研究課題/領域番号 |
21K05953
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
山本 欣郎 岩手大学, 農学部, 教授 (10252123)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 頸動脈小体 / 低酸素 / シナプス可塑性 / ラット |
研究開始時の研究の概要 |
頸動脈小体ではグロムス細胞が血中酸素濃度低下を感知して脱分極し、舌咽神経の分枝である頸動脈洞枝を介して中枢神経に情報を伝達する。また、頸動脈小体にはグロムス細胞から感覚神経終末へのATPによる興奮性シナプス、神経終末から感覚神経終末へのグルタミン酸を利用した興奮性シナプス、グロムス細胞間のドーパミンによる抑制性シナプスという3種類の異なるシナプスがある。本研究では、感覚性長期増強モデルラット、低酸素適応反応モデルラットを作成し、シナプスの微細構造変化、シナプス構成タンパク質の変化、神経活動の変化を検討し、3種のシナプスの可塑性の面から頸動脈小体の環境適応機構の解明を試みる。
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研究実績の概要 |
前年度に引き続き、頸動脈小体化学受容細胞および感覚神経終末における小胞分泌関連タンパク質の解析を行った。頸動脈小体の化学受容細胞にはCAMK2β、γおよびδが、感覚神経終末にはCAMK2βおよびγが存在することに加え、化学受容細胞および感覚神経終末ともに細胞外シグナル制御キナーゼ1および2(ERK1/2)が存在することを見出した。ERKの阻害により化学受容細胞の低酸素受容能が低下することが報告されていることから、ERKはCAMK2に加えて頸動脈小体のシグナル調節分子の候補であると考えられる。さらに、神経終末にはリン酸化ERK、シナプシンⅠ、リン酸化シナプシンⅠが認められることがわかった。このことから、頸動脈小体内ではキナーゼ活性の調節によって低酸素に対する反応性を調節することが予測された。 間歇低酸素暴露の実験においては、短期間の暴露に加えて、4週間(1日あたり5分間に1回5%O2を8時間)の間歇低酸素暴露実験を行った。実験群ではCAMK2、ERK1/2の変化は明らかではなかったが、細胞全体に強いリン酸化ERK陽性反応を示す化学受容細胞が増加した。以上の結果から、低酸素暴露によりCBの化学受容細胞においてERK1/2のリン酸化による活性化が生じるとともに、核移行する分子が増加することがわかった。ERKの活性増強により、頸動脈小体内の受容体輸送、小胞分泌、タンパク質の合成が促進されている可能性がある。また、リン酸化シナプシン抗体に対する陽性反応は、コントロール群では化学受容細胞との接触面に局在するのに対し、間歇低酸素暴露では神経終末全体に分布域が拡がることが観察された。シナプシンのリン酸化により、リザーブプールから分泌小胞の解離が生じていることが示唆された。神経終末の小胞には小胞性グルタミン輸送体2が存在することが知られており、感覚神経終末におけるグルタミン放出が間歇低酸素暴露の際の頸動脈洞枝の活動亢進に関与する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
間歇低酸素暴露のモデル動物、持続暴露のモデル動物を作製する環境は整ったので、常時モデル動物を作成できるようになった。現在は、頸動脈小体の感覚神経終末における間歇低酸素暴露時のリン酸化シナプシンの変化を検索している。 モデル動物の材料における、キナーゼ、小胞分子(小胞性グルタミン酸トランスポーター2、小胞性モノアミントランスポーター2)、受容体分子(P2X3-ATP受容体、ドーパミンD2受容体)等の暴露後の変化を検討中で、順調に進んでいる。 また、電子顕微鏡解析の解析技術は喉頭および頸動脈洞の材料を用いて連続切片による立体再構築の手法を確立したので、暴露実験を行った頸動脈小体での解析を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、低酸素暴露により感覚性長期増強モデルラットおよび低酸素適応モデルラットを作製する。モデルラットの材料から頸動脈小体等を採取し、免疫組織化学的検索、電子顕微鏡的検索(化学受容細胞、神経終末、シナプス構造等の微細構造)、生理学的検索(血圧変化、頸動脈洞枝の低酸素応答発火頻度)を行い、各モデルラットの特徴を捉える。特に、生理学的実験では満足な結果が得られていないので、血圧変化、頸動脈洞枝の低酸素応答発火頻度により、モデルラットの生理学的特徴を明らかにしたい。
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