研究課題/領域番号 |
21K06979
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49030:実験病理学関連
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
齋藤 光正 産業医科大学, 医学部, 教授 (00315087)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | A群β溶血性レンサ球菌 / Streptococcus pyogenes / 劇症型レンサ球菌感染症 / STSS / マウスモデル / csrS/csrR / 遺伝子変異 / GAS / 劇症型レンサ球菌感染症マウスモデル / 突然変異株 / A群溶血性レンサ球菌 |
研究開始時の研究の概要 |
劇症型レンサ球菌感染症 (以下STSS) は、主にA群溶血性レンサ球菌(以下GAS)によって引き起こされ、発症からわずか1日で多臓器不全へと進展する敗血症性ショック病態である。近年、わが国では患者が増加傾向で脅威が拡がっている。医療が進歩しても、いまだに患者の約3割は救命できていない。通常GASは、咽頭扁桃炎を引き起こす程度でそれほど病原性は高くない。それが一体なぜ劇症化するのか、発症メカニズムは十分に解明されていない。本研究では、1)STSS発症マウスから得た分離菌の全ゲノム解析と病原遺伝子発現解析、2)他のGAS株を用いた普遍性の検証、を行い、STSSの菌側の発症メカニズムの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、A群β溶血性レンサ球菌(GAS, Streptococcus pyogenes)が劇症型感染症(STSS)を引き起こすときの菌側の強毒化機構を解明することである。これまでの研究で、GASのSP2株をマウスに筋肉内接種して20日前後経過すると、二成分制御系タンパク質遺伝子であるcsrS/csrRの突然変異株が感染局所で出現し、全身に播種されてSTSS類似の病態をきたすことを見出した。本研究で明らかにしたい点は次の2点である。1)マウス体内で強毒化した変異株において発現が亢進しているのはどの病原遺伝子か。また、全ゲノム中、強毒化に寄与する遺伝子変異はcsrS/csrR以外には起きていないのか。もし、csrS/csrRに特異的に変異が入るとすれば、どういう仕組みによるのか。2)強毒化変異は、SP2株以外のGASでも普遍的に生じる現象か。 まずは2)を解明するために、SP2株ならびにそれ以外の3株を各107ずつddY マウスの前肢に筋注し、感染後8週間、マウスの状態と体重を毎日チェックした。STSS類似の症状をきたしたマウスは、セボフルレン麻酔下に心臓穿刺してヘパリン加全採血を行い、頸椎脱臼により安楽死させた。筋注部位の筋肉および臓器(肝臓、腎臓、脾臓)を無菌的に摘出し、1 mLのPBSを加えてホモジナイズした。血液、筋肉、臓器の各サンプルからレンサ球菌が分離された場合には、それぞれの菌株のDNAを抽出したのち、csrS/csrRをターゲットとしたPCRを行った。その結果、接種した4株とも20日前後経過すると、マウスの筋注部位でcsrSまたはcsrRに変異を生じた強毒株が出現し、全身に播種されて死亡することが明らかになった。したがって、強毒化変異の現象は、GASのどの株にも広く起こりうる。また変異の位置は異なる親株間でも一部は共通していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は新型コロナウイルス感染症の流行が続き、研究の時間が十分に確保できなかった。また、実験試薬や材料の発注から納品までが大幅に遅延していたことも研究進度に少なからぬ影響を与えた。2022年度に入ってからは研究はきわめて順調に進み、本研究で明らかにしたい2点のうち、「2)強毒化変異は、これまで研究に使用したSP2株以外のGASでも普遍的に生じる現象か。」については一定の成果を挙げることができた。しかし、もう1点に関しては、現在本格的な解析に入る準備段階であり、まだ完全に遅れを取り戻せていない。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は研究最終年度である。未完了の以下の3つの実験をおこなう。 1.強毒株は、csrS/csrRに変異が入ることによって、多くの病原遺伝子の発現調整を行っている二成分制御系のCovRタンパク質のリン酸化が起こらなくなり、病原遺伝子発現の抑制ができずに強発現することによって強毒化するのではないかという仮説を立てている。現在、CovRタンパク質を精製し抗体を作成中であり、この抗体とPhos-tagを用いて強毒変異株のCovRタンパク質のリン酸化レベルを解析する計画である。 2.本研究で得られた強毒変異株について、全ゲノム中、強毒化に関与する遺伝子変異はcsrS/csrR以外には起きていないのかどうかを確認するため、全ゲノム解析を行う。 3.STSS類似の症状をきたしたマウスから得られている保存臓器について病理学的解析を行い、臓器内のGASの分布とそこにおける宿主生体反応を明らかにすることにより、宿主側からGASの病原性を明らかにする。
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