研究課題
基盤研究(C)
本研究は、自己免疫性GFAPアストロサイトパチーの病態機序の解明と、治療法の確立を目指した研究である。患者の髄液中に存在する抗GFAP抗体の機能解析、サイトカインの解析、能動免疫によるモデルマウスの作成等を試みることにより、自己免疫性GFAPアストロサイトパチーの病態機序を解明する。また、患者の臨床情報を詳細に分析し、長期予後・予後関連因子の解明と治療法の確立を目指す。
本年度,自己免疫性GFAPアストロサイトパチーが疑われた449名の神経疾患患者の脳脊髄液を用い,CBAとTBAによりGFAP抗体を測定した.105名の抗体陽性患者を新たに同定し,この中の36名の臨床データを解析した.年齢の中央値は61歳で男性が81%を占めた.臨床病型は,髄膜脳炎が64%,髄膜脳脊髄炎が33%であった.腫瘍の合併率は14%であった.発症から医療機関受診までの中央値は10日で,初発症状として、全身倦怠感67%,発熱61%,食思不振56%,頭痛50%を認めた.経過中に,意識障害64%,腱反射亢進56%,排尿障害53%,髄膜刺激徴候50%,運動失調47%,認知機能障害47%,振戦42%,ミオクローヌス39%を認めた.SIADHによると思われる低ナトリウム血症を56%に認めた.脳脊髄液検査では,97%の患者で単核球主体の細胞数の増加と蛋白量の上昇を認め,中央値が54cells/μLと132mg/dLであった.同時血糖測定を行った29名中21名(72%)の脳脊髄液で糖値が血糖の1/2未満に低下した.オリゴクローナルバンド陽性率は67%であった.その他の抗神経抗体としてNMDAR抗体,MOG抗体,Caspr2抗体合併例をそれぞれ1名ずつ認めた.頭部MRI検査では,72%の患者で異常所見を認め,側脳室周囲に放射状に拡がる線状造影病変を42%の患者で確認した.脊髄MRI検査では,施行した患者の中の32%に髄内異常信号を認め,この中の70%が連続する長大な脊髄病変であった.94%の患者で免疫療法が施行された.ステロイドパルス89%,IVIg19%,血液浄化療法17%に施行された.後療法として83%の患者で経口ステロイド薬を使用した.14%の患者に人工呼吸器を必要とした.入院時mRSの中央値は4であったが,最終観察時1であった.入院日数の中央値は49日で再発率は11%であった.
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