に放流直後のアユを検出する指標として有効であることが明らかとなったことから、令和5年度も同解析を継続し、特に放流直後のアユが保菌に至るプロセスを解析する。上記結果をとりまとめ、河川におけるFpの動態を提示する。
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