研究課題
基盤研究(C)
BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)は、標的となる悪性腫瘍細胞へホウ素薬剤を導入させ、同部位に中性子を照射し、ホウ素と中性子の核反応により腫瘍細胞を殺傷する細胞レベルのがん治療法である。しかし、現在臨床に使用可能なホウ素薬剤は、アミノ酸(フェニルアラニン)にホウ素を結合させたBPAのみである。我々の問いは、「ホウ素薬剤はBPAの1剤で充分か?」 である。今回、BNCTにおける治療の向上へ向け、ホウ素薬剤においても同理論が適応可能と考え、ホウ素薬剤の多剤併用を目標とした新規ホウ素薬剤の開発へ取り組む。
BNCTにおける治療成功の可否は、腫瘍組織・腫瘍細胞への薬剤の取り込みに大きく依存する。医療承認のホウ素薬剤BPAは、アミノ酸輸送体(LAT-1)を介して腫瘍集積性を示す。まず、LAT-1に加えてグルコース輸送体(GLUT1, GLUT3)のバイオインフォマティクス解析をTCGAを用いてがん横断に行った。悪性脳腫瘍ではLAT-1の発現高く、CA19-9高値の膵がんではGLUT1、GLUT3の発現が高かった。グルコース結合型ホウ素薬剤を創薬し、種々の悪性腫瘍を使っての取込評価、毒性評価、BNCT実験を行った。BNCTにおけるBPAに加えての新しい薬剤ラインナップ拡大へ向けた取り組みへ貢献した。
BNCTは、化学療法としてのホウ素薬剤、放射線治療としての中性子照射により構成される、化学放射線療法である。中性源が原子炉より病院設置可能な加速器中性子源へと移行し、医療化への実現性が進んでいる。2020年にBPAの薬事承認がされ、BNCT成功の鍵は今後のホウ素薬剤ラインナップの拡充に大きく依存する。がん高発現のグルコース輸送体を標的とした交換外材結合の薬剤開発はこれまだに多く報告されているが、未だ成功例は無い。今回、グルコース結合ホウ素薬剤を利用することで、グルコース結合薬剤の問題点である脳への中枢神経障害の回避に成功した。今後のBNCT発展に貢献する新たな研究成果である。
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