研究課題/領域番号 |
21K08708
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
|
研究機関 | 高知大学 (2022) 京都大学 (2021) |
研究代表者 |
瀬尾 智 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (70646546)
|
研究分担者 |
鶴山 竜昭 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 腫瘍研究部, 研究員 (00303842)
中川 貴之 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30303845)
川口 博明 北里大学, 獣医学部, 教授 (60325777)
田浦 康二朗 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80378629)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | SOS / Bevacizumab / マイクロミニブタ / ブタSOSモデル / Oxaliplatin / 大腸癌肝転移 / FOLFOX誘導性SOS予防 / トロンボモジュリン / ブタモデル |
研究開始時の研究の概要 |
SOSは大腸癌の治療で使用される抗癌剤のオキサリプラチンをレジメンに含む化学療法を受けた患者に発症する薬剤性肝障害であるが、肝切除後の周術期合併症を増加させ、早期再発の頻度を高めるため予防が望まれるが、明確な予防法は確立されていない。またSOSの診断は肝生検が必要であるが、実臨床では侵襲的な肝生検を頻回に行うのは非現実的である。本研究は、ブタ SOSモデルを用いてヒトと同様の方法で抗癌剤の投与を行い、その予防効果が報告されているトロンボモジュリンを併用することで SOS が予防できるのかどうかを経時的な肝生検で確認し、至適投与量を同定して実臨床での使用に迅速に結び付けることを目的としている。
|
研究実績の概要 |
Sinusoidal obstruction syndrome(SOS)は大腸癌の化学療法に起因する肝障害で,肝転移に対する集学的治療において問題となる.我々は,ヒトで大腸癌へ用いられている化学療法レジメンのFOLFOX療法(Oxaliplatin + 5-FU + Leucovorin)をブタに投与することで,FOLFOX誘導ブタSOSモデルを世界で初めて確立,報告した.本研究は,遺伝子的・解剖学的にヒトに近いとされるブタSOSモデルを用いて,ヒトSOSに対して予防効果が報告されている薬剤を併用した場合に,実際に予防できるか否かを経時的な肝生検で確認し,薬剤の至適投与量や至適投与期間を固定して実臨床での使用に迅速に結びつけることと,SOS発生のメカニズムを明らかにすることを目的とする. 当初,トロンボモジュリンによるSOS予防効果を検証する予定であったが,一昨年の研究(18K08645 ブタモデルを用いた化学療法誘導性肝障害の薬物による克服~大腸癌予後改善に向けて~)の遅れもあり,BevacizumabによるSOS予防効果の実験を行った. 12ヶ月月齢の雄性マイクロミニブタを使用し,ヒトで大腸癌に対する化学療法レジメンFOLFOX + Bevacizumab 療法の50%投与量で,ヒトと同様の投与スケジュールで行う.観察期間は24週とし,FOLFOXは2週毎に計12回皮下ポートより投与する.FOLFOX投与時に血液検査を,0・4・8・12・18・24週に開腹肝生検を行う.得られた血清・肝臓標本にてSOSの評価を経時的に追求する.肝臓病理標本に関しては,SOSの診断で主に用いられるスコアリングを中心に,病理医,および獣医と検証し,妥当性を高める。 本年度は,昨年度実験途中であったFOLOX+Bevacizumab群のプロトコルを完遂し,さらにFOLFOX群2頭の実験を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以下二つの理由で,研究の進捗は遅れている. ①一昨年,昨年度に引き続き,新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言や,京都大学独自の感染対策によって,当初予定していた実験時間の確保が困難であった. ②Bevacizumabの確保に時間がかかった. 本年度は,昨年度観察期間24週中18週終了していたFOLFOX + Bevacizumab群1頭のプロトコルを24週まで完遂させた.プロトコールに従って経時的な開腹肝生検を行い,肝障害の評価を行ったところ,FOLFOX投与群と比較してFOLFOX + Bevacizumab群では電子顕微鏡による評価でSOSの予防効果を認めた.またAST・ALT・T-Bil・Hb・血小板値では経時的に著名な変化を認めず,肝障害を示す所見は認めなかった.またICG(インドシアニングリーン)という色素を投与して,15分後の排泄率によって肝機能の評価を行うICG検査でも肝機能の悪化を認めず,BevacizumabによるSOS予防効果と考えられた. さらに,本年度はBevacizumabを確保する間に,FOLFOX群を行うこととした.肝切除による負担を減らし,手技を簡便化して実験スピードを上げるため,エコーガイド下に経皮的針生検を試みた.しかしながら,ヒトと体型が違い,安定した肝生検を行うことができず,小開腹による針生検を行うこととした.FOLFOX群1頭目は6週でポート感染症のため死亡,続く2頭目は化学療法による脱水を契機とした多臓器不全により20週で死亡した.FOLFOX群1頭目については観察期間が短く,SOSは発症していなかった.2頭目については,18週の電子顕微鏡像でSOSに特徴的な所見が得られた.
|
今後の研究の推進方策 |
小開腹による針生検が安定して施行することが出来、電子顕微鏡での評価に耐えうる検体採取が可能となった。今後これまでの遅れを取り戻すために、同時に行える実験ブタの頭数を増やす予定である。今年度はFOLFOX群とFOLFOX+Bevacizumab群の両群をさらに頭数を増やして比較検討し、BevacizumabのSOS予防効果について検討していく予定である。
|