研究課題/領域番号 |
21K08741
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
宮倉 安幸 自治医科大学, 医学部, 准教授 (50306122)
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研究分担者 |
鈴木 浩一 自治医科大学, 医学部, 教授 (70332369)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 血液モニタリング / ゲノムプロファイリング / 血中循環腫瘍細胞 / 循環腫瘍DNA / 切除不能胃癌 / HER2阻害 / 適応拡大 / 循環腫瘍細胞 / 薬効評価と予測 / リキッドバイオプシー |
研究開始時の研究の概要 |
切除不能大腸癌のため抗癌剤治療が導入される症例を対象として、臨床情報に加え組織材料、循環腫瘍DNAおよびCTCから得られるゲノム情報を統合解析して、CTCを標的とした血中モニタリングシステムの優越性を検証する。DNA検索による癌ゲノムプロファイリング、コンパニオン診断の他、蛋白発現のモニタリングも加味した包括的ゲノム検索アプローチの実現を目指す。検出されたゲノム情報は、人工知能アプローチを活用してキュレーションされた情報リソースを統合的に紐づけることにより、リアルタイムな情報提供を可能とする新規プラットフォームの実用化を目指す。
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研究実績の概要 |
目的:切除不能胃癌に対するHER2阻害薬の治療効果は一定の成果が得られているものの、その評価方法には問題が残ります。胃癌組織のHER2蛋白発現は不均一なため、検索した組織切片が腫瘍の特徴を十分捉えていない可能性が考えられます。そこで循環腫瘍細胞(CTC)を利用し、組織では捉えられない特徴を血液で俯瞰できないかと考えました。CTCの検出にはオンチップソートシステム(マイクロ流路チップセルソーター)を用い、CTCのHER2蛋白発現の蛍光強度を算出しました。HER2陽性細胞株および陰性細胞株の信号強度からHER2の蛍光強度の閾値を50と設定しました。さらにサイトケラチンとビメンチンの蛍光強度から上皮間葉系移行(EMT)を算出し、転移形成能を評価しました。
結果:化学療法が施行された切除不能胃癌患者32症例を対象としました。8症例は組織学的にHER2陽性(A群)、24症例は組織学的にHER2陰性と診断されました。この24症例中, 12症例はCTCでのHER2発現が陽性(B群)で、12症例は組織とCTC共に陰性でした(C群)。組織学HER2陽性のA群には抗がん剤とHER2阻害薬が投与され、組織HER2陰性のB群、C群には抗がん剤が投与されました。無増悪生存期間(PFS)はA群およびC群と比較してB群で著しく不良でした(A群は13.8月, B群は7.0月、C群は50%に到達せず、p=0.012)。CTCのHER2発現の強度はEMTの程度と相関し(p=0.024)、組織やCTCを問わずHER2陽性群(A群とB群)では、組織とCTC共に陰性群(C群)に比べて有意にEMTが進んでおり、転移形成能が高い事が示唆されます。B群は予後が極めて不良で転移形成能が高い事から何らかの治療介入が必要であると考えられます。CTCでのHER2発現が陽性という特徴を鑑みるとHER2阻害薬の適応拡大が期待されます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CTCを標的とした血液モニタリングシステムの有用性が下記の項目で評価され、組織に変わる新たなプラットフォームとして応用できることを示した。 1,CTC遺伝子パネルは組織と同等の情報量でゲノムのモニタリングが可能である。 2,CTC上のタンパク発現の検出はリアルタイムの治療標的の同定を可能とし、上皮間葉系移行は薬剤抵抗性の指標となる。
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今後の研究の推進方策 |
組織でHER2陰性だがCTCで陽性の患者に対して、実際にHER2阻害薬を投与した際の効果をの臨床試験での検証が必要である。
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