研究課題/領域番号 |
21K05771
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40040:水圏生命科学関連
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
平山 真 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 講師 (40535465)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | レクチン / 糖鎖 / 食用紅藻 / 抗腫瘍作用 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、食用紅藻に多量に含まれる機能性レクチンが、摂食後に腸管に到達するかどうか、腸管到達後にがんの発現を抑制するかどうか、腸内細菌叢に影響を与えるか、腸管を透過して血中に移行するのか、そして血中に移行したレクチンがどのような挙動を示すのか、についてin vivo試験により段階を追って明らかにする。さらに、培養細胞を用いたin vitro試験により、レクチンの抗腫瘍作用の発現機構を分子レベルで明らかにし、その後の応用研究への明確な根拠となる知見を得る。
|
研究実績の概要 |
食用紅藻トサカノリ、カギイバラノリおよびトゲキリンサイは糖結合性タンパク質「レクチン」を多量に含有し、種々がん由来培養細胞に対する増殖抑制効果を示すことが見出されている。本研究では、これら3種紅藻レクチンを対象に、摂食後の機能特性とその分子メカニズムの解明を目的とする。本年度はまず実際の食事モデルにおける藻体自体によるレクチンの消化酵素保護効果を調べた。ヒトの嚥下サイズを想定した5 mm程度の藻体切片を作成し、37℃下で人工胃液処理に供し、経時的に回収後、抽出操作に付した。得られた抽出液の赤血球凝集活性試験およびSDS-PAGEに供することで、藻体自身によるレクチンの消化酵素保護効果を評価した。その結果、3種藻体いずれにおいても人工胃液処理後のレクチン活性の減少はほとんどみられず、SDS-PAGEにおいて各レクチン由来バンドが明瞭に認められた。食用紅藻を生で喫食後、藻体により保護されたレクチンが腸まで届いている可能性が示された。 次に、カギイバラノリレクチンを対象にヒト結腸がん由来培養細胞上のレセプター検索を行い、増殖抑制の作用機序の推定を試みた。すなわち、ビオチン化した同レクチンを細胞に添加して1時間静置後、細胞を溶解し、遠心分離後上清にストレプトアビジン磁性ビーズを添加し、ビオチン化レクチンおよびレクチンが結合したレセプターを回収した。これらレセプターを可溶化後、SDS-PAGEに供し、レクチン非添加区の結果と差異がみられたバンドにつき、質量分析によるペプチドマスフィンガープリンティングに供した。データベース検索の結果、細胞膜上に局在し、N結合型もしくはO結合型糖鎖を持つ複数のレセプター候補が見出された。これらには様々ながんマーカーとしても知られるポドカリキシンやインテグリンなどが含まれ、カギイバラノリレクチンもこれら分子をレセプターとして認識する可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、摂取による人体への好影響が期待されるものの、栄養学上不明な点が多い海藻レクチンの摂食後の機能特性の解明を目指し、本年度は3種食用紅藻レクチンの藻体自体による消化保護効果と、紅藻レクチン1種におけるがん由来培養細胞上のレセプター検索を行った。次年度以降、他2種レクチンにおける同レセプターを検索して比較解析することで、検出されたレセプターとレクチンの糖鎖結合特異性との相関や相違を明らかにするとともに、さらに詳細な分子レベルにおける増殖抑制効果の作用機序を解析することを計画している。以上、本研究はおおむね順調に進展しているものと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、他2種紅藻レクチンについてもカギイバラノリレクチンと同様にがん由来培養細胞上のレセプター検索を行う。検出されたレセプターが有する糖鎖構造を解析し、紅藻レクチン結合性との関連を調べる。また、レクチンが結合したレセプターへの影響を調べるため、同レセプターが関連する各カスケードの活性化度などを調べ、レクチンによる増殖抑制作用との関連を評価する。次に、腸管吸収モデルとして有用なCaco-2細胞を用いて各レクチンの腸管透過性について解析する。すなわち、トランズウェルの透過性膜上に腸上皮様に分化させた同細胞を調製し、管腔側にレクチン(藻体由来もしくは大腸菌組換え体)を添加後、基底膜側へ透過したレクチン量を、特異抗体を用いたウエスタンブロットおよびELISA法により検出・定量することで腸管透過性を評価する。さらに、マウスに経口投与後、経時的に血中および糞中のレクチン存在量をウエスタンブロット法またはELISA法により調べ、血中移行性ならびに血中半減期、さらに摂取後に腸管に到達しているかどうかを調べる。前述のように、各レクチン粗抽出物が結腸がん由来培養細胞HT-29に対して増殖抑制能を示すことが明らかになっていることから、大腸がん誘発物質(アゾキシメタン)と各レクチンをそれぞれマウスに経口投与し、同レクチンによる短期における前がん病変抑制能、および長期における大腸がん抑制能について調べる。レクチンの血中移行性が認められた場合、担がんマウスに対して各レクチンの経口投与試験を行い、大腸がんなど消化管上皮性がん以外のがんに対する同レクチンの効果を調べる。さらに、レクチン投与・非投与のマウス糞中の善玉菌・悪玉菌の存 在量を次世代シーケンサーにより定量し、投与群・コントロール群の菌種の存在比を比較することで、細菌叢変化への影響の有無を調べ、今後の研究の展望を図る。
|