研究課題/領域番号 |
21K08537
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
向 英里 立命館大学, 生命科学部, 教授 (60362539)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | β細胞 / インスリン分泌 / グルコース代謝 / ヘッジホッグシグナル |
研究開始時の研究の概要 |
膵β細胞インスリン分泌機構において細胞内グルコース代謝が重要である。申請者らは、これまでに糖尿病β細胞でのインスリン分泌不全の分子メカニズムについて明らかにしてきた。一方、一次繊毛におけるヘッジホッグ(Hh)シグナルは発生や分化に重要なシグナルであるが、従来のcanonical signalingに加えて、近年遺伝子発現を介さないnon-canonical signalingの存在が示されている。本研究では、Hhシグナルの糖尿病膵β細胞でのグルコース代謝に対する関与を検討し、糖尿病発症における新たな代謝障害分子メカニズムを明らかにする。この解明は糖尿病研究において画期的な研究発展となり得る。
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研究実績の概要 |
膵β細胞からのインスリン分泌には細胞内グルコース代謝が重要であり、ATP産生障害はインスリン分泌不全を引き起こす。一方、一次繊毛におけるヘッジホッグ(Hh)シグナルは発生や分化に重要なシグナルであるが、従来のcanonical signalingに加えて、近年遺伝子発現を介さないnon-canonical signalingの存在が示されており、細胞内代謝に関わっていることが知られている。一次繊毛関連遺伝子が糖尿病発症とも関連があることから、本研究では、Hhシグナルの膵β細胞における糖尿病でのグルコース代謝異常に対する関与を検討し、糖尿病発症における新たな代謝障害分子メカニズムを明らかにする。各Hhシグナル刺激薬による膵β細胞株MIN6細胞からのインスリン分泌を検討したところ、ShhやGSA-10ではグルコース刺激によるインスリン分泌に変化はみられなかったが、Cyclopamineでは有意に増強された。また、単層培養のみならず、hanging drop法によって作製した偽膵島からのインスリン分泌においても同様の結果が示された。non-canonical signalingの下流因子であるAMPKについて検討したところ、Shh、GSA-10、Cyclopamineのすべてでリン酸化の増加が認められた。一方、canonical signalingで活性化されるGli1の発現を検討したところ、1時間および24時間で発現には大きな影響を与えなかった。以上のことより、インスリン分泌にはAMPK以外のnon-canonical signalingの因子が関与していること、また各刺激薬はcanonical signalingでは作用が異なることから、canonical signalingとして考えられている何らかの因子がインスリン分泌に関与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、膵β細胞における正常と糖尿病状態でのグルコース代謝の違いについて、Hhシグナルの関与や一次繊毛との関係を検討し、糖尿病発症における代謝制御変換の基盤分子メカニズムを明らかにすることが目的である。初年度の計画である、①糖尿病での膵β細胞グルコース代謝変換に対するHhシグナルの関与に関する検討、②膵β細胞におけるHhシグナルと一次繊毛の関係に関する検討、について、刺激薬により効果が異なったことから予想以上に時間がかかった。また、研究を遂行する大学院生が入れ替わったこともあり、実験のスピードが落ちた。それにより、次年度以降(2022年度以降)の計画である、③膵β細胞グルコース代謝でのWarburg効果の分子メカニズムの解明、④膵β細胞の量および膵島の形態に対するHhシグナルの関与に関する検討、について着手したばかりである。よってやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今回の検討により、Hhシグナル刺激薬によりインスリン分泌に対する効果が異なること、またそれらにはAMPK以外の因子が関与している可能性が示された。今後は、さらなる分子メカニズムを検討するためにnon-canolical signalingに含まれる他の因子、またcanolical signalingとして考えられていた因子について検討し、シグナルメカニズムを明らかにする。また、ATP産生、乳酸産生、ROS産生についても検討し、インスリン分泌に対する関与について明らかにする。Hhシグナルと一次繊毛との関係について、一次繊毛関連因子を遺伝的にノックダウンしたときにHhシグナル因子がどう変化するか、さらにはグルコース代謝やインスリン分泌機構に対する変化を検討することで、膵β細胞におけるHhシグナルと一次繊毛の関係性について明らかにする。また、Warburg効果では解答系律速酵素ピルビン酸キナーゼが中心的役割を果たすが、膵β細胞における糖尿病でのグルコース代謝スイッチングにこの酵素が関与しているか、またそれらに対してHhシグナルが関与しているかを明らかにする予定である。膵β細胞の量および膵島の形態に対する検討や糖尿病発症とHhシグナルの関連性の検討についても進める。このように、当初の研究実施計画通りに進める予定である。
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