研究課題/領域番号 |
21K07421
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52020:神経内科学関連
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研究機関 | 石川県立看護大学 |
研究代表者 |
岩佐 和夫 石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (10345613)
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研究分担者 |
吉川 弘明 金沢大学, 保健管理センター, 教授 (10272981)
古川 裕 金沢大学, 金沢医療センター, 脳神経内科 (50881033)
野崎 一朗 金沢大学, 附属病院, 助教 (60736495)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 重症筋無力症 / 免疫チェックポイント分子 / 補体制御因子 / 骨格筋 / 新規病態 / 免疫チェックポイント因子 / 免疫調整因子 |
研究開始時の研究の概要 |
重症筋無力症は、運動ニューロンと骨格筋との連絡の場(神経筋接合部)における骨格筋側の情報受容器(アセチルコリン受容体)に対し自ら抗体を作成し(自己免疫疾患)、易疲労性などの筋力低下をきたす神経難病の一つである。MGの治療法に関する研究は日進月歩でおこなわれているが、本研究では自らの身体に備わる自己免疫機能の調節機構がMGの病態に関与していることを証明し、その機構を利用した新たな治療法を開発することを目的としている。
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研究実績の概要 |
本研究では重症筋無力症(MG)の病態における免疫チェックポイント分子と補体制御因子の関与について明らかにすることを目的としている。 2021年度の研究では少数例のMG骨格筋において補体制御因子(CD59)の発現状況を免疫組織染色、ウェスタンブロット(WB)およびqRT-PCRにて検討した。その結果、CD59の発現が神経筋接合部に集簇していること、また、タンパクレベル、mRNAレベルでCD59の発現が亢進していることが確認できた。2022年度は、重症筋無力症16例、対象群6例において同様の解析を行った。なお、骨格筋標本を用いた免疫組織染色では、高容量かつ膨大な画像データを解析するためより高精度のパソコンが必要となり新規購入を行った。これにより解析が進み、CD59の発現はMGのみでなく対象群においても筋膜のみでなく神経筋接合部に集簇化して発現していることが明らかにされた。また、WBおよびqRT-PCRを用いて骨格筋のCD59およびアセチルコリン受容体の発現量を解析したところ、MGにおいてはアセチルコリン受容体の発現量に対するCD59の相対発現量が多いほど臨床症状が軽微に抑えられていることが明らかとなり、骨格筋におけるCD59の発現が重症筋無力症の病態に関与する可能性を示すことができた。 MGの骨格筋においては、免疫チェックポイント分子のみでなく補体制御因子の発現も病態に関与している可能性が高いことが明らかにされた。つまり、MG骨格筋においては免疫系に対する抑制作用に加え、骨格筋自体に防御機構が備わっていることが示されたことになる。これらの病態制御機構の解明は、MGの新たな病態の理解とともに新規治療法の開発につながると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、重症筋無力症および対象群の骨格筋において補体制御因子であるCD59の発現が筋細胞膜のみでなく神経筋接合部に集簇していていることを明らかにした。骨格筋におけるCD59の発現が神経筋接合部に集簇していることは、重症筋無力症の病態を理解するうえで重要なデータとなると考えられ、今後の研究の発展のためにも貴重な結果であると考えられた。また、重症筋無力症の臨床症状とCD59の発現量が有意に相関することも示すことができ、これらの結果は2023年にNeurology Neuroimmunology and Neuroinflammationに報告した。
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今後の研究の推進方策 |
MG骨格筋によるCD59発現に関する研究成果を国内学会(日本神経内科学会学術大会,2023/5/31-6/3,千葉)および国際学会(World Congress of Neurology, 2023/10/15-19, Montreal)での発表を予定している。 MG骨格筋におけるPD-L1、CD59の発現亢進が明らかとなったことから、この発現を調整しているメカニズムの解明が今後のテーマとなる。今後、骨格筋培養細胞を用いた研究で免疫チェックポイント分子および補体制御因子発現のメカニズムを解明していく予定である。 また、MG骨格筋における発現のみでなく、可溶化PD-L1が重症筋無力症の病態の予後に関与する因子であることを証明する研究も今年度中に進める予定としている。
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