研究課題
基盤研究(C)
炎症性腎疾患の急性期・活動期に暴走する骨髄系細胞,特に好中球が果たす病態への寄与及び治療可能性を探求する.細胞内において免疫機能に影響を与えるRNA及びセンサー蛋白に注目し,その過剰応答が生体特に腎臓に与える悪影響を解析する.一連の目標達成には好中球内で活性化されうるRNA結合タンパク分子・シグナル経路の同定,並びそれらの阻害剤の薬理効果が検証可能なヒト疾患と共通性のある動物モデルの利用が有用である.標的分子の阻害化合物をマウス腎炎モデルに投与してその薬理効果を評価する.また,ヒト血管炎を実験動物で再現するのに必要な実験動物の成体条件を探る.
以前から注目してきた好中球における細胞内 RNA 結合蛋白であるプロテインキナーゼ R について,炎症誘導性の血管内皮接着や白血球遊走因子反応性の血管外浸潤に必要であることを明らかにできたことから,当該年度はさらに別の核酸結合蛋白,特に自然免疫 cGAS/STING 系や細胞内核酸検知経路として近年注目されるキナーゼの解析を集中的に進めた.外来微生物や自己組織に対して好中球がもつ攻撃的な細胞生物学特性,すなわち,呼吸性バーストや脱顆粒,細胞外 DNA トラップ,血管内皮接着,血管外遊走の各作用に与える影響を検討した.また,好中球に対する刺激としてはより無菌的な自己免疫疾患,特に糸球体腎炎の特徴的な病理所見の一つでありかつ病態惹起作用をもつ免疫複合体を実験系で再現するために,IgG 刺激を一貫して採用するようにした.一連の実験の結果,我々が関心をもつキナーゼは IgG 刺激によって活性化されること,主に Rho ファミリー低分子量Gタンパク質をはじめとする細胞骨格関連タンパクを下流シグナルに従えていること,そして呼吸性バーストや脱顆粒などの細胞活性化をまねくことが明らかとなった.また,これまで知られていない連動してリン酸化されるようなキナーゼも複数同定できた.また,それらの阻害剤はマウス実験学的腎炎モデルでは,腎糸球体における IgG 沈着に影響を及ぼすことなく急性期アルブミン尿を減少させられることも判明した.
2: おおむね順調に進展している
好中球は細菌や真菌の感染から自己を守るが,その過剰な活性化は自己組織損傷を招きかねず,血管炎や糸球体腎炎などの活動期・急性期の中心的な病態と考察されている.我々が以前から注目してきた核酸結合蛋白であるプロテインキナーゼ R (PKR) については好中球において,内皮細胞上での好中球ローリングには影響しないが内皮細胞への好中球接着や白血球遊走因子に反応した好中球遊走で必要であることを明らかにした.さらに,近年自然免疫 cGAS/STING 系や細胞内核酸検知経路として注目される別のキナーゼたんぱく質についても,好中球がそもそももつ細胞生物学的な特性,すなわち,呼吸性バーストや脱顆粒,細胞外 DNA トラップ,血管内皮接着,血管外遊走の各作用に与える影響を検討した.これまでの解析から Rho ファミリー低分子量Gタンパク質をはじめとする細胞骨格関連タンパクを下流シグナルに従えていることが明らかとなった.また,マウス実験学的腎炎モデルの腎糸球体における急性期アルブミン尿を,薬理学的な阻害によって減少させられることも判明した.
引き続き,炎症性腎疾患における好中球核酸結合蛋白シグナルを詳らかにする.また,継続して,ヒト血管炎を実験動物で再現するのに必要な実験条件を探り,本年度はさらなる学会発表を行い,論文発表を目指す.
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件) 図書 (9件)
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