研究課題/領域番号 |
21K06124
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43050:ゲノム生物学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
粟津 暁紀 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 准教授 (00448234)
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研究分担者 |
坂本 尚昭 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 准教授 (00332338)
上野 勝 広島大学, 統合生命科学研究科(先), 准教授 (90293597)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | X染色体対合形成 / 核スペックル / CTCF / 核小体 / DNA二本鎖切断修復 / 核内構造体 / 染色体動態 / ライブ観察 / 数理モデル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、機能性非コードDNAがコアとなり形成される核内構造体の未知の機能、特に「分裂酵母核のセントロメア集団と核小体の規則的な大振幅振動 」、「ウニ胚細胞核のセントロメアの核膜上偏在と核小体の核中央偏在」が転写活性領域形成へ及ぼす寄与を、蛍光ライブ観察とデータ駆動型物理モデルより考察し、「核機能におけるセントロメアや核小体の「局在・動態」の役割」、「多細胞生物の核内構造体の細胞分化に伴う「役割の変化」」 を明らかにする。分裂酵母とウニ胚両者の核内動態の研究は、核大域的な転写制御系の普遍的な時空間設計原理を浮き彫りにする。
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研究実績の概要 |
1. 細胞の転写制御を担う核内の動的な構造形成について、雌のマウスのES細胞が細胞分化を開始する際に起こす、X染色体同士の接近について、それを駆動する物理化学的メカニズムを明らかにした。この研究では、ES細胞から分化を開始する際に、X染色体内でのオープンクロマチン(ユークロマチン)と非オープンクロマチン(ヘテロクロマチン)の空間的配置が大きく変化し、それがX染色体が他の染色体と接する表面部分を柔らかなものに変化させることで、高分子の枯渇効果と同様のエントロピー力を起源とするX染色体同士の実効的な引力を惹起することを見出した(Komoto, et al., 2022)。 2. ヒト培養細胞で観察されている、細胞環境に依存した核スペックルの様々な構造変化を再現する数理モデルを構築し、実験により核スペックル構造制御の主たる役割を担うと予想されている分子、SRRM2(タンパク質), SON(タンパク質), MALAT1(ノンコーディングRNA), pre-mRNA、の間に働く実効的な相互作用を推定した(論文投稿中)。 3. ヒトなどの細胞核内などでコヒーシンと共同して間期染色体の3次元構造の制御に携わっているCTCFの機能について、その構造と機能の進化的な保存性を考察するため、それらの祖先型生物であるウニのCTCFの機能解析を進めた。その結果、ウニのCTCFは内包するZinc Finger ドメイン数が哺乳類などに比べて少ないことや、分裂期染色体の構造制御に関与していることなどが見出された(論文準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り成果が出ており、また次の段階への準備も進んでいるため、おおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ウニやショウジョウバエの初期胚発生時に明確に観察されている、ヒストンローカスボディの形成機序にちて、考察していく。この構造の中心にはヒストンをコードする遺伝子が百数十回繰り返すヒストンリピート配列と呼ばれるゲノム領域が含まれているが、そのような配列は実はヒトゲノム中にも存在しているため、ヒト胚発生時においても同様の現象が起きている可能性がある。 この研究ではウニを用いて、ゲノム中に異なる2つの染色体上に(つまり2倍体のウニ胚では核内に4つの染色体上に)存在するヒストンリピート配列の、発生ステージ依存的な核内配置制御の機序を解明する。 ウニでは、細胞分裂が盛んな時期に、4つのヒストンリピート領域が核の中央付近に集まり、巨大な核内構造体を形成するのに対し、細胞分裂があまり起こらない発生ステージでは、それらの領域は核内にランダムに配置することがわかっている。またこれまでに、ショウジョウバエ初期胚の核内染色体は、それぞれのセントロメアとテロメアが核内で対極に配置するよなラブル配向をとていることが知られている。また我々はこれまでに、ウニの発生初期において、セントロメアが核内で偏って存在していること、テロメアの分布にも偏りが存在する可能性があることを、それぞれ個別にに行った蛍光イメージングの結果として得ている。 そこで本研究では、セントロメア、テロメア、ヒストンリピートの三者を同時蛍光イメージングし、それに基づく数理モデルの構築とシミュレーションすることで、ラブル配向(様)構造形成がヒストンローカスボディ形成にどのように寄与する可能性があるのか、考察する。
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