研究課題/領域番号 |
21K07059
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分49060:ウイルス学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
高松 由基 長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (00750407)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | SFTSV / RNP形成 / 細胞内動態 / ウイルス粒子形成 / ライブセルイメージング / 転写・複製 / 重症熱性血小板減少症候群 / RNP / リバースジェネティクス / live-cell imaging / intra-cellular dynamics / replication |
研究開始時の研究の概要 |
ライブセルイメージング技術は病原体の細胞内複製機構を理解するために非常に有用である。本研究では本邦で重要な高病原性ウイルスであるSFTSVの複製機構を、ライブセルイメージングで解明する。SFTSVの細胞内動態はほとんどわかっておらず、移動に関わる宿主因子も不明である。病原体の細胞内動態を解明することは、侵入経路・輸送経路や介在タンパク質、出芽制御因子を介した治療法を開発するための基盤となることが期待される。 本研究では、SFTSVのライブイメージングシステムを構築し、SFTSVの細胞内動態について、宿主因子を含めて解明することで、新たな作用機序の治療薬開発に貢献することを目指す。
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研究実績の概要 |
ライブセルイメージング技術は病原体の細胞内複製機構を理解するために非常にパワフルで有用である。本研究では新興感染症の病原体として本邦で重要な高病原性ウイルスである重症熱性血小板減少症候群ウイルス:SFTSVの複製機構を、ライブセルイメージングを用いて解明する。SFTSVの細胞内動態はほとんどわかっておらず、ウイルス粒子の形成や輸送に関わる宿主因子も不明である。病原体の細胞内動態を解明することは、侵入経路・輸送経路や介在タンパク質、出芽制御因子を介した治療法を開発するための基盤となることが期待される。 研究代表者は前駆研究で、リボ核タンパク質複合体(RNP)やウイルス粒子などウイルスタンパク質複合体の細胞内での形成過程・輸送経路を描出するライブセルイメージングシステムを構築し、病原体の細胞内動態を描出することに成功した(Takamatsu, et al. PNAS. 2018, Takamatsu, et al. J. Virol. 2020)。本研究では、このシステムを応用しSFTSVの細胞内動態について宿主因子を含めて解明することを目的とする。最終的な到達目標はウイルス因子・宿主因子間の相互作用を解明し、SFTSVの形成・輸送を制御する新たな作用機序の治療薬開発に貢献することである。 本研究では、BSL-3病原体であるSFTSVについてライブセルイメージングシステムを構築し、ヌクレオカプシドおよびウイルス粒子の形成機構、細胞内動態を解明することを目指す。本研究を進めるために、電子顕微鏡、超解像顕微鏡、ライブセルイメージング顕微鏡技術に精通すると共に、得られた画像・動画を解析するための解析技術の習得を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、五つの到達目標を定めて、「SFTSVの細胞内複製機構を制御する新しい治療薬開発の基盤を構築する」ことを目指している。本年は三年のプロジェクトの二年目であった。初年度に、到達目標1 :感染細胞におけるRNPおよびウイルス粒子の細胞内動態をライブセルイメージング顕微鏡で明らかにする、および到達目標2 : RNPやウイルス粒子の細胞内輸送における分子機構を明らかにするための非感染性のライブセルイメージングシステムを構築する、を達成した。これにより、SFTSV感染細胞におけるウイルス粒子の動きを制御するタンパク質が表面抗原タンパク質GPであり、ヌクレオプロテインNPはGPと共輸送されることがわかった。一方でNSタンパク質は完全に独立して局在し、ヌクレオカプシド及びウイルス粒子の形成に関与しないことがわかった。また、ポリメラーゼLタンパク質がウイルス粒子にどのように取り込まれるのか解明するために、蛍光タンパク質融合プラスミドの構築を進めている。 GPはGnとGcに開裂しGn/Gc複合体を形成するが、GPの輸送機構については不明である。そこでGn, Gcそれぞれ蛍光標識したプラスミドを準備した。NPについては、機能的なドメインの報告は限られており、ヌクレオカプシドの形成及び他のウイルスタンパク質との相互作用に関わる領域は同定されていない。そこで、SFTSV及び近縁のウイルス群で保存されているモチーフに注目し、一連のアラニン変異体を構築した。構築した変異体の機能を解析するために、転写・複製を評価するミニゲノムアッセイ系を構築した。構築した変異体の転写・複製機能を評価し、ヌクレオカプシドの機能制御ドメインを部分的に同定することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに構築した各種蛍光融合タンパク質を用いてウイルスタンパク質間の相互作用を解明する。特にGn, Gcタンパク質とNP変異体タンパク質について、顕微鏡的(共焦点顕微鏡・ライブセルイメージング顕微鏡)・生化学的(共免疫沈降法)に評価する。そしてヌクレオカプシド及びウイルス粒子形成・輸送を制御するアミノ酸を同定する(目標4)。さらにまだ解析できていないLタンパク質を可視化するアッセイ系を構築し、各変異体タンパク質との相互作用を評価する。RNA免疫沈降を用いて、ウイルスタンパク質間の相互作用にRNAがどう関わるか解明する。 続いて、リバースジェネティクスを用いて、同定したモチーフに変異を導入した組換えウイルスを構築する。次に変異タンパク質発現細胞と野生型タンパク質発現細胞における遺伝子発現の違いをトランスクリプトームで網羅的に解析し、ウイルス粒子の形成・輸送に関与する宿主タンパク質候補を限定する(目標3)。また、変異ウイルスが構築できたら、そのウイルスと野生型ウイルスについて、複製機能やウイルス粒子形成機能、出芽機能を解析し、ウイルスのライフサイクルに与える影響を評価する(目標5)。続いて変異ウイルス及び野生型ウイルスを用いて、タンパク質発現系で同定したウイルス粒子形成・輸送を制御する宿主因子の影響を評価する。 また、変異ウイルスからRNPを精製し、野生型と比較解析することでウイルスゲノムの複製機構を解明する準備を進める。本申請期間内に完遂できるか不明であるが、RNPをウイルス粒子から精製し、その微細構造についても電子顕微鏡を用いた解析を行いたい。以上から、感染細胞におけるRNP・感染性ウイルスの侵入・形成・輸送・出芽過程の分子機構を解明し、ウイルスの複製を制御する新しい治療薬開発の基盤を構築したい。
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