研究課題
基盤研究(C)
近年、がんクリニカルシーケンス検査に基づき「最適な薬剤」の選択が実践されているが、遺伝子変異に適合した薬剤はほとんどが適応外となるばかりか、小児などのスペシャルポピュレーションが対象となることも多い。そのため、Pharmacokinetics(PK)/Pharmacodynamics(PD)の関連性は明らかになっておらず、「最適な用法・用量」は定まっていない。そこで今回、分子標的抗がん薬の「有効血中濃度域」をがん種や遺伝子変異毎に精査し、Modeling & Simulationにより患者背景に基づく「最適な用法・用量」を解明することで、さらなる個別化薬物療法を確立する。
がんクリニカルシーケンスと分子標的抗がん薬のPK/PDに基づく個別化医療を確立するため、LC/ESI-MS/MSと効率的なイオン量調節法(インソース衝突誘起解離、secondary product ion SRM及びisotopologue SRM)を用いて、20種の経口分子標的抗がん薬とその代謝物について、ハイスループットな一斉定量法を開発した。また、在宅において、最適なタイミングで採血し、治療薬物モニタリングを実施するため、マイクロサンプリングデバイスMicrosampling WingとLC/ESI-MS/MSを用いて血中レンバチニブ濃度定量法を開発し、従来のplasma法と同程度の定量精度を持つことを明らかにした。上記の定量法を活用して、レンバチニブを服用する肝細胞がん患者の血中レンバチニブ濃度と有害事象との関連を解析した結果、有効域を大きく超える血中濃度は破壊性甲状腺炎の発現に関与することが示唆された。また、レンバチニブを服用する患者20名(肝細胞がん6名、甲状腺がん3名、子宮体がん8名、腎細胞がん3名)の血中レンバチニブ濃度について、非線形混合効果モデルを用いて予測精度を評価した結果、肝細胞がんと腎細胞がんでは決定係数0.5以上が得られ、Modeling & Simulationは可能であると考えられた。さらに、がんクリニカルシーケンスに基づき、イマチニブを使用した1例について、血中濃度が1100 ng/mL以上となるように用量調整されたが、奏功しなかった事例を経験した。この要因として、イマチニブの組織移行性が関係している可能性があり、がんクリニカルシーケンス検査だけでなく、組織移行性を考慮した最適な薬剤選択とPK/PDに基づく最適な用法・用量が重要であると考えられた。
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