研究課題/領域番号 |
21K05969
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42030:動物生命科学関連
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
岩波 礼将 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 特任准教授 (10360504)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 免疫システム / 魚類 / メダカ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、適応免疫システムの欠損がゼブラフィッシュに比べてメダカで生存により重篤な影響を与えることに着目し、これが正常時では無害な腸内細菌叢が免疫不全の状態では害を及ぼすためと仮説を立てた。そこで、メダカ免疫不全変異体パネルの作成とgerm-free環境の作出によって免疫システム機能解析を進め、適応免疫と自然免疫の相互作用を明らかにする。さらにそれらの機能を繋ぐNK細胞の同定と、哺乳類とは異なるサイトカインネットワークの解明を目指す。 本研究で魚類の普遍的な免疫システムの機能とメダカの種特異的な免疫システムの機能を解明し、魚類の免疫系の進化と環境適応についての新たな知見を得ることが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、小型魚類のモデル動物であるメダカを用いて比較ゲノムと機能解析により、魚類の種間で共有された免疫システムの機能と種内で独自に獲得された機能を明らかにすることを目的とし、以下の2つの研究実施を計画した。 ①メダカ自然免疫および適応免疫システムの役割と腸内細菌との相互作用の解明 ②メダカサイトカインシグナルネットワークの解明とナチュラルキラー (NK) 細胞の同定 ①においては、昨年度までにgerm-free条件でのメダカ幼魚の育成に成功して腸管発生異常が明らかになったが、transcriptome解析によりgerm-freeメダカにおいて免疫関連遺伝子の発現異常を見出した。また、昨年度に作成したメダカ適応免疫不全変異体の成魚で腸内細菌叢が時期特異的にダイナミックに変化することが分かった。 ②においては、①と関連してインターロイキン2受容体ガンマサブユニットの変異体においてT細胞およびナチュラルキラー細胞の発生異常を見出した。また昨年度の先進ゲノム支援による野生型および適応免疫不全変異体の腎臓(一次造血組織)内リンパ球分画のsingle cell transcriptome解析の結果NK細胞分画を特定し、サイトカイン受容体を含めてNK細胞特異的に発現する機能遺伝子の候補を得ることができたが、これらの遺伝子を欠損するメダカ変異体を樹立した。さらにNK細胞特異的に発現すると考えられる抗菌ペプチドの機能解析のため、大腸菌の系でのペプチド発現と抗ペプチド抗体の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①において、germ-free条件でのメダカ育成手法の確立し、腸管の表現型解析とトランスクリプトーム解析の結果を得ることができ、順調に進行している。また、適応免疫不全変異体群やT細胞特異的EGFP発現トランスジェニックメダカの樹立も成功し、免疫不全の表現型解析と腸内細菌叢の比較も完了し、論文投稿準備を始めている。 自然免疫不全変異体も作成したものの、ゼブラフィッシュのオーソログ遺伝子の変異体と異なり生存に影響しないことが明らかになった。とはいえこれは比較免疫の観点で興味深いので、別経路の自然免疫不全変異体を新たに作成しつつあり、これらの二重変異体で表現型を解析でき、自然免疫と適応免疫のバランスに関する知見を得ることができると期待している。 ②において、昨年度先進ゲノム支援で適応免疫異常のrag1変異体のsingle cell transcriptome解析を依頼した結果、NK細胞特異的機能遺伝子候補を挙げることができ、それらの欠損変異体を作成し表現型解析を始めている。NK細胞の分化マーカーを明らかにするために胸腺のsingle cell transcriptome解析を計画しており、今年度の先進ゲノム支援には採択されなかったが共同研究で進行中である。またNK細胞特異的に発現すると考えられる抗菌ペプチドの大量発現と抗ペプチド抗体の準備も進めている。 これらを踏まえて研究は概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
①において、適応免疫不全変異体メダカではゼブラフィッシュと異なり生存期間の短縮が見られるものの、2-3ヶ月齢までは正常であることが分かった。この時期までに自然免疫から適応免疫への移行が起こるのではないかと仮定し、自然免疫不全と適応免疫不全の変異体およびダブル変異体の表現型を比較する予定である。これにより、自然免疫と適応免疫の分担を明らかにしたいと考えている。また、しかしながら上記のように、自然免疫不全変異体においてもゼブラフィッシュとは異なり生存に影響は見られない。そこで自然免疫の別経路の変異体を作成すると共に、免疫不全の影響を明瞭化するために細菌感染実験を計画している。 ②において、NK細胞のマーカー遺伝子と考えられるサイトカイン受容体と抗微生物ペプチドの欠損メダカを解析し、NK細胞の生体内での機能を明らかにすることを目指す。また、抗微生物ペプチドの投与により適応免疫不全を改善しうるかどうか検証する。さらに、single cell transcriptome解析により見つかったNK細胞特異的サイトカイン受容体を手始めに、サイトカインおよびその受容体欠損による免疫細胞分化、活性におけるサイトカインシグナルの役割を調査し、哺乳類や他の魚類との比較による種特異性と共通性の理解を目指す。
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