研究課題/領域番号 |
21K06609
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47040:薬理学関連
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
小山 豊 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (00215435)
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研究分担者 |
泉 安彦 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (60456837)
道永 昌太郎 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (60624054)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | アストログリア / エンドセリン / 脳浮腫 / ETB受容体 / 神経炎症 / 神経再生 |
研究開始時の研究の概要 |
外傷性脳損傷(TBI)は、致死的なだけでなく存命した患者に後遺症を残す重篤な病態であるが、現在、有効な薬物治療は確立されていない。本研究は、TBI時に活性化し神経系の損傷・修復に関わるアストログリアの機能を制御し、TBI改善を導くとの治療戦略のもと、エンドセリン受容体作用薬およびステロイドホルモンの有効性を検証する。本助成期間においては、TBI実験モデル動物を用い、これら薬物のTBI治療効果およびアストログリアの機能に対する作用を検討し、これら薬物の治療効果に関わる機序を明らかにする。
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研究実績の概要 |
外傷性脳損傷(TBI)に対するアストログリアのエンドセリン(ET)の役割について研究し、2022年度では以下の知見を得た。 ETB受容体拮抗薬による脳浮腫抑制メカニズムについて、細胞障害性浮腫に関わるアストログリアのNa-K-Cl共輸送体(NKCC1)の関与を検討した。ラット培養アストログリアのET-1での処置はNKCC1発現を増加させ、この作用はETB受容体拮抗薬BQ788により抑制された。マウスTBIモデルで、損傷部位周辺のNKCC1発現は増加したが、これはBQ788の脳室内投与で減少した。また、TBIモデルでの脳浮腫に対してNKCC1阻害薬であるbumetanideは、BQ788と同程度の脳浮腫抑制作用を示した。以上の結果は、アストログリアのETB受容体の刺激がNKCC1発現を増加させること、そしてTBIモデルでのBQ788の脳浮腫抑制作用にNKCC1の発現抑制が関わる事を示唆する。 TBIは脳内での神経炎症を惹起させ脳損傷を増悪することが知られている。昨年度までの検討では、マウス大脳TBIによるケモカイン(MCP-1/CCL2、MIP-2/CXCL2) 発現増加が、BQ788投与で抑制されることを明らかにした。この結果に基づき、TBIによる炎症性細胞の脳内浸潤へのBQ788の作用を検討した。マウス大脳へのTBIは、損傷部位へ浸潤する好中球(Ly6G陽性細胞)数を増加させた。このTBIによる好中球浸潤の増加はBQ788により抑制された。ET-1によるマウス培養アストログリアの処置は、MCP-1/CCL2およびMIP-2/CXCL2の発現を増加させた。BQ788は、ET-1によるアストログリアのケモカイン産生を抑制した。これらの結果は、TBI時でのETB受容体の遮断は、アストログリアのケモカイン産生を抑制し、好中球の脳内浸潤を軽減することを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は研究分担者(道永)の異動により、マウスTBIモデルを用いた研究が遅れたが、2022年度中に新たな研究室でもTBIモデル作成機器(Fluid percussion injury device;FP302; AmScien Instrument社)が調達された。そのため、研究の進捗はおおむね順調と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に得られた研究結果を基に、以下の検討を行う。 1. ET-1によるアストログリアNKCC1の発現増加機構の解明:NKCC1の遺伝子上流には転写因子HIF1aの認識配列がある。そこで、ET-1によるアストロサイトNKCC1発現増加におけるHIF1aの関与を培養細胞およびTBIモデルマウスで検討する。 2. TBIによる神経炎症惹起におけるETB受容体の関与:TBIモデルマウスでETB受容体拮抗薬が好中球の脳内浸潤を抑制したことより、この薬物が神経炎症の抑制する可能性が生じた。そこで、ETB受容体拮抗薬の神経炎症に対する作用を検討する。実験はTBIによるinflammasome構成タンパク(NLRP3, ASC, caspase-1)の増加に対するBQ788の作用を、培養細胞およびTBIモデルで明らかにする。 3. 研究分担者の道永は、TRPV4チャネルおよびヒスタミンH2受容体が抗脳浮腫薬の標的分子をなり得ることを報告している(Biol.Pharm.Bull., (2021) 44:1759-1766, J.Pharmacol.Sci.,(2022) 150:135-145.)。より効果的な脳浮腫の薬物療法を開発するため、これら薬物とETB受容体拮抗薬の併用効果をTBIモデルマウスで検討する。
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