研究課題/領域番号 |
21K06876
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49010:病態医化学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
久保 亜紀子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50455573)
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研究分担者 |
宮下 和季 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師(非常勤) (50378759)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 糖尿病 / ストレプトゾトシン / 代謝変動 / 代謝解析 / アミノ酸代謝 / 質量分析イメージング |
研究開始時の研究の概要 |
糖尿病の合併症のうち腎症の発症過程に注目し、高血糖下での代謝変容を解析することで病態解明を目指す。ストレプトゾトシン(STZ)誘導I型糖尿病性腎症発症モデル動物を用い、糖尿病性腎症の進展に伴う局所のエネルギー代謝の変化と、その結果として生じる小分子の局所分布に注目してイメージングメタボロミクス手法で可視化解析する。特にmTOR活性化をもたらす分枝鎖アミノ酸(BCAA)に注目し、BCAA代謝酵素を不活化する酵素の阻害剤、及び、アミノ酸輸送体の阻害剤投与を行い、病態下のアミノ酸代謝に介入して腎症発症の抑制を試みる。
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研究実績の概要 |
この研究では、糖尿病の合併症のうち腎症の発症過程に注目し、高血糖下での代謝変容を解析することで病態解明を目指している。ストレプトゾトシン(STZ)誘導I型糖尿病性腎症発症モデル動物を用い、糖尿病性腎症の進展に伴う局所のエネルギー代謝の変化と、その結果として生じる小分子の局所分布に注目して、初年度は、15N標識アミノ酸を投与した動物モデルをイメージングメタボロミクス手法で定量及び可視化解析し、病態モデルの筋肉において、アミノ酸代謝に大きな変動が認められた。しかし、同じモデル動物のqPCR法を用いたアミノ酸に関連する輸送体や代謝酵素の遺伝子発現解析では、代謝変動に相当するほどの差異は認められなかった。 そこで、今年度は、高タンパク餌で飼育したストレプトゾトシン(STZ)誘導I型糖尿病性腎症発症モデル動物及び、比較用正常動物を作成し、腎臓及び筋肉からRNAを抽出し、より網羅的に遺伝子発現の把握が可能なマイクロアレイ解析を行った。昨年度まで行っていたqPCR解析では、ターゲットとした酵素の情報しか得られず、代謝のつながりの全貌を把握するのが困難だったため、検索範囲を拡大する意味で解析法を変更した。 これらの実験の結果、高タンパク給餌ストレプトゾトシン(STZ)誘導I型糖尿病性腎症発症モデル動物では、正常動物と比較して、腎臓においては、インスリンの下流遺伝子の発現低下のみならず、炎症系の遺伝子の発現量が上昇しており、組織切片で炎症所見が得られる前段階においても腎ダメージに繋がる炎症が生じていることがわかった。また、筋肉ではアミノ酸代謝に関与する遺伝子の発現変化はqPCR法で出た結果と同様に軽微であり、インスリンの下流の脂肪細胞分化シグナルの減少、脂肪酸合成系遺伝子発現の減少が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究では、糖尿病の合併症のうち腎症の発症過程に注目し、高血糖下での代謝変容を解析することで病態解明を目指している。ストレプトゾトシン(STZ)誘導I型糖尿病性腎症発症モデル動物を用い、糖尿病性腎症の進展に伴う局所のエネルギー代謝の変化と、その結果として生じる小分子の局所分布に注目して初年度は、イメージングメタボロミクス手法で定量及び可視化解析した。15N標識アミノ酸の代謝解析では、病態モデルと正常動物でアミノ酸代謝に大きな差が認められたが、アミノ酸代謝関連遺伝子やアミノ酸輸送体の遺伝子発現では、15N標識体の代謝変動を説明できるような差異が認められなかった。 そこで、今年度は、高タンパク餌で飼育したストレプトゾトシン(STZ)誘導I型糖尿病性腎症発症モデル動物及び、比較用正常動物を作成し、腎臓及び筋肉からRNAを抽出し、より多様な遺伝子変異が検出できるマイクロアレイ解析を行った。昨年度まで行っていたqPCR解析では、ターゲットとした酵素の情報しか得られず、代謝のつながりの全貌を把握するのが困難だったため、検索範囲を拡大する意味で解析法を変更した。 これらの実験の結果、高タンパク給餌ストレプトゾトシン(STZ)誘導I型糖尿病性腎症発症モデル動物では、正常動物と比較して、腎臓においては、インスリンの下流遺伝子の発現低下のみならず、IL-6をはじめとする炎症系の遺伝子の発現量が上昇しており、組織切片で炎症所見が得られる前段階においても腎ダメージに繋がる炎症が生じていることがわかった。一方筋肉ではアミノ酸代謝に関与する遺伝子の発現変化は軽微であり、インスリンの下流の脂肪細胞分化シグナルの減少、脂肪酸合成系遺伝子発現の減少が認められた。また、IL-6シグナルの下流で発現量が変動する遺伝子変化が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度行った、高タンパク餌で飼育したストレプトゾトシン(STZ)誘導I型糖尿病性腎症発症モデル動物及び、比較用正常動物の腎臓、及び筋肉におけるマイクロアレイ解析の結果を詳細に検討する。 特に、筋肉において、炎症時に産生される液性因子IL-6の転写量が上がっていないにもかかわらずIL-6の下流に位置する遺伝子群の発現が顕著に変化しており、他臓器において産生されたIL-6が筋肉に供給され、結果的に代謝変化を誘導しているのではないかという仮説を導き出した。I型糖尿病では、膵臓のベータ細胞の破壊によってインスリン分泌が減少し、その下流でさまざまな合併症が生じることが知られているが、インシュリン以外の二次的な液性因子を介する他臓器の代謝変化にはあまり注目されていなかったことから文献が多くない。また、糖尿病を発端とする腎症発症や筋肉におけるサルコペニアに至る過程に関しては諸説あり、完全には解明されていない。今回行った解析から、これらの合併症の発症にかかわる因子を特定し、発症予防には何が必要なのかを検討したい。
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