研究課題
基盤研究(C)
孤発性パーキンソン病の神経変性開始点である腸管神経叢の先行性神経変性機序は不明である.我々はパーキンソン病発症要因の一つである環境毒ロテノン曝露による腸管神経障害は,腸管グリア細胞の機能不全によって惹起されることを明らかにしているが,そのメカニズムは不明である.本研究では,パーキンソン病発症環境毒ロテノン慢性暴露によるパーキンソン病モデル動物,腸管初代培養細胞系を用いて,腸管の免疫細胞を含む細胞環境の変化,炎症反応や酸化ストレスと腸管グリア機能不全との関係を検討し,腸管グリア機能不全ひいては腸管先行性神経変性をもたらす分子細胞イベントを明らかにする.
パーキンソン病(PD)発症環境要因のロテノン曝露による腸管先行性の神経変性の病態について検討した.低用量ロテノン4週間慢性皮下投与PDモデルマウスでは,腸管粘膜バリアの脆弱化,HMGB1の粘膜管腔側細胞質の核膜周囲に限局した特異な集積が認められ,ロテノン添加腸管神経グリア共培養系ではM1/M2マクロファージの存在とα-シヌクレインの集積が認められ,凝集α-シヌクレイン添加でM1マクロファージの増殖および神経突起の退縮がみられた.環境毒曝露による腸管粘膜でのHMGB1の異常集積によるオートファジー,粘膜バリア機能の障害,炎症免疫反応が腸管グリア機能不全,神経障害をもたらしている可能性を示した.
近年,パーキンソン病の疾患概念の変化に伴い,腸管先行性神経変性ならびに発症環境要因の存在に注目が集まりつつある.本研究では,環境要因の一つで孤発性パーキンソン病の脳腸の神経変性病態を再現できる低用量ロテノン慢性皮下投与PDモデルを用いて,環境毒曝露による腸管粘膜でのHMGB1の異常集積によるオートファジーの障害が,粘膜置換障害,粘膜バリアの破綻,炎症免疫反応といった細胞環境の変化をもたらし,これらが腸管グリア機能不全をもたらしている可能性を示すことができた.これは,腸管先行性神経変性の病態を明らかにし,それを抑制する神経保護薬開発に寄与する基礎資料となりうる.
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