研究課題/領域番号 |
21K06741
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48010:解剖学関連
|
研究機関 | つくば国際大学 |
研究代表者 |
澤田 和彦 つくば国際大学, 医療保健学部, 教授(移行) (10284324)
|
研究分担者 |
小林 哲也 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (00195794)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 脳溝 / 大脳皮質 / 脳室下帯 / 神経幹細胞 / 神経前駆細胞 / 神経新生 / Tbr2 / フェレット / basal radial glia / 免疫組織化学 / MRI / 脳回 / Toll様受容体 / 自閉症 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、大脳皮質の脳溝・脳回の形成および形態的多様性出現について、自然免疫に関与するToll様受容体(TLR)を介した神経幹細胞/神経前駆細胞の増殖・維持・分化調節から明らかにすることを目的とする。実験動物には出生後に脳溝・脳回を形成するフェレットを用いる。大脳皮質の神経発生後期にリポポリサッカリド(LPS;TLR2リガンド)を投与し、脳溝・脳回の形成についてMRI定量評価を行う。またLPSの神経幹細胞(bRG)および神経前駆細胞(basal progenitors)の増殖・維持・分化への影響と、bRG由来ニューロンの遊走を追跡し、脳溝・脳回形成への影響を組織定量的に明らかにする。
|
研究実績の概要 |
妊娠動物5例から計14例の仔を得た。このうち7例は6、7日齢(脳溝形成初期)に500 μg/g 体重のリポポリサッカリド(LPS; 4型Toll様受容体リガン卜)を1回ずつ(計2回)皮下投与した。残りの7例は対照とした。全ての動物において5日齢に新生する細胞をEdUで、7日齢に新生する細胞をBrdUで標識した。 LPS投与直後の7日齢に各群3例の仔動物を、脳溝形成が完了する20日齢に各群4例の仔動物を灌流固定した。7日齢の仔の脳は組織切片とし、切片上でEdUとBrdUの標識と、細胞増殖マーカー(PCNA, Ki67, PH3)、神経幹細胞/神経前駆細胞マーカー(Pax6, Tbr2, Olig2)、未成熟ニューロンマーカー(Cux1, Ctip2)に対する抗体を用いた免疫染色を行った。LPS投与群では大脳皮質の脳室下帯内層(iSVZ)においてBrdU標識細胞の密度が有意に高かった。BrdU標識細胞の88%以上はPax6陽性であったため、LPSによりiSVZにおいてbRG (basal radial glia;神経幹細胞)およびIPs (intermediate progenitors;神経前駆細胞)の増殖促進が示唆された。LPS投与群では対照群に比べてBrdU標識細胞のPCNA陽性率とTbr2陽性率が有意に低く、Ctip2陽性率は逆に有意に高く、LPSにより主にIPsから大脳皮質深層(V-VI層)を構成するニューロンへの分化が促されることが示唆された。 20日齢の仔の脳は固定後にMRI計測し、脳溝形成の定量評価を行った。LPS投与群では、前頭領域と頭頂領域の脳溝形成頻度(gyrification index; GI)が 対照群に比べて低く、とくに前頭溝、外側溝、シルビウス上溝吻側部などこれらの領域を横断する脳溝の尾側部の形成が甘くなっていることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、フェレット仔に1 mg/g体重のLPSを投与したが、投与容量が多かったためか、LPSを投与した仔6例中3例が脳のサンプリングの前に死亡してしまい、必要最小数の動物を揃えることができなかった。2022年度はLPSの投与容量を500 μg/g体重に減らしたところ、仔の生存率はよく、計14例の仔フェレットを得て、7例をLPS投与群、7例を対照群とした。このうち各群3例の仔の脳をLPS投与直後の7日齢に灌流固定後に取り出し、免疫組織化学的解析を行うことができた。この成果は2023年8月に開催される日本神経科学学会で一般演題として発表予定である。同時に論文投稿のための準備も進めている。 残りのフェレット仔(LPS投与群4例、対照群4例)については、脳溝形成が完了する20日齢に灌流固定後に脳を取り出し、脳のMRI計測を行った。2023年3月の時点で20日齢の全ての脳のMRI計測と脳溝形成頻度の定量を終えた。実験は20日齢の仔脳の免疫組織化学的解析を残すのみとなり、研究計画の凡そ1/3の実験を終えたこととなり、研究は順調に進んでいると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は、MRI計測後の20日齢フェレット仔の脳の組織切片の作成と、切片上でのEdUとBrdUの標識、およびニューロンマーカー(NeuN, DCX, Calbindin D28k, parvalbuminなど)、グリアマーカー(S100β, GFAP, Olig2など)、未成熟ニューロンマーカー(Cux1, Ctip2)に対する抗体を用いて免疫染色を行う。大脳皮質の主要な脳溝(前頭溝、シルビウス上溝、外側溝、シルビウス前溝、偽シルビウス溝、板状溝など)の底部、および主要な脳回(前頭溝、前S字回、後S字回、前S字外回、後S字外回、外側回、シルビウス上回、帯状回など)の冠部におけるEdU,或いはBrdUで標識された細胞のニューロン種および各グリア細胞種とその密度を計測し、新生仔期LPS曝露による大脳皮質各部位の組織構築の変化を定量評価する。
|