研究課題/領域番号 |
21K06942
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
渡邊 幸秀 筑波大学, 医学医療系, 助教 (40618534)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | がん幹細胞 / イメージング / TMEPAI / 休眠 / TGF-betaシグナル |
研究開始時の研究の概要 |
がんは自律的かつ過剰な増殖を示すヘテロな細胞集団であり、その中には、治療抵抗性の強いがん幹細胞が存在し、がんの発生、再発、転移に関わっている。がん幹細胞の増殖動態についてはほとんど解明されていないことから、本研究では、がん幹細胞マーカーの発現を、高輝度化学発光タンパク質Nano-lanternを用いて可視化し、増殖マーカーの発現と共に観察することで、増殖の遅いがん幹細胞の増殖動態解析を行う。また、がん幹細胞を単離し、遺伝子発現解析を行い、がん幹細胞の誘導・維持に重要な遺伝子およびシグナル機構を明らかにすることで、がん幹細胞を標的とした、再発・転移を抑える新たな作用機序の抗がん剤の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
がんは自律的かつ過剰な増殖を示すヘテロな細胞集団であり、その中には、治療抵抗性の強いがん幹細胞が存在し、がんの発生、再発、転移に関わっている。しかしながら、がん幹細胞の増殖動態やその誘導、維持のメカニズムについてはほとんど解明されていないことから、本研究では、がん幹細胞の可視化を行い、経時的に観察することや、それらを単離、遺伝子発現プロファイルの解析をすることで、がん幹細胞の誘導・維持に重要な遺伝子およびシグナル機構を明らかにし、がん幹細胞を標的とした、再発・転移を抑える新たな作用機序の抗がん剤の開発を目指すことを目的としている。 がん細胞を浮遊条件下で培養すると、通常の接着培養と比較してNANOG、OCT4、SOX2等の幹細胞マーカー転写因子の発現が増加した。また、接着培養ではほぼ全ての細胞は分裂を繰り返すが、浮遊培養では増殖スピードに多様性が生じることから、浮遊培養では、がん細胞は幹細胞性を誘導することで、腫瘍性増殖を維持しているのではないかと仮説を立て、NANOG、OCT4、SOX2のプロモーター下で高輝度発光タンパク質であるNano-lanternを発現するレポーターシステムを作製している。現在、安定発現株を樹立しており、接着、浮遊培養条件下でのレポーター遺伝子の発現の増加や、浮遊培養のスフェア中のレポーター陽性細胞の分布など発光顕微鏡を用いた観察を行う予定である。 また、我々が注目し、腫瘍形成を促進することを明らかにした膜貫通タンパク質TMEPAIが浮遊培養時の幹細胞マーカー遺伝子の発現誘導に関与することを見出し、TMEPAIがAKTシグナルを増強することで、がん幹細胞誘導に関わることを明らかにしている。現在、原著論文としてその成果を公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がん幹細胞のイメージングについては、既に浮遊培養下で発現が亢進することが認められているNANOG、OCT4、SOX2の発現制御コアプロモーターを用いたレポーターシステムを構築している。今後、安定発現株を用いた観察を行うが、実際の幹細胞遺伝子発現とレポーターの発光強度の相関性については検討が必要であり、Nano-lanternの細胞内安定性やレポーターとして組み込んだプロモーター領域の妥当性を検討し、改良を重ねる予定である。さらに発光顕微鏡についても、浮遊培養時の細胞塊(スフェア)観察において、視野からの逸脱や観察深度の経時的変化など、長期観察に向け課題が残されていることから、観察条件の検討も同時に行っている。がん促進タンパク質TMEPAIとがん幹幹細胞の関連については、予定通りメカニズムの解析を行い、成果を公表する準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後もがん幹細胞の可視化に向け、NANOG、OCT4、SOX2のプロモーターを用いたレポーターの改良を行い、がん幹細胞の増殖動態を観察する。また、がん幹細胞の単離を行い、遺伝子発現プロファイリングを明らかにすることで、がん幹細胞の誘導および維持に重要な分子、細胞内シグナルの解析を行う。遺伝子発現解析の結果、がん幹細胞特異的に発現する遺伝子が同定された場合、その遺伝子の発現調節領域を用いたイメージングも開発し、より精度の高いがん幹細胞イメージングを目指す。がん幹細胞の動態解析は、長期の観察を必要とするため、励起光による光毒性のない、発光による観察を計画しており、そのための機材の調達、条件検討を行っているが、スフェアなどの深度幅の大きな対象物の観察は難しいことも予想されることから、蛍光レポーターを用いた観察も同時に検討している。 がん幹細胞のイメージング技術が確立されれば、がん幹細胞を標的とした薬剤のスクリーニングや、同定した遺伝子プロファイルからがん幹細胞の誘導・維持に重要な分子の機能を明らかにすることで、それを標的とした新たながんの治療法の確立に発展することができ、ステージの進行したがんなど難治性の高いがんにも有効な新たな治療法の開発に貢献できると考えている。 また、イメージングと並行して、腫瘍性増殖に関与するTMEPAIに着目した研究を行うことで、細胞内シグナルの変化が、どのようにがん幹細胞を誘導するのか総合的に明らかにし、上記の新たながん幹細胞を標的とした治療法の開発の基礎となる分子メカニズムを明らかにする。
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