研究課題/領域番号 |
21K07432
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52020:神経内科学関連
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
石川 欽也 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 教授 (30313240)
|
研究分担者 |
柳原 大 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90252725)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 脊髄小脳変性症 / RNA / RNA結合蛋白 / 動物モデル / プルキンエ細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
脊髄小脳失調症31型(SCA31)の原因である5塩基繰り返し配列UGGAAリピートを過剰発現するBAC Transgenic マウスは、通常の歩行課題では68週齢で異常を示す。今後SCA31の病態に基づく治療法を見いだすためには、このモデルマウスで脳機能異常がいつ現れ、UGGAAリピートがどのようにその病態を起こすかを明らかにする必要がある。本研究では、小脳の重要な機能である運動学習と運動制御を検証しやすいsplit beltトレッドミル法を用いて脳機能異常の早期発見を目指し、TRAP法を用いてUGGAAリピートが、どのような分子を介してプルキンエ細胞で病態を起こすかを明らかにする。
|
研究実績の概要 |
研究の目的:本研究では脊髄小脳失調症31型(SCA31)の病態を明らかにすることを最終目的として、代表研究者が開発したモデルマウスにおける異常遺伝子および異常タン パクを解明することである。 研究計画:当初予定したプルキンエ細胞特異的なmRNAをenrichするマウスとの掛け合わせは困難であったため方針を変換し、患者の遺伝子異常を有する染色体領域を完全に包含するBAC (bacterial artificial chromosome)をマウスに導入して作製したBAC transgenic mouseを用いた。このマウスは高齢になると歩行障害出現する。初年度我々は歩行などの行動異常が出現する時期における複数の個体から、sacrifice後に小脳を取り出し、RNAを抽出した。併行して同年齢の野生型で遺伝的背景が同じマウスからも同様に 小脳を取り出しRNAを抽出した。これらの2種類のRNAを150base-pairのpair-end法でRNA-seqを行い、初年度までにその結果を得た。この年齢(週齢)でマウスの個体においてはプルキンエ細胞に顕著な脱落はない。第2年度はプルキンエ細胞に特異的に発現する遺伝子に関しての遺伝子発現の変動を検索した。その結果、いくつかのRNAにおいて発現変動を認めたが、小脳機能障害との関連は明確にはならなかった。このため、小脳失調症を呈して亡くなったSCA31患者で、遺伝子発現変動を示すものを探索した。その結果、対照症例とは異なる発現変動を示し、かつ、病態への関与が示唆される遺伝子の発現変動を認める遺伝子を多数発見した。第2年度は、ヒトでの遺伝子変動と内容的に関連性のあるマウスでの遺伝子変動を探索するところまで進められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルマウスは世界で唯一のモデルマウスであり、まだ公表されていない新規性の高いモデルである。症状は激烈ではないものの、実際の臨床的な観点では病態に即しており、かつ患者のゲノム領域を導入した生理的な発現状況に近いモデルである。このため、神経症状が現れにくい短所はあるものの、それを補うように患者脳での遺伝子発現変化を検索し、いくつか発現が変動する遺伝子も見出した。このような成果から、目的に向かってはおおむね順調と考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
患者脳において発現変動する遺伝子群を明確にする。そのうえで、モデルマウスで変動している物がないかを明らかにする。もし患者脳で変動する遺伝子と、モデルマウスでのそれに共通点が見られなかった場合は、種差や病態の違いなど理由が考えられるため、患者脳で明らかになった遺伝子変動と病態機序についての究明を進める。特に、他の脊髄小脳変性症患者脳での遺伝子発現変動との比較を行い、共通するものは、小脳失調症に共通の遺伝子変動と捉えることができ、将来のバイオマーカー解明や病態抑制薬の開発に応用が期待される。一方、他の疾患では見られないSCA31脳特異的な変動遺伝子は、本疾患で特異的に変動している可能性が考えられるため、より多くの個体での検証や、タンパクレベルでの検証などを最終年度に行う。
|