研究課題/領域番号 |
21K08651
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
住吉 秀明 東海大学, 医学部, 講師 (60343357)
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研究分担者 |
岡村 陽介 東海大学, 工学部, 教授 (40365408)
遠藤 整 東海大学, 医学部, 准教授 (10550551)
根本 仁 東海大学, 医学部, 講師 (40465183)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 再生促進薬 / ミズクラゲコラーゲン / 人工皮膚 / 細胞生着促進 / 難治性皮膚潰瘍治療 / 人工真皮 |
研究開始時の研究の概要 |
人工の構造材を欠損した傷に埋め込む再生医療は、実用技術として多くの患者に施行されている。この治療法は人工構造体に患者の細胞を早く安定生着させることが治療成功の鍵となる。我々はミズクラゲコラーゲンが上皮化と宿主細胞の定着を促進することを見出した。この作用は低分子化しても維持されており、作用単位の同定による再生促進薬の開発を進めている。並行して細胞の定着を見越し、再生後の組織をデザインする技術を開発している。これらは一体として理想的な組織再構築を果たす人工構造材を用いた再生医療技術として確立することを目指している。本技術はQOLの劇的な改善、成功率の上昇、より厳しい症例への応用拡大が見込める。
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研究実績の概要 |
2022年度の研究の進捗状況を以下に示す。 ①ミズクラゲの成分から新規再生促進薬を開発する計画 (1) 低分子化処理をしたミズクラゲコラーゲンのHPLCによる分離は順調に進行し、分離された画分を用いて人工真皮移植マウスを用いた動物実験を行い、再上皮化促進成分と対応する画分の絞り込みを行なった。(2)分離成分のアミノ酸組成解析により、この成分は哺乳類コラーゲンに珍しい3ヒドロキシプロリンを含む10アミノ酸程度のペプチドの集まりであることが示された。(3)in silico解析を用いたアミノ酸一次構造予測の組み合わせにより、ペプチドシークエンスが推定された、その証明は次年度に持ち越されることになった。(4)薬剤候補物としての安全性の検証を行なった。精製物をマウスの皮下に投与することで免疫付けを行い、抗血清をELISA解析することでミズクラゲ抗体生成を調べた。結果、抗原性が十分に低減されていることを確認した。また抗体ビースとFACSを用いて血中の炎症性サイトカインを測定し、これらは低値か検出感度以下であった。 ②理想的な再構築組織を実現する人工構造材(人工真皮)を開発する計画 (5)開発した人工構造材と生体内の水成分との物理学的な特性をDSC測定と誘電緩和法を用いて検証し、この構造体が従来のコラーゲンスポンジよりも、密に水分子と相互作用出来る証左を得た。(6)ポリ乳酸を用いた2枚の超薄膜(ナノシート)の間にナノスケールのファイバーを配置し、その間隙を薬剤担持層としたナノ薄膜ラッピング剤を開発した。薬剤担持層にミズクラゲコラーゲンを配置し、上皮再生促進シートとした。 ③ 動物実験による臨床応用を見越した評価実験 (7)2型糖尿病モデルマウスを用いて②で開発した上皮再生促進シートによる人工真皮上での上皮再生実験を行った。6日間の経過観察で有意な上皮再生促進効果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の機材搬入遅れにより、課題①の実験課題であるミズクラゲコラーゲンに由来する再生促進成分精製行程に遅れが生じていたが、2021年度内に②の実験課題、人工構造材(人工真皮)の開発研究を精力的に進める一方、2022年度に入ってから、課題①の実験を集中的に行い、遅れを取り戻す事が出来た。分離した画分のどこに有効な成分が含まれるのか比較的明瞭に推移したため、当初の見込みより実験は順調に進められた。 課題②と課題③ の実験計画の遂行は予定通りの進捗であった。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画は初年度に機材の購入と稼働に関わる遅れが生じた事以外にトラブルは無く、遅れも2022年度までに取り戻した。実験の進捗予定は初年度に立てた実験計画に対して大きな変更点は無い。 課題①の精製計画は、現時点で得られた最小フラクションのアミノ酸配列の同定、細分化によって減衰した再生促進成分を濃縮により増強すること、安定剤の使用等の基礎研究を進める一方で、社会還元のため、薬剤化のステップである物質特許申請の段取りを進めていく。 研究課題②はこれから薬剤の投与を並行したデータ収集に入っていく。投与する薬剤は従来からあるb-FGFをベースとした創傷治癒促進剤や課題①の成果物である精製サンプルを加える。投与形式については安定剤の付加と2022年度の成果物であるナノ薄膜ラッピング剤の実用実験を行なう。 研究課題③は新開発人工真皮の中長期の生着実験のデータ取りを進めていく一方で、徐放性担体を含めた多機能性人工構造体の開発に繋げていく。
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