研究課題
基盤研究(C)
BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)は、標的となる悪性腫瘍細胞へホウ素薬剤を導入させ、同部位に中性子を照射し、ホウ素と中性子の核反応により腫瘍細胞を殺傷する細胞レベルのがん治療法である。しかし、現在臨床に使用可能なホウ素薬剤は、アミノ酸(フェニルアラニン)にホウ素を結合させたBPAのみである。我々の問いは、「ホウ素薬剤はBPAの1剤で充分か?」 である。今回、BNCTにおける治療の向上へ向け、ホウ素薬剤においても同理論が適応可能と考え、ホウ素薬剤の多剤併用を目標とした新規ホウ素薬剤の開発へ取り組む。
BNCTにおける治療成功の可否は、腫瘍組織・腫瘍細胞への薬剤の取り込みに大きく依存する。医療承認のホウ素薬剤BPAは、アミノ酸輸送体(LAT-1)を介して腫瘍集積性を示す。まず、LAT-1に加えてグルコース輸送体(GLUT1, GLUT3)のバイオインフォマティクス解析をTCGAを用いてがん横断に行った。悪性脳腫瘍では、LAT-1高値であり、BPA-BNCTでの有効性が予想された。一方で、LAT-1低値群の膵がんにおけるLAT-1低値が顕著であった。膵がんデータベースにて、LAT-1低値群、特に悪性度の高い腫瘍マーカーCA19-9高値群でGLUT1,GLUT3の高い傾向を示し、LAT-1と逆相関であることを示した。すなわち、LAT-1が高値群ではBPA-BNCTでの有効であり、LAT-1低値群、すなわちGLUT高値群では糖結合ホウ素薬剤によるBNCTが有効であると予測された。糖結合ホウ素薬剤を作成し、腫瘍マーカーCA19-9高値、低値の細胞株へ投与を行った。その結果、CA19-9高値の腫瘍株での取り込み亢進を岡山大学資源植物科学研究所のICP(高周波誘導結合プラズマ)を用いて確認した。同時に、薬剤による毒性評価を行うために、同様の投与量における細胞増殖抑制効果についてWST評価にて検証を行った。その結果、いずれの細胞株においても明らかな細胞増殖抑制効果は示さなかった。以上より、糖結合ホウ素薬剤は、既存のBPAとは異なる標的を持つ有望な薬剤として作成された、毒性や水溶性などの明らかな問題点の無い薬剤として確認された。次に、担癌モデルを作成し、皮下投与及び腹腔内投与にて薬物動態評価を行った。本動物実験に関しては、岡山大学動物資源部門による動物実験委員会よりの承認の後に行った。各臓器及び腫瘍での薬物動態評価を行い、投与に最適なポイントを検証した。
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