研究課題/領域番号 |
21K06486
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47010:薬系化学および創薬科学関連
|
研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
田口 博明 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (20549068)
|
研究分担者 |
一二三 恵美 大分大学, 全学研究推進機構, 教授 (90254606)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 抗体酵素 / アルツハイマー病 / アミロイドベータ / タウタンパク質 / クリックケミストリー / 2機能性抗体酵素 |
研究開始時の研究の概要 |
アルツハイマー病(AD)は、認知症を引き起こす原因疾患で最も多い疾患である。ADの有力な原因物質としてアミロイドベータタンパク質(Aβ)とタウタンパク質(タウ)が考えられている。申請者は、ヒト血液中にタンパク質のアミド結合を加水分解する抗体酵素が存在することを発見し、抗体酵素が生体防御に関与している可能性を動物実験で示した。本研究では、これらADの原因タンパク質の凝集を抑制する新規な2機能性抗体酵素を得ることを目的とし、これら分子を用いたADの治療・予防薬へと展開するための創薬研究基盤を確立する。
|
研究実績の概要 |
令和4年度は(1)軽鎖抗体とその変異体の生化学的評価と(2) 軽鎖抗体の二量体化の検討を行った。(1) 軽鎖抗体とその変異体の生化学的評価:前年度は、アミロイドベータペプチドに特異的な抗体で、アメリカにてアルツハイマー病の治療薬として初めて承認されたアデュカヌマブ(ADUHELM)の軽鎖を発現する野生型ベクターと、野生型を1アミノ酸点変異により軽鎖抗体の95番目のプロリンを除去した変異体ベクターと大腸菌を用い、野生型軽鎖抗体と変異体軽鎖抗体のそれぞれの軽鎖抗体を得た。今年度はこれら得られた2種類の軽鎖抗体について生化学的評価を行った。まず、これら抗体軽鎖の基質特異性の検討を行うため、14種類のアミノ酸組成や長さの異なる蛍光合成基質を準備し、それぞれについて加水分解活性の測定を行った。その結果、3種類の蛍光合成基質について時間経過とともに蛍光強度の増加がみられ、基質の加水分解が起こっていることが分かった。加水分解が見られたいずれの基質においても加水分解速度は、変異体軽鎖抗体が野生型軽鎖抗体変異体より高かった。これら結果より、予想通り軽鎖抗体の95番目のプロリンを除去することにより、触媒機能部位がより好ましい構造になり、加水分解速度が速くなったことが考えられる。また、これらの違いを考察するため、軽鎖抗体と蛍光合成基質の分子モデルをそれぞれ作成した。 (2) 軽鎖抗体の二量体化:前年度は種々の条件を検討したが、ほとんどが軽鎖抗体モノマーでごく少量の2量体化された軽鎖抗体が見られた。今年度は、2量体化の収率向上を目指し、軽鎖抗体のC末端に存在するシステインにDNAを結合させ、DNAを用いた2量体化を計画した。16merのDNAをデザインし、3’または5’末端をアミノ化したDNAを合成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これら軽鎖抗体について生化学的評価および分子モデルの解析が現在進行中である。 二量体化された軽鎖抗体の収量の向上を目指し、DNAを用いた二量体化が進行中である。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度は、得られた軽鎖抗体の特徴について、蛍光合成基質を用いて、その加水分解活性や基質特異性について調べた。今後はさらに詳細な検討を行うため、アミロイドベータペプチドの部分構造を含むFRET基質やアミロイドベータペプチドを用いて加水分解活性の測定を行う。また、上記加水分解で生成されたペプチド断片は、HPLCを用い単離し、質量分析によりその構造を決定する。その後、構造決定されたペプチド断片より加水分解部位の決定を行う。また、前年度構築した分子モデルについて、蛍光合成基質とのドッキングモデルの構築を行い、その活性中心部分の詳細な解析を試みる予定である。さらにチオフラビンTを用い変異体のアミロイドベータペプチド凝集阻害活性について調べる。 軽鎖抗体の二量体化について、前年度までの実績では、ごく少量の二量体化された軽鎖抗体しか確認できなかった。そこで今後も引き続き軽鎖抗体の軽鎖抗体誘導体化反応の条件などの工程を詳細に検討し、二量体化反応前の軽鎖抗体に問題が無いか確認する。その後、二量体化反応の最適な反応条件(濃度、温度、時間、緩衝液など)を検討する。さらに、前年合成した16merのDNAをマレイミドと結合させた後、軽鎖抗体のシステイン側鎖と反応させDNA-軽鎖抗体を合成し二量体化反応の条件を種々検討していく。
|