研究課題/領域番号 |
21K07659
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
謝 琳 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 主任研究員 (30623558)
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研究分担者 |
胡 寛 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 研究員 (00827678)
藤永 雅之 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 主任研究員 (70623726)
破入 正行 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 主任研究員 (80435552)
張 明栄 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 部長 (80443076)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 代謝型グルタミン酸受容体1型 / Radio-theranostics / PET診断薬 / α線治療薬 / mGluR1 / PET診断 / TRT治療 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、癌蛋白質“mGluR1”を標的に、がん種横断的なRadio-theranosticsシステムを確立することを目的とする。診断においてmGluR1を標的とする18F-FITM PET診断法を確立し、治療に適する症例を選別する。治療においては、PETで選定したがん症例に対して、211At-AITMによる治療を行う。また、担癌モデルに対して211At-AITM治療量での体内放射能動態実験を実施し、18F-FITMと211At-AITMの体内動態の類似性を評価し、Radio-theranosticsシステムの構築と最適化により、臨床実用化への展開を目指す。
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研究実績の概要 |
申請者らは、多くのがんに異常発現する癌蛋白質“代謝型グルタミン酸受容体1型(mGluR1)を標的に、同一低分子化合物の骨格を持つ異なる核種で標識した放射性薬剤18F-FITMと211At-AITMを開発した。今回の研究では、PET診断薬18F-FITMをα線治療薬211At-AITMとセットにし、メラノーマ、乳がん、大腸がん等を対象とするがん種横断的なα線Radio-theranosticsシステムを確立することを目的とする。 今年度は、mGluR1発現の有無を持つがん細胞を移植した担がんモデルに対して、211At-AITMによる標的アイソトープ治療(TRT)の抗腫瘍効果と安全性を評価した。また、211At-AITM治療前後のがん組織の変化は、免疫組織およびqRT-PCRを用いて調べた。その結果、mGluR1陽性が確認されたがんに対して、211At-AITMによる静脈内単回投与では、乳がん、膵がん、メラノーマ、大腸がんの4つの固形がんに渡って、持続的な抗腫瘍効果を示した。特に、mGluR1陽性の乳がんと膵がんが、約50%の個体において完全に消失した。一方、mGluR1陰性がんに対して有意な治療効果を示さなかった。なお、懸念される体重減少、肝機能と腎機能の低下の副作用は観察されなかった。治療後のがん組織を調べた結果、mGluR1の発現低下や細胞老化を示すSA-β-galの増加、がん細胞の増殖、転移に関わるVEGFAとMETの発現の低下がみられた。従って、211At-AITM TRTの顕著で持続的な抗腫瘍効果は、α線によるDNA損傷作用に加えて、がん遺伝子抑制と細胞の老化促進に伴う増殖抑制作用が掛け合わさって発揮されることが示唆された。以上の結果から、211At-AITM TRTは、幅広いがん種に対してmGluR1の発現解析に基づく強力かつ安全な個別化治療法として期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で開発された211At-AITMを用いた標的アイソトープ治療は、mGluR1が高発現する全てのがん種に対して持続的な抗腫瘍効果を発揮することが明らかになった。さらに、治療法が限られ予後が悪いとされるトリプルネガティブ乳がんや難治性の膵臓がんでも効果を実証できた。これらの研究成果をまとめた論文は、一流誌Cell Reports Medicineに2023年3月31日にオンライン掲載され、表紙にも選ばれたほか、4月3日にはプレスリリース(α線標的アイソトープ治療薬の新たな抗がん作用を発見‐細胞老化とがん遺伝子抑制の相乗作用で、乳がん、膵がんに顕著で持続的な効果を発揮-https://www.qst.go.jp/site/press/20230403. html)も行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果を踏まえ、次年度からはヒトへの応用に向けて、薬剤の構造をさらに最適化することで体内動態の改善と安全性の検討を進め、治療の最適化を図る予定である。また、18F-FITM によるPET診断法の検討も行う予定である。
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