研究課題/領域番号 |
21K07903
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
塩谷 昭子 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80275354)
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研究分担者 |
内藤 裕二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00305575)
井上 亮 摂南大学, 農学部, 教授 (70443926)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 酪酸産生菌 / 粘膜関連細菌叢 / 過敏性腸症候群 / 腸管粘膜細菌叢 / 粘膜細菌叢 / GLP-1 / 短鎖脂肪酸 |
研究開始時の研究の概要 |
IBSの病態に腸内細菌により産生される酪酸やプロピオン酸などの短鎖脂肪酸や胆汁酸に加え、これらの受容体を有するL細胞から産生される消化管ホルモンGLP-1が、腸管の運動異常や知覚過敏に関与していることが報告されている。しかし糞便中の短鎖脂肪酸やGLP-1のIBS治療への臨床応用に関する研究はない。MAMおよびその代謝産物やGLP-1に着目し、IBS-CとIBS-Dの共通点と相違点について検討することにより、腹痛・便秘・下痢の各症候の病態を解明し、IBSの新規治療に臨床応用できると考えた。さらに、動物実験によりヒト糞便中の有機酸の効果を確認し、新規治療の臨床応用へと展開させる。
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研究実績の概要 |
過敏性腸疾患(irritable bowel syndrome:IBS) の病態に、腸管免疫を介して腸内細菌が関与していることが報告されている。腸管上皮の粘膜に付着している細菌叢、粘膜関連細菌叢(Mucosa-associated Microbiota:MAM)を解析し、下痢型IBS(IBS-D)、便秘型IBS(IBS-C)および健常者の3群で比較検討した結果を以前に報告したが、さらに、症例数を追加し同様に3群で比較した。大腸内視鏡検査の際に、ポリエチレングリコールを用いた前処置後に内視鏡下にブラシを用いて回腸、S状結腸粘膜の粘液を採取した。各サンプルからDNAを回収し、MiSeqによる16Sリボゾーム遺伝子のV3-V4アンプリコンシークエンス解析を実施した。QIIMEを用いて微生物の属レベルまでの同定を行い、細菌構成比、多様性について検討した。対象は当院を受診した下痢型IBS(IBS-D)30例、便秘型IBS(IBS-C)33例および健常コントロール23例。α-diversityは3群で有意な差を認めなかった。PCoA解析において, Weighted、Unweightedともに3群間で有意差を認めなかった。菌叢解析では属レベルで健常者と比較して、IBS-DおよびIBS-Cに共通してSigmoidでDoreaが有意に多く、回腸末端で butyricicoccus, Lachnospira が有意に少なかった。IBS-Dにおいて回腸末端およびS状結腸においてMegamonasが多く、回腸末端でRuminococcusが少なかった。IBS-Cにおいて回腸末端およびS状結腸にRoseburiaが少なく、Clostridium 4が有意に多かった。回腸末端においてParabateroidesおよび Akkermansia が有意に多かった。対照群と比較してIBS-DとIBS-Cの両群に共通してDorea が多く、酪酸産生菌が有意に少なかった。糞便中の有機酸解析で酪酸との関連性は認められなかったが、現在、症例を追加してさらに解析を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床研究は概ね進んでいるが、動物実験で母子分離(maternal separation: MS)IBSモデルを作成し、研究をすすめたが、急性ストレスに対しての反応に関する性差は認められたが、十分な便性状の変化が認められなかった。IBSマウスモデルの作成方法を変更し、便性状の変化を伴うIBS動物モデルに対して再検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで母子分離(maternal separation: MS)マウスで検討をしたがIBSモデル動物としては問題があり、今後は慢性社会的敗北ストレス(chronic social defeat stress: cSDS)を使用する。(1)cSDS:体格の大きいCD-1マウス(攻撃性マウス)ケージにC57BL/6Jマウス(IBSモデルマウス)(1匹対1匹)を入れる。毎日10分、連続10日間ストレス負荷を行う。便の状態を判別、体重、体温、心電図、血流量、不安程度(オープンフィールド試験、強制水泳試験、尾懸垂試験、ビー玉埋めテスト等)を測定する。IBSの発生は便の状態と水分量等(ブリストルスケール及び代謝ケージ等)を判別、体重、体温、心電図、血流量、不安程度(オープンフィールド試験、強制水泳試験、尾懸垂試験、ビー玉埋めテスト等)の違いとして判断する。腸内細菌は二次世代、便中短鎖脂肪酸は液体クロマトグラフィー(LC-MS)を分析する。ラット、マウスとヒトの正常及びIBS糞便移植は糞便溶解液(6個糞便ペレットを1mLの滅菌生理食塩水に再懸濁し、10秒ボールテックスし、800g 3分遠心後の上清を経口ゾンデ投与を行う。加えて、脳腸相関を検討するため、各群ラット、マウスの腸、脳視床下部、下垂体、海馬及び副腎を採取し,副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)、副腎皮質刺激ホルモ(ACTH)、コルチコステロン、オキシトシン、グルココルチコイド受容体(GR)等のmRNA発現量を比較する。併せて、血中のセロトニン、コルチコステロン、ACTH等の濃度も測定する。
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