研究課題
基盤研究(C)
胎児死亡の原因となりえる胎児のQT延長症候群(LQTS)の早期診断法を確立することが本研究の目的である。非侵襲的な検査である胎児心臓超音波検査、母体採血により胎児LQTSが診断できるかを検討する。胎児心磁図でのQT間隔と心臓超音波検査所見の関係を明らかにし、母体血中のCell free fetal DNAを用いた遺伝子診断の可能性を明らかにする。新規診断法により遺伝子型確定も含めて胎児LQTSを診断することで、有効な胎児治療の選択が可能となり、胎児LQTSの予後改善に貢献できる。
2022年度は、QT延長症候群(LQTS)の早期新生児期の心電学的特徴を明らかにするための研究を行った。対象は2018年4月~2023年3月の期間に当センターで母体LQTSから出生した新生児23例。母体LQT1は8例、LQT2は5例、LQT3は1例、遺伝子型不明は9例であった。日齢0から日齢6まで連日12誘導心電図を記録した。安定したRR間隔の部位の波形を抽出し、接線法を用いたマニュアル計測でT波の終末を同定した。新生児の遺伝子型、心拍数、QT間隔、それらの経時的変化を検討した。対象のうち10例で後に遺伝子検査を施行し、7例で母体と同一の変異が同定され(LQT1は5例、LQT2は1例、LQT3は1例)、3例が正常新生児と診断された。13例は現時点では遺伝子検査を施行していない。房室ブロックを呈した症例はなく、全例で洞調律だった。生後、日齢3にかけて心拍数は低下し、それ以降に増加傾向を示した。QTcは21例/23例(91.3%)で日齢0または日齢1で最大値をとり、QTcが480ms以上となったのは、Bazett補正で10例、Fridericia補正で4例であった。以後はQT間隔は短縮傾向があり、いずれの症例も日齢6の時点では480ms未満となった。今回の検討では正常新生児と診断されたのは3例のみで、遺伝子変異が特定された群との比較では明らかな有意差はなかった。正常新生児の心電図変化を検討した北欧からの文献的データ(Europace. 2021:23:278)と比較すると、我々の症例での心拍数、QT間隔の日齢による変化は、正常新生児と同様の傾向を呈していた。心拍数は、正常新生児とほぼ同様の値であったが、QT間隔は我々の群で明らかに大きい傾向があった。生理的に日齢0、1はQT間隔は長くなる傾向があり、その時点でLQTSの症例もQT延長が顕在化しやすいが、その後にQT延長は目立たなくなる。多数の正常例との比較検討が必要だが、病的なLQTSの検出には、日齢0~1日の心電図によるスクリーニングが有効である可能性がある。
4: 遅れている
予備的な検討として、QT延長症候群が疑われる胎児に対して行われた心エコー検査の内容を見直したが、算出される各パラメータが使用するエコー機種によって異なり、また想定していた以上に検者間の格差が大きいため、検査方法を再検討する必要があった。
植込み型除細動器を植込みされている母体については心磁図検査を施行できず、胎児の電気的活動と、胎児心エコーで捉えられる機械的な活動の関連が検討できていない。重症な経過が想定される胎児の母体ほど、植込み型除細動器が導入されていることが多い。現在、胎児心磁図以外にも、胎児心電図の機器も臨床利用ができるようになっている。胎児心電図も併用しながら、胎児のQT間隔を測定できれば、より多くの症例で検討できる可能性がある。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件)
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