研究課題
基盤研究(C)
癌細胞と免疫細胞が直接接触した際に細胞膜の断片を相互移行させるトロゴサイトーシス現象が癌の免疫応答に及ぼす影響についてはほとんどわかっていない。そこで、M2マクロファージ、好中球、T細胞と癌細胞とをIn vitroで条件下で共培養し、質量分析法とタンパク解析法を駆使して細胞間を移行する膜分子群を同定する。またこのうち、接着分子、ケモカイン、サイトカイン受容体および免疫機能分子に焦点を絞り、対側の細胞に移行した分子が実際に機能しうるか?をIn vitroの実験にて検証し、がんの転移現象、免疫逃避現象におけるトロゴサイトーシスの意義を明らかにする。
癌の転移能に影響を与えるのではないかという仮説のもと、癌-免疫細胞間の接触性膜断片移行(トロゴサイトーシス)の意義について調査を行った。細胞膜をPKH26により蛍光染色したT細胞を癌細胞と共培養すると、PKH26陽性となる癌細胞を認めた。T細胞と共培養後の癌細胞における免疫シナプス分子の発現を調査すると、CD11aの発現を認め、活性化T細胞との共培養でその発現は亢進した。また、活性化T細胞との共培養により癌細胞はCD11a依存性に血管内皮への接着能が亢進した。このことから、癌細胞はトロゴサイトーシスによりT細胞のCD11aを獲得、転移能を亢進させる可能性が示唆された。
今回の研究により、癌細胞は血液中でTリンパ球による障害を免れるとtrogocytosisによりCD11aを獲得することで、標的臓器の血管内皮への接着性が亢進し、血行性転移能が増強する可能性があると考えられた。癌の転移へのトロゴサイトーシスの関与を示した報告はこれまでになく、新たな癌の転移メカニズムを示した点で今回の研究は学術的意義が高いと考えられる。
すべて 2024 2023 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件)
Cancer Science
巻: - 号: 7 ページ: 2939-2950
10.1111/cas.15793
J Hepatobiliary Pancreat Sci 29(6):600-608.
巻: 29(6) 号: 6 ページ: 600-608
10.1002/jhbp.1085