研究課題/領域番号 |
21K08215
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分53030:呼吸器内科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
風間 智彦 日本大学, 医学部, 助教 (80525668)
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研究分担者 |
水村 賢司 日本大学, 医学部, 兼任講師 (20761688)
松本 太郎 日本大学, 医学部, 教授 (50366580)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 脱分化脂肪細胞 / DFAT / 特発性肺線維症 / 成熟脂肪細胞 / 間葉系幹細胞 / 脂肪組織由来幹細胞 / マクロファージ / 脱分化 |
研究開始時の研究の概要 |
特発性肺線維症(IPF)は難治性かつ治療法が乏しい疾患である。我々は、成熟脂肪細胞を脱分化培養することで得られる脱分化脂肪細胞(DFAT)が、IPFに対する有効性を示した間葉系幹細胞(MSC)と同様に抗炎症効果や免疫制御作用を有することを明らかにした。DFATは約1gの脂肪組織から患者年齢や基礎疾患に影響されず均質なMSC様細胞を大量調製可能であり、IPFに対する自家細胞治療薬として期待できる。本研究では肺線維症モデルマウスに対するDFAT静脈内投与による治療効果を検討する。本研究成果は、治療法が乏しいIPFに対する新たな治療法の開発につながることが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では、難治性かつ治療法が乏しい特発性肺線維症(IPF)に対する脱分化脂肪細胞(DFAT)の治療効果を明らかにする目的で、肺線維症モデルマウスに対するDFAT静脈内投与による治療効果を検討するとともに、単球/マクロファージの可塑性に対するヒトDFATの影響を明らかにする。本年度において、C57BL/6マウスに対してブレオマイシン(BLM)を経気道投与して作製した肺線維症モデルに対するC57BL/6マウス由来DFAT(マウスDFAT)の至適投与細胞数ならびに投与間隔について検討した。検討した投与方法のうち、肺線維症モデル作製7日後に3×10の5乗個のマウスDFATを投与する方法を用いることで、細胞投与数日で死亡する個体を出すことなく、肺線維化の抑制効果を示すことができた。上記方法で細胞投与してから3週間後におけるマウス肺組織のHE染色結果ならびにヒドロキシプロリンアッセイによるコラーゲン定量化の結果より、陰性対照群である生理食塩水群と比較してマウスDFAT移植群において線維化領域の減少ならびにコラーゲン産生量が減少傾向にあり、肺線維化が抑制傾向にあることを明らかにした。さらに、肺線維化に係わる免疫細胞に対するDFATの作用を明らかにする目的で、様々な分化段階のマクロファージへ分化誘導したヒト単球由来細胞株(THP-1)とヒトDFATとの非接触型共培養を行なった。その結果、ヒトDFATとの共培養によりTHP-1由来M0マクロファージにおける炎症性サイトカインIL-1βならびにTNF-αのmRNA発現量が有意に低下した。また、ヒトDFATとの共培養によりTHP-1由来M2マクロファージにおける抗炎症性サイトカインIL-10のmRNA発現量が有意に上昇した。これらの結果より、DFATは肺線維化に係わる免疫細胞の抗炎症作用を増強させる効果を有すると推察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度において、令和3年度で明らかにしたDFATの肺線維化抑制効果を明確にする目的で、C57BL/6マウス肺線維症モデルに対するDFATの至適投与細胞数ならびに投与間隔について検討し、C57BL/6マウス肺線維症モデルに対するヒトDFAT移植による治療効果の検討条件を確認する予定であった。今年度において検討したC57BL/6マウス肺線維症モデルに対するDFATの至適投与条件で処置したマウス肺組織において、線維化領域の減少やコラーゲン産生量の減少傾向が示されたことで、C57BL/6マウス肺線維症モデルに対するヒトDFAT移植による治療効果の検討条件を明らかにし、当初の予定通り実験計画を遂行することができた。さらに、令和4年度に実施予定であったDFATの肺線維化抑制メカニズムを明らかにする目的で、様々な分化段階のマクロファージへ分化誘導したTHP-1とヒトDFATとの非接触型共培養を行ない、肺線維化に係わる免疫細胞に対するDFATの作用を明らかにする予定であった。当初の予定通り実験計画を遂行することができ、ヒトDFATとの共培養によりTHP-1由来M0マクロファージにおける炎症性サイトカインIL-1βならびにTNF-αのmRNA発現量が有意に低下することや、ヒトDFATとの共培養によりTHP-1由来M2マクロファージにおける抗炎症性サイトカインIL-10のmRNA発現量が有意に上昇することを明らかにした。これらの結果より、DFATは肺線維化に係わる免疫細胞の抗炎症作用を増強させる効果を有する推察ができたことから、現在の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度においては、C57BL/6マウス肺線維症モデルに対するヒトDFAT移植による治療効果の検討条件を明確にすることができたことから、C57BL/6マウス肺線維症モデルに対する臨床グレードにて調製されたヒトDFATの移植効果を検討する。細胞投与後、肺組織を摘出し、組織切片作成後にHE染色を行ない、Ashcroftスコアを用いて線維化所見を定量化する。同様に、細胞投与後の肺組織にてヒドロキシプロリンアッセイによりコラーゲン量を定量化する。そして、摘出した肺組織よりmRNAとタンパク質を抽出し、炎症性サイトカイン(IL-1、IL-10、IL-2、IL-6、TNF-α、MIF)ならびに線維性サイトカイン(TGF-β、INF-γ)の発現量をリアルタイムPCRにて解析し、ELISA法にてTGF-βの発現解析を行い、TGF-β活性化の指標となるsmadのリン酸化をウェスタンブロット法により評価する。また、ヒト単球由来細胞株 THP-1を、①PMA刺激によりマクロファージ様細胞へ分化誘導、②LPSとINF-γ刺激によりM1マクロファージへ分化誘導、③IL-4刺激によりM2マクロファージへ分化誘導したものを、それぞれヒトDFATとトランスウェルを用いた非接触型共培養を行なう。共培養後、①~③における炎症性サイトカイン(IL-6、IL-12、TNFα)やM2マクロファージで高発現するDC-SIGN、TGM2、IL-10、TGF-β1をELISA法にて解析する。
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