研究課題/領域番号 |
21K08642
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
小池 勇樹 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (10555551)
|
研究分担者 |
内田 恵一 三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (30293781)
井上 幹大 三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (30422835)
松下 航平 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (70750777)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | ヒルシュスプルング病類縁疾患 / ヒルシュスプルング病 / 新規生体蛍光観察 / 術中応用 / 生体蛍光観察 / Hirschsprung病 / Hirschsprung病類縁疾患 / 腸管神経叢 / 新規生体観察手法 / 術中迅速診断法 |
研究開始時の研究の概要 |
Hirschsprung病類縁疾患は、腸管の神経節細胞が存在するにも関わらず腸管の蠕動不全をきたす疾患の総称であり、その分類や診断・治療方針に対して極めて難渋する症例が多く、国の指定難病にも認定されている。特に新生児期から発症するものは、大腸のみならず小腸においても原因不明の蠕動不全をきたすことが多いことから、極めて重症な腸炎やカテーテル感染から敗血症をきたしやすく、未だ致死率が極めて高い疾患である。 この研究では、我々が独自に開発した新規生体観察手法を用いて、腸の外から腸管神経叢の観察を行い、術中にHirschsprung病類縁疾患の詳細な分類や診断が可能かどうかを検討するものである。
|
研究実績の概要 |
当研究のメインテーマであるヒルシュスプルング病類縁疾患における腸管神経叢の生体観察に関しては、該当期間中には新たな症例がみられず、代わりにヒルシュスプルング病患児における腸管神経叢の検討を施行した。 まず、ヒルシュスプルング病患児3例において、クルクミンと多光子レーザー顕微鏡による新規生体蛍光観察手法を用いて腸管神経叢の観察を行った。クルクミンによる蛍光染色は切除標本においては、およそ3時間程度は蛍光発色を呈することが判明した。これは術中応用を考慮した際には、十分な観察時間であった。 またクルクミンによる蛍光染色を行っても、粘膜面からの観察においては、粘膜層から粘膜下層までの距離は、漿膜面から筋層までの距離に比べて深く、粘膜下神経であるMeissner's plexusの生体観察は、現時点でのレーザーパワーにおいては、精細な画像イメージを獲得することは困難であった。一方で筋層間神経叢であるAuerbach's plexusに関しては、腸管漿膜面からの観察において、腸管を損傷することなく、非常に高解像度のイメージとして獲得可能であった。 同疾患の3例において、術中に至適切除ラインの同定に関して最もポイントとなるTransitional zoneにおける検討を行ったところ、同じ腸管レベルにおいても、腸間膜付着側(6時方向)と対側(0時方向)においては、腸間膜付着側の方がAuerbach神経叢がより低形成となっていることを突き止めた。これは3例とも同じ傾向を示し、0時方向と6時方向においては、有意差をもって腸管神経叢の神経束の数やサイズの低形成・萎縮が6時方向でみられることを、詳細に検討することが可能であった。さらにTransitional zoneの口側断端において、全周性の観察を行い、やはり前壁と後壁における腸管神経叢の不均衡分布がみられていることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒルシュスプルング病類縁疾患の希少性により、同疾患患児における臨床検体を用いた検討は当該研究期間中には困難であったが、その一方でヒルシュスプルング病患児の術中切除標本を用いた新規生体蛍光観察手法により、詳細な検討が可能であった。また従来の病理組織学的検討では非常に煩雑かつ困難であった腸管神経叢のネットワークを含めた検討が、当観察方法ではより詳細な腸管神経叢の解析が可能であることが判明し、腸管神経叢の形成不全がメインである当疾患の術中診断においては、この新規生体蛍光観察手法は有用な診断モダリティーとなることがわかってきた。今後もヒルシュスプルング病類縁疾患患児の手術検体を用いての観察研究を遂行することが最も優先されるが、腸管神経の形成不全という点では同じ疾患群であるヒルシュスプルング病患児の切除標本を用いての検討は、希少性の観点から考慮すると比較的継続可能であるため、引き続き同疾患における腸管神経叢のネットワーク分析を行い、術中至適切除ラインの同定という患児にとって小児外科医にとっても有益な臨床情報が得られるように鋭意研究中である。 また術中観察を実現するために、内視鏡のトロリーサイズの多光子レーザー顕微鏡を開発中で、現在はさらに一歩進んで消化管内視鏡の先端にセットアップ可能なレベルのファイバータイプの顕微鏡も開発中である。今年度中にはこの顕微鏡はプロトタイプが完成する見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
手術室に持ち込み可能なレベルの新規多光子レーザー顕微鏡のプロトタイプは、今年度中に完成予定である。これにより世界初のヒルシュスプルング病患児における術中腸管神経叢の顕微鏡レベルの観察を目指す。またヒルシュスプルング病類縁疾患の患児は希少性があり、患者数が十分得られない可能性があるが、同疾患群であるヒルシュスプルング病患児の切除検体を用いた腸管神経叢の観察を行うことで、同等レベルの研究が可能と見込んでおり、引き続き当研究のメインテーマであるヒルシュスプルング病類縁疾患における術中至適切除ラインや至適人工肛門造設部位の同定に向けての研究を行っていく方針である。
|