研究課題/領域番号 |
21K08526
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 都 名古屋大学, 環境医学研究所, 講師 (60622793)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | マクロファージ / 慢性炎症 / 微小環境 / 炎症 / 脂肪細胞 / コレステロール |
研究開始時の研究の概要 |
マクロファージを中心とする免疫細胞が肥満の脂肪組織に浸潤することが報告され,メタボリックシンドロームにおける慢性炎症の分子機序が明らかになってきた。肥満の脂肪組織では,代謝ストレスによって細胞死に陥った脂肪細胞を核としてマクロファージが集積し,貪食・処理するユニークな微小環境(CLS: crown-like structure)が形成される。本研究では,CLSにおける微小代謝環境に着目し,どのようにして脂肪細胞にコレステロール結晶が蓄積し,マクロファージの貪食や融合によりCLSが形成されて,炎症慢性化に働くのかを検討する。
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研究実績の概要 |
1)マクロファージ貪食能,融合能の制御機構解明 マクロファージ貪食過程についてより詳細に検討する目的で,死細胞添加後,数時間の評価のみならず,経時的に貪食過程を評価する系の立ち上げを試みた。その結果,数時間後で貪食マクロファージの割合が30-40%のところ,1日後には80%近くなり,2日後,3日後には減少に転じることが分かった。また,使用するマクロファージを無刺激で腹腔内より採取したマクロファージとチオグリコレート刺激をした腹腔内マクロファージでは,貪食スピードなどが全く異なることが分かった。一般的に,後者は炎症性マクロファージとされているため,今後,後者のマクロファージを用い,病態におけるマクロファージ貪食の意義や制御機構を検討する。 2)肥満の脂肪組織におけるCLS形成と炎症波及効果の分子機構解明 マクロファージに発現する免疫シグナル伝達分子Xの欠損マウスは,肥満の脂肪組織炎症が減弱することを見出している。この時,CLSはほぼ消失するが,フローサイトメーターによる解析の結果,間質細胞内には,野生型マウスと同レベルの数のマクロファージが存在することが明らかになった。今後,これらのマクロファージの性質を精査する予定である。また,グルコース負荷試験を実施すると,X欠損マウスは良好な糖代謝を呈することを見出した。今後,肝臓,脂肪組織,骨格筋のインスリンシグナルを検討し,責任臓器を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たな知見を見出し,当初,予定に入っていなかった実験も進めているが,概ね順調に進んでいる。一方,CLSは,細胞死に陥った脂肪細胞をマクロファージが貪食,処理する過程で出現する構造であるため,高脂肪食摂取X欠損マウスでは脂肪細胞が細胞死に陥っていない可能性か,あるいは,細胞死に陥った脂肪細胞がそのまま放置されている可能性が考えられる。後者の場合は,脂肪組織の炎症が増悪すると想定されるが,実際,X欠損マウスでは脂肪組織の炎症が減弱している。また,X欠損マウスの脂肪組織内のマクロファージの数は野生型マウスと同レベルであったため,死細胞を処理するマクロファージが不足している訳でもないと考えられる。即ち,高脂肪食摂取X欠損マウスでは脂肪細胞が細胞死に陥っていない可能性が高いが,その理由がマクロファージに発現するXでは説明が付かないこととなり,今後,更なる検討が必要になると想定される。1つの可能性として,脂肪細胞においても,Xが重要な役割を担っていることが考えられるが,それを証明するためには,X欠損マウスの骨髄細胞を用いた骨髄移植実験を行い,実質細胞におけるXの役割を検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」に記載した事項を明らかにするためには,予定に入っていなかった骨髄移植実験が必要となる。既に採取済みのサンプルやデータを吟味し,必要に応じて骨髄移植実験を実施する。その場合,骨髄移植後の回復期間と高脂肪食による飼育期間で,およそ半年の期間を必要とするため,実施する場合は,早めに判断する。一方,新たな実験を開始することで,予定していた実験に遅れが出る可能性が高いと判断した場合は,新たな実験は,別途,計画し直すこととする。 マクロファージ貪食に関しては,既存の実験系に拘らず,自分の研究目的に合った実験系を構築し,より病態を反映する評価系を用いてマクロファージ貪食の詳細を明らかにしたい。実際に,現在,新しい評価系を構築中であるが,予想していなかった様々な困難があり,鋭意解決中である。一方,新しいことに挑戦することで見出す知見が多く,次の研究課題に繋げていくと共に,一定の期間で研究をまとめたいと考えている。
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