研究課題/領域番号 |
21K06966
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
向田 直史 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (30182067)
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研究分担者 |
馬場 智久 金沢大学, がん進展制御研究所, 准教授 (00452095)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ケモカイン / 大動脈瘤 / マクロファージ / マウス / 動脈硬化 |
研究開始時の研究の概要 |
大動脈瘤の多くは動脈硬化を基盤として発生し、緩徐に進展・増大し、一定以上の大きさになると破裂し、突然死を始めとする重篤な病態を引き起こす。大動脈瘤の進展の抑制と破裂の予防のために、降圧剤・スタチンなどが投与されているが、その効果は限定的である。マクロファージ浸潤をともなう炎症反応を認められる動脈硬化が、大動脈瘤の発生から進行過程に深く関与していることから、本研究計画では、マクロファージの遊走・活性化に関与している種々のケモカインに焦点を当てて、大動脈瘤の進展過程の分子機構を解明し、大動脈瘤進展抑制の新たな治療戦略の開発の基盤形成を目指す。
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研究実績の概要 |
大動脈瘤の多くは動脈硬化を基盤として発生し、緩徐に進展・増大し、一定以上の大きさになると破裂し、突然死を始めとする重篤な病態を引き起こす。動脈硬化巣に浸潤してくるマクロファージ由来のfoam cellsが、動脈硬化巣の成立、ひいては大動脈瘤の発生から進行過程に深く関与している。本研究計画では、マクロファージの遊走・活性化に関与している種々のケモカインに焦点を当て、大動脈瘤の進展過程の分子機構を解明し、大動脈瘤進展抑制の新たな治療戦略の開発の基盤形成を目指す。 これまでのマウス大動脈瘤モデルでの我々の検討(Ishida et al. Nature Communications. 2020;11(1):5994)から、以下の点を明らかになっている。 ①マクロファージの遊走・活性化に作用することが知られているケモカインCCL3が、マクロファージの大動脈瘤病変部位への浸潤に関与していない。 ②CCL3はマクロファージによるMMP9産生を抑制し、大動脈瘤形成を抑制した。 これらの研究成果から、大動脈瘤形成過程におけるマクロファージの浸潤・活性化が、CCL3を始めとする複数のマクロファージ指向性のケモカインによって、動脈瘤発生から進行過程において、時空間的に協調的に制御されている可能性が示唆された。これらの点を解明するために、本計画ではまずCaCl2誘発大動脈瘤発症実験を、CCL3に対するレセプターであるCCR1を欠損したマウスを用いて検討した。しかし、CCR1欠損マウスは、野生型マウスと同様の大動脈瘤形成過程が認められた。本年度は、別のマクロファージ指向性ケモカインのレセプターであるCX3CR1を欠損したマウスを用いてCaCl2塗布による大動脈瘤を惹起したところ、野生型マウスに比べて有意に大動脈瘤形成(大動脈径)が減弱していることを認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々の以前の検討において、CCL3がCCR5を介して大動脈瘤形成に重要な役割を担っていることが明らかとなった.これまでの検討で、CCR1欠損マウスは野生型マウスと同程度の大動脈瘤を形成したことから、大動脈瘤形成においてCCR1は主要な役割を持っていないことが示唆された。 本年度、マクロファージ指向性ケモカインのレセプターの一つであるCX3CR1を欠損したマウスならびに野生型マウスを用いて、CaCl2塗布による大動脈瘤形成への影響を検討した。しかし、今年度は、我々の施設でのCX3CR1欠損マウスの繁殖状況が不良のため、大動脈瘤発生部位の肉眼的検討までしか行うことができなかった。その結果、CX3CR1を欠損したマウスでは、大動脈瘤形成が減弱していることを認めたことから、CX3CR1は大動脈瘤形成に促進的に働くことが示唆された。今後は、CX3CR1陽性細胞の大動脈瘤形成過程への役割について、時空間的視点から分子病理学的検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
CX3CR1欠損マウスならびに野生型マウスを用いて、CaCl2塗布による大動脈瘤形成を誘発し、時空間的視点から動脈瘤発生部位の分子病理学的検討を行う。具体的には、組織中のサイトカインおよびケモカインの発現を定量し、大動脈瘤発生過程におけるそれらの病態生理学的役割を検討する。さらに、CX3CR1陽性細胞の機能を、抗体投与やsiRNA処置により検証する。また、CaCl2誘発大動脈瘤モデルのみでは、ヒト大動脈瘤病変部位で認められる病変が完全には再現されないことから、アンギオテンシンII誘発大動脈瘤モデルについても、同様の時空間的視点から分子病理学的解析を加え、CX3CR1陽性細胞の大動脈瘤形成過程での病態生理学的役割を解明する。
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