研究課題/領域番号 |
21K06290
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
彦坂 暁 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 准教授 (30263635)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 無腸動物 / 進化 / 浸透圧適応 / 左右相称動物 / トランスクリプトーム / 共生 |
研究開始時の研究の概要 |
浸透圧変化への適応は、生物にとって最も重要な環境適応の一つである。無腸動物はきわめて単純な体制の海産無脊椎動物で、浸透圧調節に関わる腎臓や鰓などの器官を持たず、環境変化から体を守る殻や外骨格も持たないため、一見すると外界の浸透圧変化に対して脆弱であるかにみえる。ところが我々は無腸動物の一種ナイカイムチョウウズムシがきわめて広い塩濃度変化に耐えうることを発見した。無腸動物は動物進化の初期段階の形質を色濃く残す動物だと考えられている。本研究では、ナイカイムチョウウズムシの浸透圧適応機構を明らかにすることを通して、動物の祖先が浸透圧適応という課題にいかに対処していたのかを理解することを目指す。
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研究実績の概要 |
無腸動物はきわめて単純な体制をもつ海産動物で、多くの動物が浸透圧調節に用いている腎臓、鰓、腸管などの器官を持たず、環境変化から内部環境を保護する殻や外骨格も持たない。にも関わらず、無腸動物の一種ナイカイムチョウウズムシが海水の1/5から2倍まで、きわめて広い塩濃度変化に耐えうる広塩性であることを発見した。無腸動物は動物進化の初期段階の始原的左右相称動物の形質を色濃く残していると考えられており、かれらの浸透圧適応機構を研究することは、高度な器官を進化させる以前の動物の祖先が、浸透圧適応という重要な課題にいかに対処していたのか、その原初的機構の理解につながる可能性をもつ。 我々は2021年度にナイカイムチョウウズムシが遺伝子発現レベルでどのような浸透圧耐性機構を発動しているかについて調べるために、高塩濃度、低塩濃度で処理したナイカイムチョウウズムシからそれぞれRNAを抽出し、RNAの発現変化を調べた。その結果、塩濃度の変化によって発現が上昇あるいは低下している遺伝子の候補を見出した。2022年度もこの解析を継続しつつ、新たに以下の研究を行った。 瀬戸内海にはナイカイムチョウウズムシ以外に、Symsagittifera属の無腸動物が生息している。この種はナイカイムチョウウズムシより体サイズが小さく、より外部環境の影響を受けやすいと予想される。この種について浸透圧耐性を持つかを調べた結果、この種もかなり広い浸透圧変化に適応できることが示された。また孵化直後のサイズが小さいナイカイムチョウウズムシの幼体も、広い浸透圧適応能力を示すことがわかった。以上のことから、瀬戸内海の無腸動物は体サイズや成長段階にかかわらず、広い浸透圧適応能力を持つように進化してきたと考えられる。 現在はナイカイムチョウウズムシの細胞組織レベルでの浸透圧適応機構を調べるために、組織学的解析の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トランスクリプトーム解析に基づいて、浸透圧変化による遺伝子発現変化の解析を進めている。それに加えて、他種の無腸動物や幼若個体を用いた浸透圧適応実験なども進めている。また共生藻の培養による共生藻の浸透圧耐性実験も進めている。共生藻についてはゲノム解析が行われていないため、これを行う計画も進めている。 以上のことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
塩濃度の変化に対応して発現が変化する遺伝子について、より詳細に解析していく。計画の変更点として、ナノポアのMinIONシーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析を行うこと、ナイカイムチョウウズムシのゲノムのより詳細な解析を行うこと、株化した共生藻についてもゲノム解析やトランスクリプトーム解析を行うことなどを現在検討している。 また、塩濃度の変化に対応して、体型、細胞や組織の形態、藻類との共生関係、等がどのように変化するかも、光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いた組織学的解析によって調べていく予定である。
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