研究課題/領域番号 |
21K06967
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
内木 宏延 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (10227704)
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研究分担者 |
植田 光晴 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (60452885)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | アミロイドーシス / β2-ミクログロブリン / プロテオーム解析 / 免疫染色 / プロテオグリカン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ヒト疾患モデルとしてβ2-ミクログロブリン(β2-m)アミロイドーシスを選び、発症の分子機構を、プロテオーム解析、独自開発した試験管内実験系、病理組織学的解析を有機的に組み合わせ解明する。具体的に、① β2-mアミロイド沈着組織のプロテオーム解析により未知のアミロイド共存蛋白質を同定すること、② それらがアミロイド線維形成に及ぼす影響を、われわれが独自に開発した試験管内実験系を駆使して明らかにすること、③ 各分子に対する抗体を用いた免疫染色により、アミロイド沈着組織における各分子の局在を明らかにすること、の3点を目的とする。
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研究実績の概要 |
①アミロイド線維形成を修飾する生体分子群の試験管実験による解析:大阪大学、新潟大学等との共同研究により、β2-ミクログロブリン(β2-m)アミロイドーシスの危険因子として、これまで知られていた血中β2-m濃度の増加、長期血液透析歴に加え、血中アルブミン濃度の低下が第3の危険因子であることを、患者・健常者血清を用いた試験管実験により明らかにし、論文発表した。アルブミンは、β2-mアミロイドを含む多くのアミロイドの共存蛋白質であり、本研究課題の主要な研究計画である「共存蛋白質の試験管内β2-mアミロイド線維形成に及ぼす影響の解析」の成果を挙げることが出来た。 ②プロテオーム解析のアミロイドーシス病型診断・病態解明への応用:全国規模で実施しているアミロイドーシス病型診断コンサルテーションの結果を集計し、トランスサイレチン型心アミロイドーシスに対する新規治療薬、新規診断薬の承認が、循環器内科医の同疾患に対する認知度を高め、診断数の著しい増加に繋がったことを世界に先駆けて実証し、論文発表した。本コンサルテーションは免疫染色とプロテオーム解析を組み合わせて実施しており、診断症例の中にはβ2-mアミロイドーシスのプロテオーム解析症例も含まれている。 京都府立医科大学、熊本大学(研究分担者の植田)との共同で、大動脈弁狭窄症により摘出された大動脈弁のアミロイド蛋白の同定を、免疫染色に加えプロテオーム解析を駆使して実施している。今年度97症例の解析を終え、論文投稿予定である。 ③β2-mアミロイドーシス症例手術標本の収集:令和4年度に6症例の収集を計画したが、その目標を達成することができなかった。令和5年度以降、その収集に努める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上に述べたとおり、本研究と密接に関連する分野(プロテオーム解析、試験管実験を駆使した、アミロイド線維形成を修飾する生体分子群の解析)では十分な成果を得ることができた。一方で本研究課題の第一段階であるβ2-mアミロイドーシス症例手術標本の収集は遅れており、全体として「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
① β2-mアミロイドーシス症例手術標本の収集:われわれは既に4症例を収集し、コンゴーレッド染色、抗β2-m染色など、基本的な解析を終えている。本研究では計10症例を収集し、以下に示すプロテオーム解析、および病理組織学的解析を実施する。 ② 手術標本のプロテオーム解析:①で収集した手術標本のブロックを熊本大学に送り、薄切、コンゴーレッド染色後、アミロイド沈着部位をレーザーマイクロダイセクション装置により切り取る。その後液体クロマトグラフィー・タンデムマススペクトロメトリーにより、β2-mを始めとする沈着蛋白質を網羅的に解析する。 ③ 共存蛋白質の試験管内β2-mアミロイド線維形成に及ぼす影響の解析:上記②でリストアップされたアミロイド共存蛋白質のβ2-mアミロイド線維形成に及ぼす影響を、われわれが独自に開発した試験管内実験系を駆使して多角的に解析する。アミロイド線維形成のキネティクスは、蛍光色素チオフラビンTを用いた分光蛍光定量法により解析する。 ④ 共存分子のアミロイド沈着組織における局在の解析:われわれは既に、4症例の手術標本を用いて、一群のプロテオグリカン(small leucine-rich proteoglycan: SLRP)に対する免疫染色を実施している。上記②でリストアップされたアミロイド共存蛋白質に対する抗体を用いて免疫染色を実施し、β2-mアミロイド内における共存蛋白質の局在を病理組織学的に解析する。 ⑤ データの統合と作業モデルの提案:上記で得られたデータを統合し、アミロイド線維形成を制御する細胞外生体分子環境の全貌を解明する。
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