研究課題/領域番号 |
21K05748
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
高巣 裕之 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (00774803)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 溶存態有機物 / 陸域起源有機物 / 有明海 / 諫早湾 / 陸起源有機物 / 炭素隔離 |
研究開始時の研究の概要 |
大気中の二酸化炭素濃度上昇の緩衝作用を果たしている海洋沿岸域の有機炭素隔離機構において、隔離能力を左右する「陸起源有機物のパラドックス問題」の解明に挑戦する。具体的には、二酸化炭素固定媒体として機能している海洋の溶存態有機物の起源として、陸起源有機物がどの程度寄与しているのかを、申請者がこれまで培ってきた地球化学と微生物学的な技術を駆使して明らかにする。本研究の成果は、海洋の炭素隔離機構の解明への寄与にとどまらず、将来的な気候変動予測においても極めて重要な情報を提供することが期待される。
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研究実績の概要 |
初年度に、有明海奥部海域の溶存態有機物の炭素安定同位体比を測定したところ、ほとんどのサンプルにおいて、その値は海洋起源有機物の値に近く、陸起源有機物のシグナルがほとんど検出されなかった。調査対象とした有明海奥部海域には、河川由来の溶存態有機物が大量に流入していることを考えると、上述の観測結果は、陸起源溶存態有機物が沿岸海水中において分解された結果であると解釈できる。この解釈の妥当性を確認するために、有明海の海水を用いた陸域起源溶存態有機物の分解性を評価する培養実験を実施した。流入河川から距離の異なる5地点より採取した海水を用いた培養実験により、海域起源と陸域起源の溶存態有機物の分解量を、培養前後の溶存態有機炭素の濃度の変化と炭素安定同位体比の変化から評価したところ、3地点において陸域起源の溶存態有機物の分解量の方が海域起源のそれを上回っていた。このことから、現場観測と合わせて、実験系においても「陸起源溶存態有機物が従来考えられているよりも、沿岸海水中において分解を受けやすいという」仮説を支持する結果が得られた。 また、有明海の支湾である諫早湾の海水に、同湾への陸域起源有機物の流入源である干拓調整池から抽出・濃縮した陸起源溶存態有機物を添加する実験を行った。その結果、陸起源溶存態有機物の添加により、植物プランクトンの増殖が促進されることが明らかとなった。細菌による有機物分解を阻害した場合でも、植物プランクトンの増殖が促進されたことから、細菌だけなく、植物プランクトンによる取り込みも、陸起源溶存態有機物の除去過程のひとつである可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目は、初年度の現場観測によって得られた結果の検証を行うため、現場海水を用いた培養実験を行い、「陸起源溶存態有機物が従来考えられているよりも、沿岸海水中において分解を受けやすい」という仮説を支持する結果が得られた。また、当初の研究計画には無かったものの、諫早湾の海水に、陸域起源有機物の溶存態有機物を添加する実験を行い、細菌だけなく、植物プランクトンによる取り込みも、陸起源溶存態有機物の除去過程のひとつである可能性を示す結果が得られた。 一方で、今年度の目標に掲げていた、有明海および諫早湾における陸起源溶存態有機物の動態を、溶存態有機物の三次元励起蛍光スペクトル解析と尿素をマーカーにして追跡する調査は完了していない。従って、この点に関しては計画よりもやや遅れている。しかし、上述の通り、当初の予定には無かった、諫早湾における添加培養実験を追加実施できたことから、総合的にはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
有明海および諫早湾における陸起源溶存態有機物の動態を、溶存態有機物の三次元励起蛍光スペクトル解析と尿素をマーカーにして追跡する調査を完了する。また、最終年度にあたるため、まだ論文化できていない結果について取りまとめをして、国際学術誌へ投稿を完了する。
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