研究課題
基盤研究(C)
東南アジア地域は現在、類人猿や旧世界ザルの主要な生息地のひとつであり、彼らの祖先は中新世のあいだにアフリカから広がってきたと考えられるが、その拡散過程や進化史についてはまだほとんどわかっていない。本研究は、東部ユーラシアにおける類人猿の適応放散、特にオランウータンの進化史や、旧世界ザルの初期の拡散過程、当時の動物相、古環境の解明を主眼に据え、タイ東北部ナコンラチャシマ市近郊の化石産地から出土した霊長類を含む中新世から鮮・更新世の哺乳類化石の分析・記載、古環境復元などを行うものである。
タイ東北部ナコンラチャシマ近郊のターチャン地区からは東南アジアではまだ数少ない中新世のヒト上科化石とともに、様々な脊椎動物化石が多数産出している。本研究では、ナコンラチャシマのコラート化石博物館(東北タイ珪化木博物館)など現地研究機関の研究者らとの長年の協力関係のもと、ナコンラチャシマ近郊から出土した霊長類化石を含む中新世の脊椎動物化石を整理・分析するとともに、サンドピットの野外調査で化石を採集した。化石動物相の分析から年代が約700万年前の可能性が高いことが示唆された。また、従来とは別の地域で新たに開削されたサンドピットの脊椎動物化石の調査も開始した。
人類は過去における類人猿の適応放散のひとつとして誕生した。人類の起源を探るには、類人猿の進化史や彼らが生息していた過去の環境を知ることが必要不可欠である。ただ、化石の発見は往々にして偶然に左右される面が大きく、時代や地域により、化石記録の質や量はばらつきが大きい。東南アジアは現生類人猿が生き残っている数少ない地域のひとつであるが、これまで中新世にまで遡るような古い時代の類人猿化石はほとんど見つかっていない。本研究は、いまだに理解が進んでいない東南アジアにおける類人猿の進化や同時代に生息していた動物相、古環境について手がかりを与えうるものである。
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Annales de Paleontology
巻: 109 号: 4 ページ: 102659-102659
10.1016/j.annpal.2023.102659
PalZ
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