研究課題/領域番号 |
21K07883
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
石王 応知 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (50869211)
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研究分担者 |
野津 司 旭川医科大学, 医学部, 教授 (30312367)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 腸管バリア機能 / グレリン / オレキシン / アデノシン / 過敏性腸症候群 / 中枢神経系 / 腸管バリア |
研究開始時の研究の概要 |
腸管バリアの破綻(Leaky gut)は腸管疾患だけでなく腸管外疾患にも関連し、Leaky gut syndrome(LGS)として注目されている。近年、本研究室は世界で初めて中枢神経系が腸管バリア制御に関与することを報告した。更にこの研究を発展させ、我々は脳内Ghrelinが迷走神経を介してLeaky gutを改善させることを報告した。この神経を介する迅速な腸管バリア調節は、急激なストレスで症状が増悪する過敏性腸症候群などのLGSの病態を考える上で意義深い。そこで本研究は、脳内Ghrelinによる中枢神経系の腸管バリア調節機序を解明し、それを新規LGS治療開発につなげることを目的とする。
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研究実績の概要 |
我々はオレキシン、グレリンが中枢神経系に作用し、腸管バリア機能破綻(Leaky gut: LG)を改善することを明らかにしたが、中枢性のLG改善機序はまだまだ未解明な部分が多い。本研究は、この中枢性の腸管バリア機能制御機序の詳細を明らかにすることを目的に、グレリン中枢投与によるLG改善機序の詳細を薬理学的手法などにより検討した。グレリン中枢投与によるLG改善作用はオピオイド、ドパミン、カンナビノイド受容体拮抗薬投与で消失しなかったが、アデノシン受容体拮抗薬投与で消失し、グレリンは脳内アデノシンシグナルを利用しLG改善作用を発揮することを明らかにした。また、アデノシンA1ではなくアデノシンA2B作動薬中枢投与でLG改善作用が示され、脳内アデノシンA2Bシグナルの活性化が腸管バリア機能制御に関与することを見出した。このアデノシンA2B活性化によるLG改善作用は外科的迷走神経切断術で消失し、アデノシンA2Bシグナルによる腸管バリア機能制御機序に迷走神経系が関与すること、さらにアデノシンA2B選択的受容体拮抗薬投与がオレキシンではなくグレリンによるLG改善作用を特異的にブロックしたことから、アデノシンA2Bはグレリンの下流で腸管バリア機能制御に関与することを、それぞれ明らかにした。今回、グレリンの中枢性の腸管バリア制御メカニズムの解析により、アデノシンA2Bシグナルも腸管バリア制御に関与することを明らかにした。アデノシンA2B受容体は脳全体に分布し、炎症や低酸素などで発現が誘導され、その活性化には高濃度のアデノシンを必要とする。アデノシンは自然免疫を起動するダメージ関連分子パターン(DAMPS)という側面もあり、中枢神経系のアデノシンA2Bシグナル活性化による腸管バリア制御は、過剰な炎症反応を予め抑制する点で意義深い。以上の成果は、英文原著論文に報告済みである(Ishioh et al., Experimental Neurology 2021).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で記載した通り、概ね順調に結果はでており、昨年度は英文原著論文(Ishioh et al., Experimental Neurology 2021)で成果を発表済である。今年度は科研に申請した研究の副次的な成果として、コリン作動性ニューロンを主体とし認知機能の調節に関与するBasal forebrain cholinergic neuronが腸管バリア機能に関与することも見出した(Ishioh et al., Biochem Pharmacol. 2022)。また複数の学会でも、それらの成果を報告した。
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今後の研究の推進方策 |
現在の研究をさらに進め、中枢性の腸管バリア機能制御機序の詳細の解明を目指す。
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