研究課題/領域番号 |
21K06840
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分48040:医化学関連
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
徳田 雄市 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40833661)
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研究分担者 |
田代 啓 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10263097)
中野 正和 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70381944)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 角膜 / フックス角膜内皮変性症 / 次世代シーケンサー / 遺伝的要因 / マルチオミクス / 角膜変性症 / ゲノム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
角膜は視覚器で重要な組織であるため、その変性疾患は視力低下を来たして日常生活に悪影響を及ぼす。しかし、有効な治療法が角膜移植などに限られる疾患でも発症機序の解明が進んでおらず、特に先行研究で示唆された遺伝的要因は、人種差などにより日本人患者の病因を説明できずにいる。 本研究は、日本人症例のゲノム解析による複数の角膜変性疾患関連候補ゲノム領域や、角膜内皮特異的な遺伝子発現情報など、我々が独自に取得してきた情報を精査することで、疾患関連部位の特定と、発症機序解明へのマルチオミクス研究基盤の構築を目的とする。本研究の成果は、発症の背景にある人種差及び角膜関連疾患の病態を解明する基盤になり得る。
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研究実績の概要 |
眼球表面の黒目と呼ばれる部位にある「角膜」は、外界から眼球内部の保護と光を通すレンズの役割を果たしており、健康な生活を送るために重要な視覚組織である。そのため、角膜疾患の作用機序解明と治療法確立は患者のQOL向上に大いに寄与するが、一方で不明な点が残る変性疾患も多く、中でも「フックス角膜内皮変性症(FECD)」は未だに有効な治療法が角膜移植のみである。 先行研究より、FECDには有病率や遺伝的リスク要因等の違いから人種差があると考えられ、日本人の病態解明と新規治療法確立を困難にしている。研究代表者らは、これまでにDNAアレイを用いた日本人FECD症例に関するゲノム解析により、既知の白人集団の研究結果とは異なる統計的に有意な疾患関連候補ゲノム領域を新たに複数得た。そこで本研究は、それらの結果を精査して疾患関連部位を特定し、FECD発症の背景にある遺伝学的人種差と分子生物学的機序解明へのマルチオミクス情報基盤の構築を目的とする。 本年度は、初年度に引き続き本学眼科と共同で各種症例情報の見直しと新規FECD症例の確保を進めた。また、本研究の目的である情報基盤構築の主要素の1つであり、次世代シーケンサー(NGS)により取得済の角膜内皮トランスクリプトームデータについて、研究代表者らが論文発表済の白人正常細胞由来のものに加え、新たに白人FECD患者細胞由来のデータと比較解析を行った。その結果、FECD特異的な網羅的遺伝子発現プロファイルの構築に成功し、この成果論文をプレプリントサーバー「research square」に公開した上で、現在正式な論文誌に投稿、査読中である。 一方、研究代表者らは、本研究にも利用可能な別の研究プロジェクトでの健常者ゲノムデータ取得及び解析にも従事した。これにより、当初の想定より疾患関連候補ゲノム領域解析への精度向上が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の計画の1つは、過去に実施したDNAアレイによるFECD症例に関するゲノムワイド関連解析(GWAS)の情報を検体追加等により更新した再解析を行い、その結果厳選された疾患関連候補ゲノム領域をNGSにより精査することを要点としている。このうちGWASの再解析作業に関しては、初年度は結果精度向上を優先し、使用するゲノムコホート情報の見直しを実施した事で行えなかった。一方本年度に関しては、当初予定通りGWAS再解析を進めていたが、年度内に別の研究プロジェクトにて、新たに本研究に利用可能な健常者のゲノム情報入手が可能となった。そこで研究代表者らは、さらなる解析の改善を優先すべく、この追加検体情報確保のための実験とデータ取得を進めた結果、年度内にGWAS再解析を終える事が出来ず、また、当初予定していたNGSによるデータ取得を年度内に終える事も出来なかった。加えて、年度後半に解析に使用しているサーバーの1台に不具合が生じた事も、予定を遅らせる原因となった。 その一方で、既に取得済のNGSによる角膜内皮細胞のトランスクリプトームデータの網羅的な遺伝子発現情報に関しては、FECDと健常者との比較解析に関する研究結果をまとめ、年度内に論文を投稿するに至った。これは、本研究計画の目的であるマルチオミクスには必要なもう1つの要点が順調に進んだことを意味しており、その背景には前述の理由でGWASの更新作業が遅れる可能性が生じた段階で、こちらの研究作業をある程度優先したことも要因となっている。 従って、本研究計画は精度向上のために時間を費やしている部分と、順調に成果を出しつつある部分に進捗の差が生じており、全体の進捗状況を勘案して区分を「(3)やや遅れている。(Slightly Delayed)」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終的な目的であるマルチオミクス解析に向けた研究基盤の構築について、NGSによる角膜内皮トランスクリプトームデータを用いたFECD特異的な遺伝子発現情報に関する研究は概ね達成出来た。このため、最終年度はGWAS再解析及び次世代シーケンサーによるゲノム上の疾患関連部位特定を中心に邁進する。既にGWAS再解析に必要な環境は整っているため、速やかに解析作業を進めて早期にNGSによるゲノムデータの取得を目指す。前述のトランスクリプトームデータ解析の際に、サーバー等のNGSデータ解析体制は万全に整っているため、解析にかかる時間は短縮されると予想出来る。従って、年度内に解析済角膜内皮の遺伝子発現データと、新たに取得し特定するゲノム上の疾患関連候補部位との関連性を見出し、FECDの病因解明に向けたマルチオミクス研究の土台作りは十分に可能であると考える。
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