研究実績の概要 |
ゲノム解析技術の進歩により, 消化器癌の病態に関連する遺伝子変異が明かとなり, 遺伝子型に適合した個別化治療の導入が可能となった。cell-free DNA (cf-DNA)が、癌の病勢を示す新規バイオマーカーとして注目されている。しかし膵胆道癌における血漿cf-DNAの有用性にはいくつかの問題がある。血漿cf-DNAの陽性率は、進行した症例であっても非常に低く、その陽性率は40%と報告されている。また、血漿cf-DNAのDNA断片は, 切除腫瘍組織から得られるDNA断片と比較して小さいため、SNVだけでなくamplificationやfusionなどの遺伝子変異を検出することが困難な場合がある。 本研究の目的は, 液体サンプルとしての胆汁中のcf-DNAの質を評価し, 個別化治療のためのゲノムプロファイリング取得の可能性を明らかにすることである。胆管浸潤を伴う膵胆道癌において、切除を受けた13例(胆管癌7例, 胆嚢癌1例, 十二指腸乳頭部癌3例, 膵癌1例, 膵管内乳頭粘液癌1例)を収集した。切除標本からDNAを抽出し、全エクソームシークエンスを行なったところ, TP53, ABCA8, BRCA2, FGFR2, APC, SMAD4, NRASの病的変異を認めた。13症例の胆汁サンプル及び9例の血漿サンプルより、cf-DNAを抽出した。その結果, 胆汁には血漿に比べ多くのcf-DNAが含まれ、より長いDNA fragmentを有することが明らかになった。TP53, KRAS, NRAS, SMAD4などを、胆汁cf-DNAから検出することが可能であった。以上より、胆汁cf-DNAは遺伝子解析に適した質と量を有しており, 腫瘍由来の遺伝的変異を反映している。胆汁cf-DNAは, ゲノムのプロファイリングを検出するためのリキッドバイオプシーとして有用なツールと考えられた
|