研究課題/領域番号 |
21K08196
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
杉野 弘和 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (50802667)
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研究分担者 |
津田 真寿美 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (30431307)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 悪性中皮腫 / ハイドロゲル / 幹細胞 / がん幹細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
悪性中皮腫は中皮細胞の悪性腫瘍で現在も増加傾向であり、予後不良である。治療の問題点である再発、転移には、がん幹細胞が関与しているとされるが、腫瘍中に僅かしか存在せず、悪性中皮腫においては同定に至っていない。 申請者らは北大で開発されたハイドロゲルを用いて、脳腫瘍のがん幹細胞を誘導することに成功した(Nat. Biomed. Eng, 2021)。ハイドロゲル上に癌細胞を培養すると球体形成が起こり、幹細胞性マーカー遺伝子発現が増加する。本研究では、ハイドロゲルによるがん幹細胞性誘導法を用いて、悪性中皮腫のがん幹細胞マーカーを同定して治療標的とすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
初年度(令和3年度)では、DN(dobule network) gel を用いる幹細胞性誘導により、悪性中皮腫の幹細胞マーカーの候補となる3遺伝子を同定した。2年目となる令和4年度では、候補遺伝子の機能解析を進めた。また、北大医学研究院腫瘍病理学教室において、DN gel以外のハイドロゲルであるPCDME (poly(N-carboxmethyl-N, N-dimethyl-2-methacryloyloxy ethanaminium))、PNaSS (poly(sodium p-styrene sulfonate))による幹細胞性誘導の有用性を示す結果が出ていることを受け、本研究でもPCDMEとPNaSSを検討することにした(これらのハイドロゲルの使用の可能性は当初より予定していた)。 候補遺伝子の解析に関して、蛋白発現をウエスタンブロット法を用いて検討したが、対照として用いたHepG2細胞よりも蛋白質発現が少なく、またハイドロゲルによる発現増加は明らかではなかった。定常状態では発現が少ない蛋白質である可能性があるため、こられの蛋白質の過剰発現株を作成して機能解析を進める方針とした。腫瘍増殖能を検討する目的で、通常培養またはハイドロゲル上で培養した細胞をマウスの皮下に移植したが、有意な差が見られなかった。培養条件や移植方法を引き続き検討する。 PCDME、PNaSSの検討に関しては、悪性中皮腫の細胞株(Meso-4)をハイドロゲル上で培養すると、集塊を形成せずに細胞がハイドロゲルに接着した状態で増殖した。SOX2、NANOG、OCT3/4のmRNAをqPCR法で調べると、これらの発現増加が確認できた。また幹細胞マーカーの候補遺伝子として同定した3遺伝子の発現増加も確認した。PCDME, PNaSSも悪性中皮腫の癌幹細胞誘導に有用である可能性があり、引き続き検討を続ける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目となる令和4年度では、当初の計画通りに幹細胞マーカーの候補遺伝子の機能解析に取り組んだ。一方で、DN gel以外にも幹細胞性誘導に有用なハイドロゲル(PCDME, PNaSS)が利用可能となり、PCDMEやPNaSSも利用して実験を行なっているため、実験条件が増え、当初の計画よりも進捗はやや遅れている。DN gelのみで研究を進めることも可能であるが、PCDMEやPNaSSといった新規のハイドロゲルを併用するほうが、より魅力的な研究成果が期待でき、社会貢献につながると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、PCDME、PNaSSも利用して、候補遺伝子の機能解析を進める。具体的には、候補遺伝子の過剰発現株を作成して、幹細胞性に与える影響を分子生物学的に検討する。過剰発現株はすでに作製中であり、候補遺伝子の蛋白質の阻害剤などの準備も行なっている。また、マイクロアレイ解析の結果から、代謝に関連する遺伝子発現の増加が見られることから、代謝解析も行う予定である。また、研究成果の学会発表や論文化を進める。
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