研究課題
基盤研究(C)
哺乳類の中枢神経系に広くみられる性的二型は性特異的もしくは性差のある行動の制御に関わっていると考えられているが、一部の例を除いて、脳の構造的性差が行動に与える影響は不明であった。申請者らは内側視索前野・分界条床核・扁桃体における3か所に性的二型核が存在し、2種の細胞が3領域で共通して分布することを発見した。、この性的二型細胞集団が行動の性差の責任領域の一つなのかについて検討するため、その解剖学的特徴づけを行うと共に、その機能を解明することを目的とする。
性的二形領域は神経の形態や細胞数、遺伝子発現などに顕著な性差がみられる領域だが、その機能を実証した研究はほとんどないが、その性質から性特異的な行動発現や生理機能の調節に深く関わる領域と考えられている。これまでの我々の予備的研究から複数の性的二形が見出されており、本研究ではその機能解明に取り組んでいる。我々が見出した内側視索前野の性的二形領域に特異的に発現する遺伝子として同定したもののうち、今年度は主にPenk陽性ニューロンの機能について検討した。本ニューロン群は性行動との関連が示唆されていることから、その他のニューロン群も含めてその機能について組織学的に検討した。本ニューロン群の機能についての示唆を得るため、最初に我々は超多重in situ hybridization(ISH)法を開発した。この手法は従来の多重蛍光標識が可能なISH-HCR(hybridization chain reaction)法をさらに発展させ、1回の標識で得たシグナルを消光し、再度染色を行うことで1切片もしくは1細胞から複数回の標識を行う手法である。性行動で神経活動が見られる内側視索前野の細胞群において、これまでも機能的示唆が得られていたエストロゲン受容体、性的二形のあるNeurotensin、Penk、Moxd1を共染色し、さらにVglut2やVgatといった神経伝達物質マーカー、神経活動マーカーであるc-Fosを染めることで性行動時に活動するニューロンを分類した。また、詳細な行動解析からB6Jマウス系統においてオスの性行動においては性的覚醒に二型があることを見出した。その結果、Penk陽性ニューロンは性行動の中でも性的覚醒に強く関連していること、抑制性であり、エストロゲン受容体を発現することなどが見出された。
2: おおむね順調に進展している
研究遂行のため、新たな技術開発に成功し、その技術を用いてこれまで不明であった内側視索前野におけるオス性行動に重要なニューロンの分類に成功した。また、DREADDやオプトジェネティクスなどを用いた行動実験も順調に進行しており、新たな知見を得ることが出来ている。
当初の研究計画に従い、最終年度はCreマウスを用いた行動実験についてサンプル数を増やしていく。また、カルシウムイメージングを用いた神経活動の把握についてのデータも得ることで多角的にニューロンの機能解明を行っていき、論文としてまとめていく。
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