研究課題/領域番号 |
21K06018
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
井上 邦夫 神戸大学, 理学研究科, 教授 (40252415)
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研究分担者 |
松花 沙織 神戸大学, 理学研究科, 助教 (70767251)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 選択的スプライシング / 熱ストレス / ゼブラフィッシュ / 遺伝子発現 |
研究開始時の研究の概要 |
選択的スプライシングは、熱ストレス応答に重要な役割を担うと考えられるが、その制御機構や生理的役割については多くの未解明な問題が存在する。本研究では、(1)熱ストレス応答性の選択的スプライシング制御因子の翻訳後制御が熱ストレス応答制御の中核をなしているとの作業仮説を立て、主にヒト培養細胞において、その検証と詳細な分子基盤の解明を行う。また、(2)小型淡水魚ゼブラフィッシュをモデル動物として用い、熱ストレスにより生成する選択的スプライシング産物が動物のストレス応答や恒常性維持にどのような役割を果たすか明らかにする。
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研究実績の概要 |
細胞は各種ストレスを含む細胞環境に応答して遺伝子発現制御を行う。真核遺伝子の多くはイントロンで分断されており、機能的なmRNAが生成するにはイントロンを除去するスプライシング反応が必須である。選択的スプライシングの制御は、プロテオーム変化を介し、細胞環境に応じた細胞の振る舞いや恒常性の維持に働く遺伝子発現制御機構として重要と考えられるが、その分子基盤や個体レベルでの役割については多くの未解明な問題が存在する。本研究では、(1) ヒトhsp105遺伝子やtnrc6a遺伝子などにおける熱ストレス応答性の選択的スプライシング制御因子として同定したSRSFやhnRNP K などが通常温度でも豊富に存在するRNA結合タンパク質であることから、制御因子の翻訳後制御、とりわけ、リン酸化・脱リン酸化による機能調節が熱ストレス応答制御の中核をなしているとの作業仮説を立て、主にヒト培養細胞においてその検証と詳細な分子基盤の解明を行うとともに、(2) 熱応答性の制御を受けるエキソンをゲノム編集により恒常的に挿入あるいは欠損するよう改変した遺伝子を持つゼブラフィッシュ系統を作製し、熱ストレスにより生成する選択的スプライシング産物が動物のストレス応答や恒常性維持にどのような役割を果たすか明らかにすることを目的としている。本年度は、主に、ヒト細胞において、tnrc6a遺伝子と高い相同性を有するtnrc6c遺伝子において新規の熱ストレス応答性スプライシングの存在とその制御因子候補を明らかにするとともに、SRSF2遺伝子の熱ストレス応答性の選択的スプライシング制御機構について知見を得た。また、前年度に引き続き、熱ストレス応答制御を可視化するレポーター系の構築に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の超低温フリーザー故障による細胞株、精製タンパク質やゲノム編集用タンパク質など凍結サンプル類の失活等のため、選択的スプライシング制御因子の機能解析や生化学的な解析、ゼブラフィッシュの変異体作成などについて、当初計画より着手・進行に遅れがある。
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今後の研究の推進方策 |
熱ストレス応答性の選択的スプライシングを可視化する実験系について、検出感度を向上させたGFPレポーター遺伝子について、Tol2トランスポゾンを用いて、ゼブラフィッシュのトランスジェニック系統を作製し、個体レベルでの解析を行う。また、ユタ大学グループとの共同研究により、変異体系統の作製を進める。一方、線虫C. elegansについても熱ストレス応答性の選択的スプライシングが見られるか検討を行う。 熱ストレス応答性の選択的スプライシングの各制御タンパク質(SRSF2, SRSF10, SFPQ, hnRNPK)について、引き続き、リン酸化状態による活性調節の分子基盤解明を進める。1年目に各種の変異導入を行ったSRSF10を含め、リン酸化修飾部位や脱リン酸化酵素結合候補部位に変異導入した各制御タンパク質について、hsp105遺伝子(制御タンパク質SFPQ, hnRNPK)やtnrc6a遺伝子(制御タ ンパク質SRSF2, SRSF10)を指標とした選択的スプライシング制御活性や、細胞内動態、相互作用タンパク質の変化を解析し、制御タンパク質のリン酸化状態の変化がどのように熱ストレス応答性の選択的スプライシング制御に結びついているのか詳しく明らかにする。今年度に明らかにしたtnrc6c遺伝子やSRSF2遺伝子における熱ストレス応答性選択的スプライシング制御機構についても検討に加える。
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