研究課題/領域番号 |
21K05964
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
村田 拓也 岡山理科大学, 獣医学部, 准教授 (70281186)
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研究分担者 |
汾陽 光盛 岡山理科大学, 獣医学部, 教授 (00153007)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | アネキシンA1 / アネキシンA5 / 下垂体 / ゴナドトロフ / 性腺刺激ホルモン |
研究開始時の研究の概要 |
雌性動物の繁殖機能は、視床下部―下垂体―卵巣を軸として制御されている。カルシウム依存性リン脂質結合タンパク質であるアネキシンA(ANXA)は、最近注目されている因子である。ANXA1とANXA5が、下垂体からの性腺刺激ホルモン分泌に促進することが明らかになっているが、そのメカニズムは未だ明らかにされていない。また、ANXA1、ANXA5とビタミンD受容体の間で相互に影響しあっている可能性を示唆する結果が得られている。本研究の目的は、この点に注目し、雌性動物の下垂体からの性腺刺激ホルモンの分泌において、ANXA1がどのような役割を果たしているのかを解明することである。
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研究実績の概要 |
雌性動物の繁殖機能は、視床下部―下垂体―卵巣を軸として制御されている。アネキシンA5(ANXA5)は、下垂体に発現し、下垂体からの黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を促進する。最近、ANXA1も、下垂体に発現し、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)により発現が増加することが明らかになった。本研究の目的は、ANXA1のANXA5およびビタミンDレセプター(VDR)との関連に注目し、下垂体からのLHおよびFSHの分泌において、ANXA1がどのような役割を果たしているのかを解明することである。マウス下垂体ゴナドトロフ由来のLβT2細胞において、GnRHアゴニスト(GnRHa)は、mitogen-activated protein kinase-protein kinase Cの活性化により、Anxa1とAnxa5の発現を刺激していることが明らかになった。異なる濃度のGnRHa刺激において、Anxa5の発現には大きな違いはなかったが、Anxa1の発現では、高濃度のGnRHa刺激により大きく増加した。また、FSH発現を特異的に促進する因子であるアクチビンが、Anxa5の発現を抑制し、GnRHaによるAnxa1発現の増加をさらに増強することが明らかになった。さらに、雌ラットの下垂体前葉におけるAnxa1、Anxa5、およびVdrの発現が、発情前期において、有意に減少し、性周期を通して、この3因子間で、正の相関が見られることが明らかになった。これらのことは、Anxa1とAnxa5は調節系および作用において類似性が高いと考えられてきたが、未だ明らかになっていない両者間の異なる調節系や作用の存在を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、3因子(Anxa1、Anxa5、Vdr)の性周期中の変化、パルス状GnRHの関与、ノックアウト(KO)マウスおよび下垂体初代培養系による3因子の相互作用の検証を行う。2022年度は、以下の2実験を行った。 【実験1】各性周期の雌ラット下垂体前葉のAnxa1、Anxa5、とVdrの発現が、発情前期で有意に減少すること、および3因子間で正の相関がみられることを示した(Murata T. et al., J. Vet. Med. Sci. 84: 1065, 2022)。この結果は、GnRHサージの影響を除くために各ステージの午前中の採取を行ったが、GnRHサージが起こる発情前期では2時間ごとの採取を行い、GnRHにより誘導される遺伝子間での正の相関を見出している。 【実験2】LβT2細胞におけるAnxa1発現調節の解析を行った。LβT2細胞のAnxa1とAnxa5の発現は、ともにMEK-PKCの活性化を伴いGnRHaによって発現が増加することを示し(Murata T. et al., Endocrine J. 69: 283, 2022)、さらに異なる濃度のGnRH刺激により、Anxa1とAnxa5の発現パターンが異なることが明らかになった。さらに、FSH発現を刺激する因子であるアクチビンが、LβT2細胞においてAnxa5の発現を抑制すること、そしてGnRHaにより起こるAnxa1発現の増加をさらに増強することを明らかにし(Murata T. et al., Endocrine J. 69: 1193, 2022)、さらに糖質コルチコイドが同様の作用を示すことを明らかにした。これらのことにより、Anxa1とAnxa5の発現において異なる調節系の存在が示唆され、マウス下垂体由来の濾胞星状細胞様のTtT/GF細胞などの他の培養細胞を用いて検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、3因子(Anxa1、Anxa5、Vdr)の下垂体での発現の変化、パルス状GnRHの関与、ノックアウト(KO)マウスおよび下垂体初代培養系による3因子の相互作用の検証を行う。 【実験1】ラット下垂体での3因子の遺伝子発現パターンの解析(村田)およびラット下垂体の免疫組織化学的解析(村田、汾陽)を行う。卵巣摘出後の下垂体のAnxa1とAnxa5の変動を調べ、GnRHの影響について検証する。免疫組織化学法による解析を行い、Anxa1、Anxa5、Vdrを発現している下垂体の細胞の同定および周期中の発現の変化を調べる。 【実験2】マウス下垂体ゴナドトロフ由来のLβT2細胞におけるANXA1作用の解析、マウス下垂体由来の濾胞星状細胞様のTtT/GF細胞におけるAnxa1の発現調節の解析、および下垂体初代培養系でのANXA1およびGnRH作用の検証(村田)を行う。TtT/GF細胞は、Anxa1およびアクチビン結合タンパクであるフォリスタチンを発現している。LβT2細胞およびTtT/GF細胞を用いて、パルス状のGnRH刺激がどのようにAnxa1の発現調節に関わっているのかを調べ、両細胞間の共通点と相違点を比較する。さらに、各実験から得られた結果を基に、GnRH作用が下垂体初代培養細胞において再現されるのかどうかを検証する。
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