研究課題/領域番号 |
21K08811
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岡村 行泰 日本大学, 医学部, 教授 (10704489)
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研究分担者 |
大島 啓一 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (10399587)
上坂 克彦 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (20283434)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 同一がん遺伝子内複数変異 / 肝細胞癌 / MUC16 / CTNNB1 / Signature contribution / 免疫関連遺伝子 / 次世代シークエンサー |
研究開始時の研究の概要 |
肝細胞がんは、殺細胞性抗癌剤が効きにくいがん腫であるが、近年、分子標的薬、免疫チ ェックポイント阻害薬の有効性が示されており、多くの臨床試験が行われている。 2020年、同一がん遺伝子内の複数変異が発がんに関与する新たな遺伝学的メカニズムであ ることが示され、複数変異が分子標的薬の治療反応性を予測するバイオマーカーになりう ることが報告された。本研究では、マルチオミクス解析結果をもとに、同一がん遺伝子内の複数変異に着目し、これらの遺伝子変異と予後、病理学的特徴との関連、分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬の効果予測バイオマーカーとしての有用性を追求する。
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研究実績の概要 |
肝細胞がんは、殺細胞性抗癌剤が効きにくいがん腫であるが、近年、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬の有効性が示されており、多くの臨床試験が行われている。2020年、Saitoらによって、同一がん遺伝子内の複数変異が発がんに関与する新たな遺伝学的メカニズムがあることが示され、複数変異が分子標的薬の治療反応性を予測するバイオマーカーになりうることが報告された(Saito, et al. Landscape and function of multiple mutations within individual oncogenes. Nature. 2020; 582 (7810): 95-9.)。 本研究では、静岡がんセンターで2014年1月より行っているマルチオミクス解析結果をもとに、同一がん遺伝子内の複数変異に着目し、これらの遺伝子変異と予後、病理学的 特徴との関連、分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬の効果予測バイオマーカーとしての有用性を追求した。 肝細胞がん223切除例中178例(80%)において何らかの遺伝子に複数変異を認め、既報のようにがん抑制遺伝子よりがん遺伝子に複数変異を有意に認めた。複数変異例で、単変異例に比較して有意にTMBが高く、3つ(1, 15, 16)のsignature contributionでスコアの差を認めた。複数変異例で、無再発生存率が不良(P=0.012)であることがわかった。多変量解析においても複数変異は独立した予後因子(HR 1.72, P=0.045)であることがわかった。 肝細胞癌において同一がん遺伝子内の複数変異は、MUC16, CTNNB1内に高頻度で認められた。MUC16内の複数変異は、臨床病理因子と相関しており、MUC16内複数変異例は、単数変異例より有意に無再発生存率が不良であった(P=0.012)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に則り、肝細胞がんにおいて同一遺伝子内の複数変異の頻度の高い遺伝子を明らかにすることができ、MUC16遺伝子を中心に予後、病理学的特徴に関する検討を終了した。もう一つ複数変異の多かったCTNNB1遺伝子のTMBやmRNA発現量に関する検討も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度までに、肝細胞がん切除223例中178例(80%)において何らかの遺伝子に複数変異を認め、既報のようにがん抑制遺伝子と比較してがん遺伝子に複数変異を有意に認めることがわかった。また、複数変異例では、単変異例に比較して有意にTMBが高く、無再発生存率が不良(P=0.012)であ利、多変量解析においても複数変異は独立した予後因子(HR 1.72, P=0.045)であることがわかった。 同一がん遺伝子内の複数変異は、MUC16, CTNNB1内に高頻度で認められ、MUC16遺伝子に関しては、予後、病理学的特徴と関連することがわかった。令和5年度は、MUC16の研究結果をもとに、CTNNB1遺伝子のTMBやmRNA発現量に関する解析を行い、予後との相関を検討する。また、肝細胞癌における今回の研究結果をもとに、特に胆膵悪性疾患を中心に他臓器の癌研究に発展させる。
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