研究課題/領域番号 |
21K07279
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
藤本 崇宏 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10446114)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | ジストロフィン / DMD / 小脳 / グリア / 水チャネル / カリウムチャネル / 神経筋疾患 / 血液脳関門 / BBB / アストロサイト / ジストログリカン / タグ挿入マウス / シナプス / 分子複合体 / てんかん / Dp71 |
研究開始時の研究の概要 |
ジストロフィノパチーは進行性の筋壊死を主徴とし、高頻度で精神遅滞・自閉症・「てんかん」などの中枢神経症状を合併する遺伝性の神経筋疾患である。今日では適切な治療による筋病態進行の緩徐化により青年期以降も生存可能になったことで、中枢神経症状の病態解明と治療法開発の必要性が高まっている。本研究では脳型ジストロフィン機能部位として血液脳関門(BBB)に着目し、BBBを構成するアストロサイト足突起における脳型ジストロフィン分子複合体の同定とその機能制御機構を解明する。これら理解に基づいて脳機能保護のための分子標的の創出に繋げる。
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研究実績の概要 |
ジストロフィン異常症で発症することが知られている知的障がい、自閉症様症状、強迫性障害、てんかんなどの中枢神経症状の主な病態首座は大脳・基底核・辺縁系・扁桃体と考えられているが、小脳機能の異常が原因でもたらされる中枢神経症状も考慮しなければならない。 2022年度はDp71特異的タグ挿入マウスを用いて、生後早期とアダルトの時期の小脳を対象にDp71発現プロファイリングを行うとともに、発現細胞におけるDp71相互作用蛋白群のプロファイリングも併せて行った。得られた成果は海外学術雑誌Molecular Neurobiologyに掲載された。以下に成果の概要を記す。 これまで世界的に内在性ジストロフィンの脳内発現を観察することを目的に、抗ジストロフィン抗体や野生型マウスとMdxマウス(Dp427欠損マウス)を併用した解析などが展開されてきたが、バーグマングリアとプルキンエ神経細胞を明確に区別しつつ、さらに全長型ジストロフィンDp427と区別するかたちで特異的にジストロフィンショート産物Dp71の発現を捉えることは困難であった。本研究においてDp71特異的タグ挿入マウスを使用して免疫組織染色で検討した結果、バーグマングリアにおけるDp71発現を検出することに成功した。プルキンエ神経細胞においてはDp427が抑制性ポストシナプスに局在することとは対照的な発現プロファイルである。小脳分子層に突起を伸ばすバーグマングリアにおいてDp71は水チャネルAQP4とカリウムチャネルKir4.1と共局在し相互作用することを明らかにした。またその複合体にはジストログリカンとジストロブレビンアルファも含まれる。いっぽうプルキンエ神経細胞の抑制性ポストシナプスにおいては、Dp427がジストロブレビンベータ、ジストログリカンと複合体を成して機能することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に海馬におけるDp71発現プロファイルを明らかにしCellular and Molecular Life Sciencesに報告、2年目に小脳におけるDp71発現プロファイルを明らかにしMolecular Neurobiologyに報告と着実に成果を挙げている。これまでの過程で試行錯誤したことにより、Dp71とその相互作用蛋白群の検出方法が確立され、Dp71特異的タグ挿入マウスを用いた今後の展開にそのノウハウが活かせる。
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今後の研究の推進方策 |
Dp71タグ挿入マウス由来のアストロサイト株を樹立したことにより、Dp71とチャネル蛋白の分子レベルの検討が可能になると期待される。同株におけるDp71複合体構成蛋白の保存状態を確認しつつ、血管内皮細胞との共培養によるin vitro血液脳関門部模倣技術の樹立に挑む。特にDp71-チャネル分子動態に迫ることでアストロサイトやバーグマングリアといったグリア細胞機能の調節機構の理解とDMD神経症状との関連を明らかにする。
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