研究課題/領域番号 |
21K06710
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 俊作 京都大学, 医学研究科, 助教 (50721916)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | プロトンポンプ阻害薬 / 免疫チェックポイント阻害薬 / マクロライド系抗菌薬 / 急性腎障害 / 抗菌薬 / 腸内細菌 / 短鎖脂肪酸 / グルコース代謝 / 糖新生 / 薬剤性腎障害 |
研究開始時の研究の概要 |
保険医療において使用される医薬品は基本的に有効性及び安全性が高いことが確認されています。しかし、非常に低い頻度ではありますが、医薬品による有害反応が生ずることがあり、その要因についても研究によって明らかにする必要があります。この研究では、プロトンポンプ阻害薬(Proton Pump Inhibitor, PPI)や抗菌薬に焦点を当てて、これらの医薬品が関連した薬剤性腎障害の実態解明と、発症機序の探索を行います。具体的な目的は以下の通りです。 1. PPIと抗菌薬が腎機能へ及ぼす影響及びその機序を明らかにする。 2. 疾患動物モデルを用いて、PPIと抗菌薬が腎機能に及ぼす影響を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、プロトンポンプ阻害薬や抗菌薬に焦点を当てて、これらの医薬品が関連した薬剤性腎障害の実態解明と、発症機序の探索を行うことを目的とする。 2022年度は、プロトンポンプ阻害薬が関連する腎障害のリスク因子探索を目的に薬物間相互作用を起こす可能性があるマクロライド系抗菌薬や免疫チェックポイント阻害の影響を検討した。 プロトンポンプ阻害薬は、ヘリコバクター・ピロリ除菌のためにマクロライド系やペニシリン系などの抗菌薬と併用されることが多い。マクロライド系抗菌薬は比較的腎毒性が低いとされているが、薬物間相互作用により急性腎障害のリスクを高めることが知られている。2022年度における検討では、プロトンポンプ阻害薬使用と急性腎障害発症の関連性を検討すること、及び、プロトンポンプ阻害薬とマクロライド系抗菌薬の併用が急性腎障害のリスクに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。そこで、自己対照ケースシリーズ研究を、京都大学医学部附属病院の電子カルテデータベースを使用して実施した。2014年1月~2019年12月にPPIとマクロライド系抗生物質を少なくとも1種類ずつ処方され、年1回以上血液検査を受けた患者を対象とした。プロトンポンプ阻害薬使用またはプロトンポンプ阻害薬とマクロライド系抗菌薬の併用による急性腎障害の発症率比を条件付きポアソン回帰モデルを使って推定した。その結果、プロトンポンプ阻害薬使用とステージ1以上の急性腎障害リスク上昇の関連性が確認された。一方、プロトンポンプ阻害薬使用者におけるマクロライド系抗菌薬の併用と急性腎障害リスク上昇の関連性は検出されなかった。 また、異なる研究として、プロトンポンプ阻害薬使用者における免疫チェックポイント阻害薬の併用と急性腎障害リスク上昇の関連性を明らかにするための検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、3年間の間に具体的に以下の事項に取り組むこととした。1. 消化管に影響を及ぼす複数種類の薬物併用が腎機能、腸内細菌叢及び腸管上皮細胞間リンパ球へ及ぼす影響を明らかにする。2. 腎臓外に疾患を有する動物モデルを用いて、プロトンポンプ阻害薬や抗菌薬が腎機能に及ぼす影響を明らかにする。3.疫学研究により、抗菌薬が関連する急性腎障害の実態を明らかにする。4. 抗菌薬による腎機能の変化と腸内細菌叢の変化が相関するかどうかを明らかにする。 そこで、2022年度には主に、疫学研究を実施し、プロトンポンプ阻害薬と併用薬の組み合わせが急性腎障害発症リスクに及ぼす影響を検討した。その結果、プロトンポンプ阻害薬使用患者におけるマクロライド系抗菌薬の使用と急性腎障害発症リスクとの関連は、有意ではないことが示唆された。この結果は副次的な示唆を与えるものであると考えられた。すなわち、プロトンポンプ阻害薬の曝露量はその腎毒性発現に大きく影響しない可能性、及び、プロトンポンプ阻害薬関連腎症の発症には直接的な腎毒性ではなく間接的なメカニズムが関与している可能性が提示された。 また、免疫チェックポイント阻害薬とプロトンポンプ阻害薬の併用が急性腎障害発症リスクに及ぼす影響に注目し、新たな研究として調査を開始した。 以上より、2022年度には当初計画通りに一定の成果が得られたため、研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には、プロトンポンプ阻害薬と腎障害の関連性について観察研究を継続して行うとともに、そのリスク因子の同定を試みる。データベースは複数の医療機関における電子カルテ由来のデータベースを用いる予定である。 また、薬物による腸内細菌叢の変化がどのように宿主へ伝達されるかについて、短鎖脂肪酸や胆汁酸に加えて、数百種類の水溶性化合物の変化に着目した解析を進める。
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