研究課題/領域番号 |
21K07142
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
芳賀 永 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (00292045)
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研究分担者 |
小林 純子 (仁尾純子) 長崎大学, 高度感染症研究センター, 准教授 (70447043)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 細胞・組織 / がん細胞 / 集団浸潤 / 細胞間接着構造 / 電子顕微鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
がんは無秩序に無限増殖する細胞の集合体であり,がんが全身に広がることは患者の予後を悪化させる.がんが転移する過程で,がん細胞が周囲の間質中に移動することを浸潤という.培養細胞を用いた浸潤に関する研究の多くは,これまで単一の細胞を対象に行われてきた.しかし,実際の生体内においては,多くのがん細胞種は細胞間の接着を維持したまま集団で浸潤する.このことを集団浸潤という.しかし,その機序については不明な点が多い.そこで本研究は,がん細胞にみられる細胞間接着構造と細胞間に形成される仮足構造を観察・解析するとともに,それらの構成分子およびシグナル経路を明らかにすることで集団浸潤の普遍的機序に迫る.
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研究実績の概要 |
多くのがん細胞種は細胞間接着を維持しながら集団で間質中に浸潤する.このことを集団浸潤という.その機序については不明な点が多い.本研究は,がん細胞にみられる細胞間接着構造に着目し,それらの構成分子およびシグナル経路を明らかにすることで集団浸潤の機序に迫ることを目的とした. 研究期間内にヒト扁平上皮がん細胞株(A431細胞)から高浸潤と低浸潤のサブクローン株を樹立し,マイクロアレイ,RNA干渉法,免疫蛍光染色,阻害剤投与等の実験を行った結果,高浸潤株ではインターフェロンβ(INFB)が細胞間隙に蓄積しSTAT1が活性化することで集団浸潤が誘引されることが明らかとなった.この結果は,原著論文としてOncogenesis誌に出版するに至った.さらに,分泌タンパク質CCL5が集団浸潤を誘引することを新たに明らかにした.A431細胞においてCCL5のmRNA発現量を調べたところ,高浸潤株では低浸潤株に比べて15倍以上も発現していることが明らかとなった.さらに,高浸潤株において,RNA干渉法を用いてCCL5の発現をノックダウンしたところ,集団浸潤が有意に抑制されることが明らかとなった.加えて,CCL5のノックダウンによって,INFBとSTAT1の発現が抑制されるという興味深い結果を得た. 最終年度では,CCL5と集団浸潤との関係を明らかにすることに最も注力した.具体的には,CCL5がINFBとSTAT1の発現を制御するシグナル経路を調べた.さらに,CCL5はNF-kB経路,PI3K経路に関わることが報告されているので,これらの経路が集合浸潤に関わる可能性についても調べた.特筆すべき結果として,CCL5の受容体であるC-C motif chemokine receptor 5(CCR5)の阻害剤(Maraviroc)を投与する実験を行ったところ,集団浸潤を有意に抑制することに成功した.
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