研究課題/領域番号 |
21K08628
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
岡崎 任晴 順天堂大学, 医学部, 教授 (30265988)
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研究分担者 |
有井 瑠美 順天堂大学, 医学部, 特任准教授 (50794418)
須田 一人 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60784725)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 胆道閉鎖症 / 自己肝生存 / 肝内ミトコンドリア / ATP産生能 / 酸化ストレス / 小児胆汁うっ滞疾患 / 細胞内小器官 / ミトコンドリア / ミトコンドリア機能 / 肝線維症 / ATP産生 |
研究開始時の研究の概要 |
胆道閉鎖症(BA)に対しては、肝門部空腸吻合術が確立された外科治療であるものの、術後に黄疸が消失せず肝移植の適応となる症例が存在する。近年、BAの予後良好群では抗酸化物質であるグルタチオンの代謝亢進が報告され、グルタチオン前駆体のNAC投与がBAモデルマウスの肝機能を改善させると発表された。すなわち酸化ストレス(OS)による慢性炎症がBAの病態に関与する可能性が示唆された。本研究では、BA患者における慢性炎症をきたす機序としてこれまで追求されていないOSに着目してその臨床的影響を明らかにし、さらにOSを制御するミトコンドリアの機能不全がBAの未知の病態として関与しているか否かを解明する。
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研究実績の概要 |
本研究は、胆道閉鎖症患者および対照疾患患者の臨床肝検体を用いてミトコンドリア機能を軸に酸化ストレスの臨床意義を解明するものである。 1)今年度も昨年度から引き続き、胆道閉鎖症肝組織におけるミトコンドリア機能・酸化ストレス因子と臨床パラメータの相関性を検討するため、胆道閉鎖症患者と胆道拡張症・他胆汁うっ滞疾患などのコントロール疾患症例から手術時・生検により肝組織を一部採取し、組織解析とmRNAの発現解析を進められるようにサンプルの準備を進めてきた。症例ごとに血液学的肝機能値・生命予後・自己肝生存などの臨床項目を調査した。 2)過去検体も含めた組織免疫染色については、マトリックスマーカーのHsp60の発現分布を肝細胞内で定量化したところ、肝組織にダメージのない肝芽腫患者の正常肝組織や先天性胆道拡張症の肝組織と比して、胆道閉鎖症の肝組織内ではHsp60発現分布が低いこと、さらに胆道閉鎖症患者に限定しても肝移植となった予後不良な症例に比して、予後良好患者ではHsp60発現は高かった。すなわち、胆道閉鎖症の特に肝機能予後が不要な症例の手術時肝ではミトコンドリアのviabilityが損なわれていると考えられた。 3)胆道閉鎖症特有にみられるミトコンドリア機能や酸化ストレス関連因子を網羅的に比較検討するためのバルクRNA-Seq解析を行った。非胆道閉鎖症肝のうち特に正常肝と比して、胆道閉鎖症肝ではミトコンドリアマトリックス関連分子群が大きく発現低下しているGO解析・pathway解析結果が得られた。また、解析結果をより強固なものとする準備として、胆道閉鎖症および対照症例肝組織からのmRNA抽出を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、1)胆道閉鎖症や他の胆汁うっ滞疾患患者の肝組織を用いて、酸化ストレス因子と臨床パラメータの相関性を検討する、2)肝組織内のミトコンドリア機能に着目し、ミトコンドリア代謝・ATPとROS産生能・ミトコンドリア膜電位・ミトコンドリアDNAコピー数の解析を行い、胆道閉鎖症各症例における予後相関性を観察する。同時に、他疾患との差異も検証する、3)アポトーシス促進因子であるmTOR複合体関連分子・酸化ストレス抑制性転写因子、およびミトコンドリア機能関連因子や、胆道閉鎖症の慢性炎症機序を説明し得るシグナル経路を模索するために、RNA-Seq解析を施行する、の3つに分けて進める予定であったが進められた実験系は限られたものであった。よって、進捗状況はやや遅れている、とした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に進めてきた準備と実験データをもとに、2023年度ではさらにデータの上乗せを行う。 すなわち、1)過去検体を含めて組織免疫解析については良好な体制が取れてきたため、Hsp60以外のミトコンドリア関連因子や酸化ストレス因子(8-OHdG・HEL)の発現分布を評価し、各症例における臨床項目である肝機能・生命予後や他の胆汁うっ滞疾患との差異・相関性を比較する。2)新規肝組織検体については引き続き電子顕微鏡下での観察を進め、ミトコンドリアをはじめとする細胞小器官の形態解析を詳細に行う。さらに、準備実験としてマウス肝を用いてミトコンドリアを単離する技術を習得し、その後臨床のヒト肝検体でも同様に執り行うことでミトコンドリア機能解析に取り掛かる予定である。3)さらにサンプル数を増やし、ミトコンドリア機能や酸化ストレス関連因子・下流炎症サイトカインなどの発現量を網羅的に検討するためのバルクRNA-Seq解析を継続する。発現低下・上昇が著しいミトコンドリア関連分子群の系統を分析し、胆道閉鎖症におけるミトコンドリア機能低下がどのような機序に基づくかを明らかにする予定である。
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